環境経営を企業発展の力に 同友エコ受賞企業の挑戦

 環境への配慮は、いまや社会的責任にとどまらず、企業の持続的な発展を支える重要な経営戦略となっています。全国の会員企業では、自社の強みを生かしながら独自の環境経営の実践が広がっています。本特集では、同友エコ2025―2026で会長賞、環境経営委員長賞、外部審査委員賞を受賞した企業の取り組みを紹介します。

会長賞
100年後も必要とされる企業をめざして
(株)ティスコ運輸 代表取締役 菅原 茂秋氏(山形)

山形市にある(株)ティスコ運輸は、「私たちは“運ぶ”を通して価値あるお役立ちを創造します」を経営理念に掲げ、物流事業を基盤としながら地域や社会の課題解決に取り組んでいます。

同友会でSDGsを学ぶ

菅原氏がSDGsを意識するきっかけになったのは、同友会での学びでした。当初は言葉を知る程度だったものの、同友会で学ぶ中で自社が続けてきた人材育成、地域貢献の取り組みがSDGsの理念につながっていることに気づいたと言います。

持続可能な社会を実現するために企業は何を果たすべきかを考える中で、「100年後も地域や社会から必要とされる企業でありたい」という思いが生まれました。その思いを形にしたのが、2100年の未来から現在を見つめ直す長期ビジョン「TISCO2100」です。未来から逆算して今自分たちが何をすべきかを考え、企業づくりと社会課題の解決を一体で進めています。

社員と共に育む持続可能な企業づくり

「TISCO2100」の実現に向けた同社の取り組みの1つが、社内人材育成制度「TISCOアカデミー」です。アカデミーでは、自ら手を挙げた社員が参加し、1年間・全12回の講座を通じて学びを深めています。現在は社会人としての基礎を学ぶブロンズコースに加え、マネジメントを学ぶプラチナコースを展開しています。講座内では企画提案やプレゼンテーションも行われており、修了生からは改善提案も生まれています。

さらに現在は、事業部門の経営を担う人材育成を目的とした「ダイヤモンドコース」の開設を準備しています。その先には、新規事業開発や社会課題解決に挑戦する人材の育成も構想されており、次世代のリーダーづくりを進めています。

また、女性活躍推進にも力を入れています。女性社員や女性役員を中心とした定期的な意見交換の場を設け、働き方や職場環境の課題を洗い出しながら改善を進めています。加えて、ダイバーシティやアンコンシャス・バイアスに関する勉強会やセミナーも開催し、多様な人材が成長できる企業づくりを進めています。

物流の枠を超えた地域づくり

同社では、「物流の全体最適化」を掲げ、積載率の向上に取り組んでいます。複数企業による物流センターの共同利用や荷物情報の共有を進めることで、輸送効率と収益性を高めながら、CO2排出量の削減にもつなげています。

さらに、離農や耕作放棄地の増加という地域課題への対応として、農業分野にも事業を広げました。使われなくなった農地で米や野菜、果樹の栽培を行い、生産した農産物は社員食堂でも活用、食堂から出る生ごみは堆肥化して農地へ還元しています。形がふぞろいで市場に出回りにくい農産物も積極的に活用することで、食品ロス削減にもつなげています。

そのほか、地域の子どもたちを対象としたインターンシップや職場体験も10年以上継続して実施しています。子どもたちの率直な質問に向き合うことは、社員にとっても自社の存在意義や社会的役割を見つめ直す機会となっています。

共にある未来へ

菅原氏は、「100年後に『ティスコがあってよかった』と言ってもらえる企業でありたい」と語ります。

2030年に向けては、輸送効率を高める新たな物流システムやダブル連結トラックの活用などを進めながら、働きやすく持続可能な物流の実現をめざしています。

「TISCO2100」の理念のもと、企業づくりと地域づくりを両輪として歩み続ける同社の挑戦は、持続可能な地域社会の未来を切り拓く取り組みとなっています。

会社概要

創業:2000年
社員数:160名
事業内容:物流全体最適を目的とした事業全般
URL:https://hakobimasu.com/

環境経営委員長賞
持続する社会をめざした経営視点の建物づくり
倉沢建設(株) 代表取締役 倉沢 延寿氏(埼玉)

倉沢建設(株)は建築の「かかりつけ医」として、企業施設の設計・施工・保守を担う総合建設会社です。

環境にやさしい建築技術の提供を会社の理念に組み込んでいる企業もありますが、倉沢建設ではそれを経営方針における戦略・戦術として位置づけています。建設会社として培った技術と機動力を生かし、時流に合わせた新技術の展開が今注目されています。

顧客となる企業の中には、「環境」への取り組みに関して悩みや問題を多く抱えており、取引先から環境への姿勢を企業のポリシーとして掲げることを強く求められるケースが増えています。倉沢建設は環境対応の技術力を磨き、企業の建物や設備を経営に生かす考え方、そして土地も含めた建築で、働く人々の環境改善や企業価値向上を図る『経営視点の建物づくり』FM(ファシリティ・マネジメント)で、顧客の課題に向き合っています。

逆境を成長の機会に変えた倉沢建設の挑戦

東日本大震災を経験し、世間が再生可能エネルギーなどへの関心を高めていたころ、倉沢氏は中小建設業として生き残るため、新たな建物の価値「ZEB(ゼブ:ゼロ・エネルギー・ビル)」の技術を提供できないかと、強い思いを抱いていました。しかし、日々の業務をこなしながらの技術開発は容易ではなく、建築案件の多くが、資金力や人材力に勝る上場企業へ流れていく状況でした。

そんな中、世界を揺るがせたコロナ禍による行動制限が、容赦なく会社の事業にも影を落とし、営業活動が停止状態となりました。一方、これまで確保できなかった時間が生まれ、結果として倉沢建設の技術革新を加速させる転機となっていきます。

これを好機と捉えた倉沢氏は、自社ビルのZEB化計画を打ち立て、技術を求めて奔走しました。すると不思議と必要な情報や人との出会いに恵まれます。愛知同友会の先駆者との出会いでは、倉沢氏が追い求めるものへ基礎から実践まで、多くの助言を得ることができました。さらに、国の支援機関も親身になって高い技術力を持つ企業とのマッチングをサポート、共同開発は特許取得にもつながりました。

生まれ変わったZEBのモデルビル

計画から1年半、2022年12月にZEBの技術が詰まった自社ビルの竣工(しゅんこう)を迎えました。倉沢建設が提供するZEBを支える技術の中でも、ひときわ目を引くのが、地表熱の影響を受けない深い地中の、年間を通して安定した地中熱(約16℃)を利用する熱交換システム(ヒートクラスター)です。建物の高断熱・高気密性能と相まって、空調コストを大幅に削減する力を持っています。システムの概要は、地下約100メートルの井戸(直径10数センチ)に地上から水を送り、16℃になって戻ってきた水を、より省力化を可能にしたヒートポンプを介して夏は冷房、冬は暖房として建物内の空調に活用するものです。

課題と展望

ZEBを取り入れた建築は、近年の資材価格高騰もあり、導入コストの課題が増しています。優れた技術でも、コストとのバランスが取れなければ広く普及することはできません。そこで倉沢建設は、これまで培ってきた経験と技術力を生かし、コストを抑えながら、顧客の要望に応じた最適なZEBのレベルを実現する提案を行っています。また、新社屋は中小規模ビルにおけるZEB普及を見据えたFM実証フィールドとしての役割も担っています。さらに日々のデータ蓄積と実証テストを重ねながら、新たな技術の検証と改善も続けています。

倉沢建設は、技術開発と実践を積み重ねながら、人にも環境にもやさしい建築を通じて、次代へつながる持続可能な社会づくりに挑戦し続けています。

会社概要

設立:1989年3月23日
社員数:9名
事業内容:工場・店舗・オフィス・企業施設の計画設計、施工管理、維持メンテナンスなど
URL:https://kurasawa-const.com

外部審査委員賞
環境経営の「ジブンゴト化」で企業価値を高める
(株)高崎クリーン 代表取締役 高崎 文孝氏(福島)

SDGsを経営の根幹に据える

(株)高崎クリーンは廃棄物の収集・処理・リサイクルを担う企業です。同社が環境経営へ本格的に取り組み始めたのは、2019年に高崎文孝氏が社長に就任したことがきっかけでした。就任後、企業として進むべき方向を明確にするため経営指針書を策定。廃棄物処理業を単なる処理業ではなく「環境ビジネス」と再定義し、同友会での学びを通じて得たSDGsの考え方を経営の根幹に据えました。

社員1人1人の「ジブンゴト化」

環境経営を進める上で特に重視したのが、社員1人1人の「ジブンゴト化」です。当初は社内から「新しい仕事が増える」と戸惑う声もありましたが、現場・事務・営業の垣根を越えたチーム編成による月1回のSDGs勉強会を2023年9月に開始しました。

現在までに30回を超える勉強会を開催し、グループワークやSDGsカードゲームを活用しながら、社会課題と自社の仕事とのつながりを学ぶ機会を創出。その結果、会社の課題と社会の課題のひもづけ、数値化や効率化への取り組みが社員主導で進むようになり、「なんとなく仕事をする」という風潮からの転換のきっかけになったと言います。

「社員が会社の勉強会のことや、そこで学んだことを取引先や家族に話すようになりました。社員が話してくれることが一番の広告塔です」と高崎氏は語ります。

さらに、社員全員が「私のSDGs行動宣言書」を作成し、社内に掲示。自ら実践する行動を見える化したことで、自主性と責任感が育まれるとともに、会社全体で課題に向き合う組織風土が根づいてきたと言います。

環境対策と企業成長の両立

環境面では、2025年10月に環境マネジメントシステム「エコアクション21」の認証を取得し、CO2排出量や節電・節水の進捗を定量的に管理する体制を構築しました。

また、GPSやAIを活用した輸送ルートの最適化やエコドライブの推進により、燃料使用量とCO2排出量の削減を実現。さらに、EVフォークリフトや福島県内初となるEVごみ収集車「eCanter」を導入し、脱炭素化だけでなく騒音や振動の低減による働きやすい職場づくり、暮らしやすい地域づくりにも貢献しています。

こうした点が高く評価され、「福島県ゼロカーボンアワード」や今回の「同友エコ外部審査委員賞」の受賞につながりました。社員の主体的な行動は、生産性向上や部門間連携の強化を生み出し、企業価値(ブランド力)の向上にも大きく寄与しています。

次世代へつなぐ環境ビジネス

今後の環境経営に関する目標について高崎氏は、「環境に関する仕事や出来事について、全社員が自ら対応し説明できるような社員共育を進めていきたい」と語ります。また、「バイオマスなどの技術を活用し、地域へ還元できる新たな価値を生み出していきたい」と将来を見据えています。

さらに高崎氏は、これから環境経営に取り組もうとする企業へ次のようなエールを送ります。「環境ビジネスにはまだまだチャンスがあります。誰もが始められ、誰もが成功する可能性を持っています。一歩目を踏み出すことが難しいと感じる方も多いと思いますが、その一歩を踏み出せば自然と次につながっていきます。私自身もそうでしたが、同友会には相談できる先人や手を差し伸べてくれる仲間、専門家がいます。何か1つでも始めることが、環境ビジネス、そして社会課題の解決につながると信じています」。

同社の取り組みは、環境経営が企業価値向上や地域貢献、人材育成にもつながることを示す好事例であり、多くの中小企業にとって大きな示唆を与えるものとなっています。

会社概要

創業:1967年
設立:2004年
社員数:正社員38名、パート1名
事業内容:廃棄物の収集運搬および中間処理業
URL:http://takasaki-clean.com/

「中小企業家しんぶん」 2026年 7月 5日号より