岐路に立つサービス産業―人口減少時代に求められる新たな価値創造

 人手不足倒産が増えているというデータを見ました。かつて企業倒産の主な要因は売り上げ不振や資金繰りの悪化でした。しかし近年は、受注や需要があっても働き手を確保できず、事業継続を断念する企業が増えています。特に飲食業や宿泊業、介護、物流、建設、設備保守など、人の力で価値を生み出すサービス産業でその傾向が顕著です。人口減少が進む日本において、サービス産業は今、大きな岐路に立っています。

 サービス産業は日本のGDPの約7割を占める基幹産業であり、国民生活や地域経済を支えています。しかし、少子高齢化による労働人口の減少は年々深刻さを増し、人材確保は多くの企業にとって最重要課題となっています。

 一方で、介護・生活支援サービスの拡大、社会インフラの老朽化に伴う維持管理需要の増加、製造業における保守需要の増大など、サービスへのニーズはむしろ高まっています。「仕事はあるが人がいない」という状況が広がる中、人材確保と育成は企業の存続を左右する課題となっています。

 加えて、エネルギー価格や資材価格、人件費の上昇も企業経営に大きな影響を与えています。これまでの価格競争を前提とした経営には限界が見え始めており、適正な価格形成と付加価値向上による収益確保が求められています。

 さらに、デジタル技術の進展はサービス提供のあり方を大きく変えています。ICTやAIなど、人手不足を補いながら生産性を高める技術が急速に普及しています。今後はデジタル化を進めながらも、人にしかできない提案力や創造力、信頼関係づくりに力を集中していくことが重要です。

 こうした環境変化の中で、サービス産業が進むべき方向を考えなければなりません。第1は「人を生かす経営」の実践です。サービスの価値は人によって生み出されます。働きがいのある職場づくりや人材育成を進め、1人1人が能力を発揮できる企業づくりが求められています。

 第2は、課題解決型への転換です。顧客が求めているのは商品やサービスそのものではなく、それによって得られる安心や安全、快適さや成果です。「売り切り」から「継続支援」へと発想を転換し、顧客との長期的な関係を築くことが重要になります。

 第3は、価格競争から価値競争への転換です。「この会社だから頼みたい」と言われる独自の強みを磨くことが求められています。専門性や技術力、人材力、地域との信頼関係こそが企業の競争力となります。

 さらに現在、中東情勢の緊迫化による原油価格の変動や、石油化学製品の原料であるナフサの供給不安は、物流費や包装資材、設備部材などを通じてサービス産業にも影響を及ぼします。人口減少の影響とともに国際情勢の変化が企業経営に直結する時代となり、サービス産業を取り巻く環境は大きく変わっています。サービス提供のあり方そのものが岐路に立つ中、人を生かし、新たな価値と工夫を生み出しながら地域社会を支える企業づくりこそが、これからの時代を切り開く鍵となるのではないでしょうか。

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「中小企業家しんぶん」 2026年 6月 15日号より