3月5~6日に第56回中小企業問題全国研究集会(略称:全研)が岩手で開催され、46同友会と中同協から1000名が参加しました。今回の特集では、4つの分科会レポートやまとめなどを紹介します。
開催地あいさつ
岩手同友会代表理事 田村 滿氏
本日は、全国各地から岩手にご参集いただきまして、誠にありがとうございます。
本全研は「世界ぜんたいが幸せにならなければ、個人の幸せはありえない」をスローガンに開催しています。われわれ中小企業は平和の中でしか存在できない、という考えから掲げたものです。
ところが、世の中を見ればどうでしょうか。ロシアによるウクライナ侵攻やパレスチナ問題、イラン情勢の問題など、われわれが考えられないような方向に世界が向かっているような気がして仕方ありません。これは何とかしなければいけないと思っています。
全国の会勢は4万7000名あまりです。会勢5万名達成にとどまることなく、同友会の会員がもっと増えていかないとわれわれの声は国全体や世界には広がっていきません。もっと成長していかなければならないと思います。
おかげさまで、岩手同友会は360名あまりの会勢だったところ、500名という目標を超え、510名会勢を達成しました。全会員に努力していただいたおかげです。しかし、これはまだまだ発展途上です。もっと会勢を増やしていかないとわれわれの声は届きません。これからもさらに会勢を増やしていきたいと思います。
岩手で全研を開催したことはよい経験、よい引き金になったと思います。改めて皆さまにお礼を申し上げ、あいさつといたします。
主催者あいさつ
中同協会長 広浜 泰久氏
全研開催にあたり、岩手同友会が目標としていた500名会勢を達成し、会員数510名で本日を迎えられたとのこと、全国の皆さんで心から拍手を送りたいと思います。おめでとうございます。
今回の全研のテーマは「世界ぜんたいが幸せにならなければ、個人の幸せはありえない」です。私たち中小企業家が、その矜(きょう じ)持(きょう じ)にかけて何をなすべきか。それを共に学び合うのが、今回の大きな目的でした。
私は第11分科会に参加し、パレスチナの医療奉仕団としてガザで活動を続けてこられた猫塚先生の報告を聞きました。今日、世界各地で人権が軽視され、力による現状変更がまん延していますが、これは同友会の理念とは真逆です。私たちは自主・自立の組織だからこそ、どこにも気兼ねすることなく、正しい信念を発信できる立ち位置にあります。
分科会で語られたガザの現状は、目を覆いたくなるほど悲惨なものでした。しかし報告に続くグループ討論では「今こそ学びの場を活用しよう」「影響力を正しく使おう」「経営指針に基づく全社一丸経営のプロセスを社会課題の解決にも応用しよう」と決意を語り合うことができ、大きな希望となりました。
私たちは、学んだことを実践に結びつけられる恵まれた環境にいます。本日から、自社での実践はもちろん、各地の同友会、そしてまだ見ぬ仲間たちへと、この「同友会の輪」を広げていきましょう。
第1分科会(中同協)
環境の激変が経営者を磨き理念が進化する
これからの激変の時代にどう立ち向かうか
日本ジャバラ(株) 代表取締役 田中 信吾氏(兵庫)
経営者の責任・経営姿勢の確立をテーマとした本分科会では、中同協顧問で兵庫同友会最高顧問の田中信吾氏が報告を行いました。同社は来年創業70周年を迎え、田中氏の同友会歴は46年目を数えます。長い経営者人生の歩みでは、阪神淡路大震災やリーマンショック、コロナ禍など度重なる外部環境の変化に直面し、金融機関の「貸しはがし」による会員企業の倒産なども経験しました。また、メインバンクの経営破綻や大幅な売り上げ減少、社内規律のゆるみや社員の退職など数々の経営危機が同社を襲います。そうした危機にどのように立ち向かってきたのか、危機に直面したときに経営者はどのような姿勢で臨むべきなのかが、豊富な経験を基に語られました。
田中氏は、常に危機感を持ち、戦略を立てることこそが経営者の責任だと強調します。激変する経営環境の中では苦しみと喜びが表裏一体だとし、「黒字に不思議な黒字あり、赤字に不思議な赤字なし」と経営者が覚悟を持つ重要性を提起。「昭和の考え方かもしれませんが、『昭和で何が悪い!』とも思っています」と、力強く報告を締めくくりました。
第7分科会(山形)
家族経営からの脱却人が集い、人がつながる地域のランドマークへ
社員が育ち、会社が輝く、社員の成長が会社の原動力
(株)菓子工房COCOイズミヤ 代表取締役 庄司 薫氏
第7分科会では、「家族経営からの脱却」をテーマに庄司薫氏が自身の経営実践を報告しました。
COCOイズミヤは大正12年に曾祖母が始めたお菓子屋で、職人も含め家族が中心となって経営していました。庄司氏が経営者になり、同友会で経営指針セミナーを受講する中で、理念や計画、地域との連携、そして社員と共に成長することの大切さに気づきます。しかしその経営方針は家族と相容れず、社内不和は新入社員の退職にもつながりました。そんなときに参加した社員共育委員会が、社員と一緒にお店を成長させる決意を持たせ、経営者として家族と向き合うきっかけを与える場となりました。
人材育成を意識した社内会議、職務分掌・力量表を作成し個人目標と経営指針がリンクする仕組みづくり、そんな社員育成の取り組みを7~8年続けた結果、社員が目標達成のために自ら考えて行動するような風土ができていきます。今ではスタッフの子どもが将来このお店で働きたいと言ってもらえる会社に、そして地域の人が集うコミュニティの場になりました。
経営者としての覚悟と実行力が会社の風土を変革し、社員がイキイキと活躍・成長できる職場づくりにつながり、社員の自主性が企業を成長させてゆく。経営者の覚悟と社員育成の重要性を学ぶ分科会となりました。
第11分科会(中同協)
私たちは世界平和のために何ができるのか
パレスチナ医療奉仕団としてガザで考えたこと
北海道パレスチナ医療奉仕団 団長 猫塚 義夫氏
「私たちは世界平和のために何ができるのか」と題した第11分科会は、イランへの軍事攻撃が行われる中での開催となりました。報告者は、札幌の整形外科医で北海道パレスチナ医療奉仕団の猫塚義夫団長です。
猫塚医師らは2011年から18次にわたってパレスチナ地域を訪れ、医療支援活動を行っています。ガザ地区は種子島より狭い地域。2007年から壁やフェンスに囲まれて230万人が暮らす「世界最大の天井のない監獄」です。昨年10月の「停戦」後も、640名の人命が奪われています。映像も交えた報告は、いま起きていること、体験したことが冷静に語られ、圧倒的な事実を前に会場は静まり返りました。
60歳を過ぎてからこの活動に飛び込んだ猫塚医師は、「困っているところに出向いていくのが医療。北海道の無医村でも、パレスチナでも変わりません。私たちにとって人間の尊厳を守るたたかいなのです」と言われます。
グループ討論では、経営者として、人間として、平和の問題にどう関わるのか話し合いました。「地域課題・社会課題を企業課題にしようと同友会は提起している。平和こそ最大の社会課題。平和の問題を同友会の理念にとどめず、自社の存在意義に照らし合わせて考えたい」。中小企業経営者だからこそ、平和の問題に目をつむらないとの呼びかけ合いのように聞こえました。
第13分科会(岩手)
人口減少・少子高齢社会で持続発展し続けられる地域づくり
中小企業の連携で実現する地域版コングロマリット経営の可能性を探る
パネラー:グロービス経営大学院 特任副学長 田久保 善彦氏
パネラー:陸前高田しみんエネルギー(株) 代表取締役 大林 孝典氏
コーディネーター:(株)八木澤商店 代表取締役 河野 通洋氏
第13分科会では、人口減少や少子高齢化により、電気・水道・医療・福祉などのエッセンシャルサービスの維持が困難になっている現状を踏まえ、中小企業の連携による地域づくりのあり方が議論されました。生活インフラが維持できなければ地域の存続自体が危ぶまれるため、企業には利益追求だけでなく地域社会を支える役割も求められることが共有されました。
田久保氏は、経営にはスキルと志の両立が重要であり、とりわけ志が人々の共感を生み、組織や地域の結束を高めると指摘しました。大林氏は、陸前高田しみんエネルギーの取り組みとして、地域外への資金流出を防ぎ、高齢者向け電気バスなどに収益を還元する事例などを紹介しました。
さらに、人口減少への対応策として、複数事業を1社または連携企業で運営する「地域版コングロマリット」が、雇用創出やサービス維持を支え、後継者不足も地域内のM&Aやホールディングス化で解決可能である可能性が示されました。行政も特区制度や各種支援でこれらの民間の取り組みを後押ししているとのことです。
本分科会を通じ、地域課題の解決には企業間の連携と志の共有が不可欠であり、経営者自らがその起点となる重要性が改めて確認されました。
2日間のまとめ
中同協幹事長 中山 英敬氏
昨日の分科会では、それぞれのテーマに沿って、自社の課題を整理できたのではないかと思います。この2日間の学びを3点に整理しました。
1点目は、企業づくりと地域づくりの観点からです。分科会や講演を通して共通している重要課題は、「21世紀型中小企業づくり」です。先の見えない混(こん とん)沌(こん とん)とした時代、また何が起こるかわからない激変の時代だからこそ、まず自社の存在意義を改めて問い直し、社会的使命感に燃えて社会課題や地域課題に積極的に取り組み、大胆に企業変革に挑むこと。そのためにも、「労使見解」に基づく人間尊重の経営を学び実践して、社員の創意や自主性が十分に発揮される、活力に満ちた企業になることです。昨日の分科会報告やグループ討論の中でも、成果につなげ成長している企業は、この「21世紀型中小企業づくり」を愚直に実践しています。
2点目は、会員を増やし、同友会の影響力を高めることです。同友会運動は、時代と共に成長し、外部からの評価や期待も高まっています。とはいえ、経済政策や社会観の中では、中小企業重視ではなく、軽視の傾向も見えてきています。中小企業の社会的地位の向上のためにも、同友会の影響力を高めることが喫緊の課題です。そのためにも、各地における対企業組織率を地域ごとに確認し、影響力が高まると言われる、5%をめざしていきましょう。具体的には、経営指針に社会課題や地域課題を位置づけ、地域の中で人を生かす経営を、共に学び実践する仲間を増やしていくことです。今、同友会のさまざまな活動が、地域の中で経営指針を軸に有機的につながり、注目を浴びる事例も増えています。自信と誇りを持って、同友会の仲間を増やしていきましょう。
3点目は、平和の問題です。日本では70%の人が中小企業で働いており、地方に行くほどその割合は増え、100%の地域もあります。戦争を体験した同友会の先人たちは、「中小企業は、平和の中でこそ発展する」という教訓から、「日本経済の自主的・平和的な繁栄をめざす」と理念の中でうたっています。また、同友会理念の最終目的は、「人間が人間らしく豊かに生きられる社会」の実現です。全人類が思想や信条を越えて守らなければならないものが、「平和」です。
今年1月のアメリカのベネズエラへの武力攻撃については、「国連憲章・国際法に基づく平和的な問題解決を」との会長談話を発表しました。また、今も続いているアメリカ・イスラエルによるイラン攻撃についても会長談話を今日付で発表します。「平和」の主体者は、私たちです。1人1人が真剣に考えていきましょう。昨日の「平和問題」の分科会で、「私たちは世界平和のために何ができるのか」との問い掛けがありました。私たちの学びの柱は、「人間尊重」の経営です。「平和」なくして「人間尊重」はありえません。平和の問題も経営指針に位置づけて、社員と共に学び考え、平和のことを語れる社員を、そして、平和についての考え方を発信できる企業をつくっていきましょう。
「中小企業家しんぶん」 2026年 4月 15日号より










