現在の世界情勢の中で、企業経営に直接影響を及ぼす重大な出来事として、中東での軍事衝突が挙げられます。2026年2月末、アメリカとイスラエルはイラン国内の軍事施設などに対して大規模な攻撃を行い、イランとの軍事衝突が本格化しました。戦闘は現在も続いており、中東地域全体の緊張が急速に高まっています。
この紛争が世界経済に与える最大の影響の1つが、原油価格の高騰と供給への懸念です。イランは世界有数の産油国であり、またペルシャ湾の原油輸送の要衝であるホルムズ海峡は、世界の海上輸送原油の約2割が通過し、日本向け原油の93%、LNGの6%が通行する重要なルートです。戦闘の激化により輸送ルートが不安定となり、原油市場では供給不安が広がり、価格は急上昇しています。
しかし、今回の影響は単なる価格上昇にとどまりません。重油や軽油などの石油製品について、すでに事業者向けの供給の見通しが立たない状況も生じています。燃料の確保が難しくなり、通常通りの発注を行っても納入時期が不透明になるなど、企業活動そのものに影響が出始めています。特に重油を使用する製造業や食品加工業、軽油を多く使用する運送業や建設業では、燃料不足が生産や物流の停滞に直結するため、事業継続に関わる問題となっています。
さらに深刻なのが、ナフサ不足による影響です。ナフサは原油を精製して得られる粗製ガソリンであり、石油化学産業の基礎原料です。原油供給の不安定化によりナフサの供給量が減少すると、それを主原料とする石油化学工業を中心に、製造業のサプライチェーン全体に影響が広がります。ナフサはエチレンやプロピレンといった基礎化学品の製造に不可欠であり、これらが不足すると、プラスチック、合成樹脂、合成繊維、ゴム製品、包装資材など幅広い製品の生産に影響します。
これらの素材は多くの製造業にとって欠かせない基礎材料であり、部材不足や納期遅延、生産調整といった問題がサプライチェーン全体に波及します。とりわけ中小企業は在庫を多く持てない場合も多く、原材料供給の遅れがすぐに生産停止や受注制限につながる可能性があります。また、大企業が供給確保を優先する場合、中小企業への供給が後回しになることも懸念されます。
日本はエネルギー資源の多くを輸入に依存しており、原油価格の上昇は燃料費、電力料金、物流費、原材料費の上昇を通じて中小企業の収益を圧迫します。さらに今回は、価格上昇に加え、燃料供給不安とナフサ不足による部材不足という二重の影響が生じており、経営環境は一層厳しさを増しています。
遠い中東の紛争であっても、その影響は原油価格、燃料供給、原材料不足を通じて、日本の中小企業の経営や地域経済に直接波及しています。国際情勢の動向を注視しながら、供給リスクへの備えや経営体質の強化を進めていくことが、今後ますます重要となっています。
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「中小企業家しんぶん」 2026年 4月 15日号より










