地方分散・地域循環型社会づくりは平和への道

 ウクライナや中東など世界各地での戦禍により、多くの尊い命が失われています。また、アメリカ・イスラエルによるイランへの軍事攻撃は、世界経済にも深刻な影響を及ぼしています。

「中小企業は平和の中でこそ繁栄する」。同友会が創立時から大切にしてきた教訓があらためて実感とともに迫ってきます。

 平和な世界を実現するためには、各国政府や国際機関などによる外交努力が重要であることは言うまでもありませんが、今回は経済のあり方から平和な社会に近づく道を考えてみたいと思います。

 2017年に京都大学と日立製作所は「持続可能な日本の未来」に向けた政策提言を発表しました。日立のAI技術を活用し、約2万通りの未来シナリオ予測を行い、「2050年に向けた未来シナリオとして主に都市集中型と地方分散型のグループがある」と分析。

そして地方分散シナリオが「持続可能性の観点からより望ましい」と指摘し、「持続可能シナリオへ誘導するには、地方税収、地域内エネルギー自給率、地方雇用などについて経済循環を高める政策を継続的に実行する必要がある」と提言しました。

 さらに、2025年に京都大学と日立製作所は、政策提言AIの“グローバル版”を発表。「実現可能性のある地球社会の姿」の1つとして「地域分散・成熟シナリオ」を提示しました。「地域分散・成熟シナリオ」では経済面において成長が鈍化する一方、地球全体の環境面ではもっとも良好なパフォーマンスを示すと同時に、国際的な紛争が全シナリオの中で特に大きく減少すると分析しています。

そしてそれは「『ローカリゼーション』、すなわちローカルな地域レベルでの経済循環や持続可能性を重視しつつ、ナショナル、グローバルへと積み上げていくという地球社会の未来像」であるとしています。

 つまり地方分散・地域循環型社会をつくることは、地域の自立や格差の縮小、社会の安定をもたらし、それが国際的な紛争を大きく減少させることにつながるということです。

 この未来シナリオが提言する地方分散・地域循環型社会は、中同協が2019年に発表した「中小企業家の見地から展望する日本経済ビジョン」のめざす方向と重なるものです。中同協の日本経済ビジョンでは、(1)多様な産業の存在と中小企業が発展の源泉となる日本経済、(2)持続可能な経済社会づくりのための内需主導型経済、(3)地域内循環を高め、地域資源を生かした自立した地域経済、(4)エネルギーシフトによる持続可能な社会、など日本経済の7つの発展方向を提起しました。(4)のエネルギーシフトでは、「地域社会全般の中央集権型から地域分散型への転換」を呼び掛けています。

 未来シナリオや日本経済ビジョンが提起する地方分散・地域循環型社会の担い手は、地域に根ざした中小企業です。世界のそれぞれの地域で健全な中小企業を軸とした地域経済社会を築き上げることは、世界の平和につながる道でもあると言えます。

(K)

「中小企業家しんぶん」 2026年 5月 15日号より