【あっこんな会社あったんだ!】人を生かす経営 
人を大切にしたから生き残れた 崖っぷちから、全国から人が集まるスーパーへ 
(株)ひまわり市場 代表取締役 那波 秀和氏(山梨)

 企画「あっ!こんな会社あったんだ」では、企業経営に関わるさまざまな専門課題に取り組む企業事例を紹介しています。今回は「人を生かす経営」をテーマに、那波秀和氏((株)ひまわり市場代表取締役、山梨同友会会員)の実践を紹介します。

八ヶ岳山麓に位置する「ひまわり市場」は、全国から客が訪れるスーパーマーケットです。最大の特徴は、「アベンジャーズ」と呼ばれるスタッフが自ら仕入れや店内キッチンでの調理を手掛けた、こだわりの商品だけを販売していること。また、その魅力を伝える那波氏のユニークなマイクパフォーマンスも同店の名物です。

那波氏は「わが社は『ディズニーランド』。商圏人口は1億2000万人です。記憶に残る店づくりは、日本一の自負があります」と笑顔を見せます。

2010年の設立以来、16期連続で増収増益を達成し、今期もさらなる利益拡大を見込んでいます。しかし、ここに至る道のりは決して平坦なものではありませんでした。

倒産危機からの再出発

那波氏は元々スーパー「ひまわり」の店長を務めていました。入社当初は意欲のある社員がほとんどおらず、「自分の会社に誇りを持たず、ただ給料だけをもらえればいいという考え方はおかしい」と訴えても、その思いはなかなか浸透せず対立や離職が続いたと言います。

そんな中、オーナーの系列会社倒産に伴い、「ひまわり」の建物と土地が競売にかけられました。しかし、破産管財人を務めた弁護士が「彼は目が輝いている。正しいことをしているのに借金でつぶれるのは気の毒だ」と判断し、個人で借り入れを行って1億4000万円で落札。新たに(株)ひまわり市場を設立し、那波氏を代表取締役として登記した上で、営業権を買い取る形で現在のひまわり市場がスタートしました。この時点で、旧店舗の負債と新たな保証債務を合わせると約4億円に上っていました。

商品力を支えるのは「アベンジャーズ」

現状を打破するため、那波氏は業態転換に着手します。最初に取り組んだのは安売りチラシの廃止でした。結果として集客への影響は限定的で、人気の鮮魚コーナーなどを目当てに来店する客が多いことが分かりました。この経験から、価格ではなく商品力こそが支持されていることに気づいたと言います。そして、店内の商品をすべて「よい品」に切り替える中心となったのが、「アベンジャーズ」と呼ばれるスタッフたちでした。

同社では、任せた仕事には口を出さない「究極の放任主義」を貫いています。採用時には「ここでは頑張った分だけ報われる」と伝え、「給料は投資」という考えの下、利益の3分の1は従業員に還元しています。

那波氏の人脈やメディア出演をきっかけに入社するなど経緯はさまざまですが、志とスキルの高い中途人材が集まり、採用費ゼロでありながら人手不足に悩んだことはないと言います。

同友会で深まった「人を生かす経営」

2014年ごろに誘われて同友会に入会したものの、当初は社内業務に追われ、しばらくは幽霊会員でした。しかし、他県同友会での報告依頼を機に同友会について学び始め、社員に現場を任せられるようになったこともあって活動に参加するようになります。

現在の経営には、「自主・民主・連帯」の精神が色濃く反映されています。

「自主」を重んじるためノルマは一切設けず、「民主」の実践としてスタッフ1人1人と対等に接することを重視しています。また、「ここで働く以上は人生を懸けて共に頑張ろう」という「連帯」の風土づくりも大切にしています。

「この会社が奇跡的に生き残れたのは、人を大切にしてきたから」と那波氏は人を生かす経営の実践への確信を込めて語ります。

次世代への承継を見据えて

昨年には、駐車場の一角にパン工房を立ち上げました。きっかけは、旧知の付き合いで、東京で修業を積んだ職人から「労働環境の厳しい今の職場を辞めたい」と相談を受けたことでした。「それなら俺がパン屋をつくる!」と決意し、開業に踏み切ったのです。職人の情熱と技術が生み出すパンは好評で、店舗敷地内という立地もあり廃棄ロスもほぼゼロ。さらなる成長を見込んでいます。

また那波氏は、将来を見据え、5年後に社員承継を予定しています。その実現に向けて理念を再整理し、次世代へ引き継げる形にするため、同友会の理念合宿への参加も予定しています。また、今年からは新卒採用にも取り組みます。学校訪問などを通じて、働く楽しさ、頑張った人間が報われる待遇であることや、「よい会社・よい経営者」をめざしていることを積極的に発信しています。

人を大切にする経営こそが企業の成長を支える―ひまわり市場の歩みは、そのことを力強く示しています。

会社概要

創業:2010年
従業員数:50名
事業内容:食品スーパーマーケット
URL:https://himawari-ichiba.com/

「中小企業家しんぶん」 2026年 7月 15日号より