中同協の景況調査(DOR)によると、断続的に仕入単価や人件費の上昇が続いており、採算性(経常利益)に悪影響を及ぼしていることが明らかになっています。2025年10~12月期のDORでは、断続的なコストの増加が経営に与える影響や価格転嫁に関する状況についてオプション調査を実施しました。
断続的なコスト上昇圧力の影響は広範囲に及ぶ
図1は、近年の断続的なコスト上昇の圧力が経営(収益性や事業継続)にどれくらい影響を及ぼしているかについて聞いたものです。「深刻な影響がある」が8・5%、「大きな影響がある」が36・8%、「多少影響がある」が41・7%となっており、何らかの影響がある(以下、「影響あり」と略記)と回答した割合は87・0%に上っています。断続的なコストの増加による経営への影響は広範囲に及んでいることが分かります。
業種別に見ると製造業での影響が目立ちます。「深刻な影響がある」(12・6%)、「大きな影響がある」(44・8%)と回答した会員が相対的に多く、「多少影響がある」(35・0%)も含めた割合は92・4%に及びます。
企業規模別に見ると、規模が小さくなるにしたがって「影響あり」と回答した割合が小さくなる傾向が見られました。「影響あり」と回答した割合が最も大きかったのは「50人以上100人未満」(95・3%)でしたが、最も小さかったのは「5人未満」(72・7%)でした。

コスト増加するも価格転嫁は不十分
図2は、1年前に比べて自社の総コスト(原価・販売管理費)が何割上昇したかについて聞いたものです。最も多かったのは「1割以上~2割未満」で58・3%でした。次いで、「1割未満」が20・8%、「2割以上~3割未満」が15・6%となっています。
業種別に見ると、製造業と建設業で「2割以上~3割未満」と回答した割合が相対的に大きく、コスト上昇の圧力が強かったようです。また、企業規模別に見ると、相対的にコスト上昇の影響が少なかった「5人未満」で「上昇なし」(8・1%)と回答した割合が大きいという特徴が見られました。

では、こうしたコストの増加分を価格に上乗せして反映できているのでしょうか。図3は、増加した総コストのうち、何割を価格転嫁することができたのか聞いたものです。最も多かったのは「1割未満」で32・5%でした。次いで多かったのが「1割以上~3割未満」(28・1%)、「3割未満~6割未満」(15・2%)という順でした。多くの会員が増加したコストの半分も価格に転嫁できていないということになります。
業種別に見ると、サービス業では「1割未満」が46・5%に上っており、わずかしか価格転嫁できていない会員がとても多いことが分かります。一方、製造業では「3割以上~6割未満」(19・9%)、「6割以上~9割未満」(17・0%)の割合が相対的に大きく、他業種に比べて価格転嫁が進んでいるようです。
地域別に見ると、関東では価格転嫁がより進んでいるようで、「9割以上」を価格転嫁できている会員の割合が17・1%と大きい一方、「1割未満」が24・8%と小さくなっています。
企業規模別に見ると、「5人未満」では「9割以上」を価格転嫁できている割合が16・7%と大きい一方で、企業規模が大きくなるにしたがって「1割未満」しか価格転嫁できていない会員の割合が大きくなる傾向が見られます。

価格決定力の強化や価格転嫁を最重視
図4は、販売価格や取引条件の決定において重視している基準や方針について聞いたものです。多くの会員は「付加価値の創出による価格決定力の強化」(64・0%)や「コスト上昇分の可能な限りの転嫁」(62・4%)を最重視して販売価格や取引条件を決めていることが分かります。また、「賃上げ・人材確保を目的とした価格引上げ」(51・6%)や「取引先との関係維持を優先した段階的な価格交渉」(41・0%)も重視されているようです。
業種別に見ると、製造業では「コスト上昇分の可能な限りの転嫁」(71・8%)が最も重視されており、前述の価格転嫁の状況を反映した結果となっています。サービス業では「コスト上昇分の可能な限りの転嫁」(50・4%)よりも「賃上げ・人材確保を目的とした価格引上げ」(57・5%)を重視しているようです。また流通・商業では「賃上げ・人材確保を目的とした価格引上げ」(38・3%)よりも「取引先との関係維持を優先した段階的な価格交渉」(47・4%)を重視するという特徴が見られました。
企業規模別に見ると、規模が大きな「50人以上~100人未満」と「100人以上」で「コスト上昇分の可能な限りの転嫁」を最も重視するという傾向が見られました。一方、「5人未満」では「賃上げ・人材確保を目的とした価格引上げ」(33・7%)よりも「取引先との関係維持を優先した段階的な価格交渉」(37・8%)を重視するという特徴が見られました。

多くの会員が1年以内に値上げを実施か
図5は、現在のコスト・賃金動向を踏まえて、今後1年以内に販売価格を見直す予定があるかどうかについて聞いたものです。多くの会員が今後1年以内に「値上げを予定(取引先に通知済み、または予定あり)」(34・4%)もしくは「値上げの検討はあるが時期・額は未定」(43・8%)と回答していました。反対に「値下げを検討中」はわずか0・4%でした。「現状価格で維持予定」は12・6%でした。
業種別に見ると、建設業と製造業では「値上げを予定(取引先に通知済み、または予定あり)」よりも「値上げの検討はあるが時期・額は未定」の割合の方が大幅に大きいという傾向が見られました。また、流通・商業では「値上げを予定(取引先に通知済み、または予定あり)」(37・7%)の割合が相対的に大きくなっています。
企業規模別に見ると、「5人未満」では価格転嫁がより進んでいましたが、今後は「値上げを予定(取引先に通知済み、または予定あり)」(29・3%)が少なく、「現状価格で維持予定」(21・2%)が相対的に多いという傾向が見られました。

オプション調査では、ほとんどの会員がコストの増加を経験しており、そのうちの多くが増加したコストの半分も販売価格に転嫁できていないという状況が明らかになりました。多くの会員が1年以内に販売価格の見直しを予定または検討しており、今後もコスト上昇や価格転嫁の動向について注視していく必要がありそうです。
「中小企業家しんぶん」 2026年 3月 15日号より









