枝廣淳子氏(大学院大学至善館副学長、教授)の新著『社会の価値の測り方―「見える化」で地域を豊かにする』(岩波新書)が発刊されました。枝廣氏はこれまでも『地元経済を創りなおす―分析・診断・対策』(2018年)、『好循環のまちづくり!』(2021年、共に岩波新書)を著し、注目を集めてきました。
今回の『社会の価値の測り方』(2026年)では、デジタル化やさまざまな方法論の進展などを踏まえながら、環境、経済、社会的価値などの「見える化」と「測定」、それによる問題解決や改善の事例を紹介しています。いずれも興味深い内容ですが、本稿では、社会や地域で変化を創り出していくための方法のひとつとして登場している「変化の理論」(Theory of Change)の概要を紹介したいと思います。(以下、本書から抜粋)
- 「変化の理論」とは、関係する人々(ステークホルダー)に積極的に参加してもらいながら、社会課題に取り組むプログラムを計画したり、評価したりするための方法論。「どのようにして望ましい変化が起きるのか」を包括的かつわかりやすく描くものです。
- まず、「変化の理論」を考える時に大切なことは、「インプット」(投入)、「アクティビティ」(活動)、「アウトプット」(活動量)、「アウトカム」(成果)をしっかりと分けて考えること。
- 「何かの変化を創り出そうとしたとき、すぐに『何をやる?』『どうやる?』と方法論の議論になりがち」ですが、「何をやるか」「どうやるか」という活動や方法は、最後に考えます。
- 最初に考えるべきは、「どういう変化を創り出したいのか」、つまり、「活動の結果の変化した状態」です。
- 「変化の理論」では、最初に考えるのは、「現在の状態」と「最終的にめざす状態」です。
- 「現在の状態はこうなっていて」→「最初にこの状態をこういう状態に変えて」→「それができたからこそ、その次はここをこういう状態に変えて」…→「そうして最後に、望んでいた状態が創り出せる」と、状態でつないでいきます。
- (次に)「その変化を創り出すためには、何をすればよいか」を考えていきます。
- 重要なことは、関わる人々がみんなで作っていく中で、手段の目的化を防ぎ、一発勝負ではなく、変化の連鎖をデザインすることで、効果的な変化を創り出すプロセスをつくっていくことです。
以上が「変化の理論」の概要です。変化を創り出していくためのプロセスや方法がわかりやすく示されています。同友会が長年取り組んできた経営指針づくりの実践、また地域づくりの一環として取り組みが行われつつある地域経済ビジョンづくりとも共通する部分があるようにも思います。
ポイントであると感じたのは、何かに取り組もうとしたとき、「何をやるか」から考えてしまいがちですが、まず「活動の結果の変化した状態」から考えるという点です。「変化の理論」は社会課題解決のための理論として考え出されたもののようですが、企業経営や同友会活動を進める上でも貴重なヒントが含まれているのではないでしょうか。
(K)
「中小企業家しんぶん」 2026年 3月 15日号より









