連載「わが社のSDGs」では、経営理念をもとにSDGsに取り組む企業の事例を紹介します。第30回は、日本リーフグループ(西畠泰司代表取締役、兵庫同友会会員)の取り組みです。
瓦を生かした魚礁開発で海洋環境を守る
日本リーフグループは、魚礁を中心とした海洋製品の設計・開発・販売、総合建設業、海洋調査業という3つの事業を柱とする企業です。「『技術』と『人』で未来の海洋環境を築き、海を守る」というミッションを掲げ、SDGs経営を実践しています。
同社の特徴的な取り組みが、地場産業である瓦を活用した魚礁(ぎょしょう)の開発です。本社のある淡路島は瓦の三大生産地の1つですが、近年は需要減少により業界の環境が厳しさを増しています。同社は、親族が瓦産業に関わっていた縁や、砂浜に放置された規格外の瓦にプランクトンが付着している様子を目にした経験から、瓦を魚礁の一部として活用する着想を得ました。同社が開発した「瓦魚礁」は、動物性プランクトンの発生や食物連鎖を促し、海の生態系回復や漁業資源の増加につながっています。
DXの推進
同社では、魚礁の設置後も継続的な調査を行い、効果の検証と製品の改良を重ねています。年に数十回に及ぶ事後調査では、水中ドローンなどを活用し、リアルタイムで動画を閲覧・共有できる体制を整えました。
これにより、魚礁の設置前後の環境変化や魚の集まり方を確認でき、より効果的な設置方法の提案が可能になっています。顧客への確かな情報提供と、自社内での知見の蓄積を同時に実現しています。
また、ものづくり補助金を活用してICT施工に対応した機械を導入し、ウェブカメラによる遠隔指示の仕組みも整備しました。現場で不明点があればリアルタイムで指示を受けられるため、作業時間の短縮や施工効率の向上にもつながっています。
環境と地域を守る企業として
長年の調査の結果、瓦魚礁の設置後に漁獲量が増加する事例や、藻場(もば)ブロックの設置によって海藻が増えるなど、磯焼け問題の改善につながる事例が各地で確認されています。
また、環境負荷の低減にも積極的に取り組んでいます。グループ全体で重機を排ガス対策型や低騒音型へと更新し、約4年前には環境経営の認証制度「エコアクション21」を取得しました。自治体の入札評価への対応という実利的な側面もありますが、将来世代を見据えた社会的責任を果たす取り組みでもあります。
さらに、災害時には自社の重機を活用して人命救助などを行う協定を自治体と締結するなど、地域住民の安心・安全を守る存在としての役割も担っています。
社員が主体的に動く「扇形の組織」へ
西畠氏は「企業は人なり」という信念のもと、組織文化の改革にも取り組んできました。従来のトップダウン型の経営から、社員1人1人が主体的に動き、生き生きと働ける「扇形の組織」への転換をめざしています。
まず取り組んだのは、経営理念やミッション、ビジョンを明文化し、幹部合宿を通じて共有することです。さらに「環境整備チーム」「人材育成チーム」を設置し、月1回の会議で職場環境の改善案を実行しています。
40歳未満の社員による「若手会」や、社員の意見を直接経営層に届ける意見箱も設置しました。同友会の新人社員研修、外部講師によるハラスメント研修や対話力研修、キャリアマップの提示、年2回の社員面談など、人材育成の仕組みも整えています。
また、SDGsへの取り組みが明確になったことで、自分の仕事が社会や環境にどのように貢献しているのかを実感できるようになり、「自分たちが会社を動かしている」という当事者意識が芽生えています。
その変化は採用面にも表れています。同社は3年連続で新卒採用に至っており、遠方から入社する若手もいます。海洋調査という専門性の高さに加え、グループ間での転籍制度や明確なキャリアパス、若手の意見が通る風通しのよさが学生たちの共感を集めています。
また、地元小学生の「まち探検」を受け入れるなど地域社会との接点を広げ、将来の担い手づくりにも取り組んでいます。
今後は、海水温の上昇という地球規模の課題に対し、九州・沖縄での実績を北海道や東北地方へと展開し、全国の漁業者が安心して事業を継続できる環境づくりをめざしています。
「海の困りごとは当社へ」と笑顔で語る西畠氏。社員が主体的に働き、地域社会と共に成長する同社の取り組みは、海洋環境の未来を守り、そして引き継ぎ、豊かにつくり上げていく企業として、これからさらに加速していきます。
会社概要
創業:1981年
社員数:36名
事業内容:海洋人工構造物の設計・開発・施工・販売、総合建設業、海洋調査業
URL:https://www.japanreef.net/
「中小企業家しんぶん」 2026年 4月 5日号より









