6月4~5日、第29回女性経営者全国交流会(略称:女全交)が兵庫で開催され、46同友会と中同協から1082名が参加しました(6月15日号既報)。今回の特集では、あいさつ、分科会座長報告、まとめなどを紹介します。
【開催地あいさつ】兵庫同友会 代表理事 村川 勝氏
兵庫同友会では女全交を1つの起爆剤と位置づけて準備を進め、女性会員数400名突破、そして過去最大の2622名という万全の体制で皆さまをお迎えすることができました。
今回のテーマは「変革と共創でつなごう未来へ」です。性別や年代、地域といった従来の枠組みを超え、私たちは「どんな会社をつくりたいのか」「どんな未来を次世代につないでいくのか」を真剣に問い直さなければなりません。中東問題などの地政学的リスクや、円安や物価高騰の影響を受ける中で、「競争」だけではなく互いに力を合わせる「共創」の世の中をつくっていく必要があります。
人間尊重という同友会の理念をベースに、継続は力なりと信じて突き進むこと。この交流会での気づきや学びが、新しい経営の物差しとなり、素晴らしい未来への一歩となることを願っています。
【主催者あいさつ】中同協 会長 広浜 泰久氏
女性部の目的の1つ「課題を言語化し、社会を変える私たちになる」について、真意を深く考えさせられる出来事がありました。中同協の議案検討会議でのことです。「経営指針に基づく全社一丸経営」という表現について、女性メンバーから「言葉から『同調圧力』を感じる」と意見があり、違和感の内容を丁寧に言語化してもらい、議論の末「全員参加の経営」と言い換えることになりました。
私たちが本当にめざしているのは押し付けの一致団結ではなく、1人1人が主体的に参加する経営だということに気づくことができたのです。既存の価値観に問いを投げかけ、課題を言語化することで、アップデートする実践の瞬間でした。
年々高まる同友会への期待に応え、交流会で得た気づきを自社の経営、そして地域へとつないでいきましょう。
【分科会座長報告】
第1分科会(滋賀)
「アーティスト」から「経営者」へ覚悟が事業を動かした瞬間
報告者:(株)Yasunart 代表取締役 やすな みずほ氏
子どもたちの未来を支えたいという熱い思いでバレエ教室の法人化を決意した一方で、経営者になりきれていないという葛藤を抱えていました。転機となったのは経営指針を創る会での学びです。「夢を語るだけでは、人の人生を預かることはできない」という厳しい現実に直面し、自らのプライドを捨て、仲間のアドバイスを素直に受け入れる決断をしました。この素直さが変革の原動力となったのです。
結果として、ビジョンは言葉と数字を伴う具体的な計画へと進化。滋賀県初のアーティスト社員制度への挑戦や、地域との共創という実践につながりました。
「やり方」を変える前に、まず経営者としての「あり方」を変える。その自己変革の覚悟が、事業を動かす源泉であることを全員で確認し合いました。
(Moe 代表 森永 江里子氏)
第2分科会(岡山)
「売る側」から「支える側」へ
報告者:(株)Orb 代表取締役 河井 七美氏
2014年にEC事業で起業した河井さんは、外部環境の変化に翻弄され、倒産の危機に直面しました。当時は焦りからスキル重視の採用に走り、経営理念を共有できない組織になったという苦い経験をしました。
「倒産とは、経営者の心が折れて諦めたときだ」という同友会の先輩の言葉を胸に、何度も経営指針書と向き合い、自社の存在意義を問い直した結果、単に「売る側」ではなく、社員の強みを生かして顧客を「支える側」へと大きく舵を切りました。
グループ討論では、「経営者の執着」をキーワードに、手放すことの難しさと、その重要性が語られました。経営者が自分の執着を手放し、社員の可能性を100%信じて責任を引き受けたとき、初めて社員はもっとも信頼できるパートナーに変わるのだと学びました。
((株)Life Capsule Factory 代表取締役 本郷 理英子氏)
第3分科会(東京)
徹本業か、拡本業か、変化の時代に活路を拓く
報告者:(株)白川プロ 代表取締役 白川 亜弥氏
報告者:(株)吉村 代表取締役会長 橋本 久美子氏
市場が縮小する厳しい環境下で第2創業を成し遂げた2人の報告に学びました。映像編集を手掛ける白川さんは、縮小するテレビ業界の中、専門性を徹底的に磨き上げる「徹・本業」を貫き、プロ集団としての価値を再定義しV字回復を遂げました。一方、日本茶包装資材を手掛ける橋本さんは、お茶の消費減少という危機に対し、資材メーカーの枠を超え、お茶を売るための茶器・菓子の開発やアンテナショップ運営まで手掛ける「拡・本業」へと領域を広げ、未来を共創するパートナーとして変革を遂げました。
共通していたのは、経営理念という不動の道しるべ、PDCAの計画段階から社員を巻き込み対等な関係を築く人間尊重経営の実践、そして、自流に合わせて自らを変える決断力。手法は違えど、経営者が責任を持って行動し続けるプロセスにある弱さや悩みも共有され、勇気をもらった分科会でした。
((株)プライム・ナンバーズ 代表取締役 五十嵐 美帆氏)
第4分科会(静岡)
戸惑いから覚悟、そして未来へ
報告者:(株)仕出しおがわ 代表取締役 小川 友代氏
突然の夫との別れにより、何の準備もないまま事業承継という現実に直面した小川さん。深い悲しみと不安の中、彼女を支えたのは同友会での学びと、社員、家族、そして地域のお客さまの存在でした。報告から、事業承継とは単なるトップの交代や資産の移動ではなく、企業の理念や存在意義、そして社員への思いを次世代へと引き継ぎ、発展させていく「営み」そのものということを学びました。承継は後継者だけの問題ではなく、渡す側と受け取る側の双方が対話を重ね、価値観を共有することの重要性を再認識しました。
「母がどのような思いで会社を守ってきたかを知り、思いをつないでいきたい」という小川さんの娘さんの言葉が特に心に響きました。未来に何をつないでいくかという問いを胸に刻んだ分科会となりました。
((株)植松設備 取締役 植松 昌氏)
第5分科会(福島)
社員と共に握る羅針盤
報告者:(株)エシカル郡山 代表取締役 星 佳子氏
経営指針を作成し、満を持して全社員に発表したものの、2カ月後に7名もの社員が退職。経営指針を掲げたことが、皮肉にも組織の亀裂を顕在化させてしまったのです。普通なら心が折れてしまうような事態ですが、1カ月後に再び経営指針を創る会に飛び込み、1から学び直す道を選んだ星さん。報告から「経営指針は作ることがゴールではない」という教訓を得ました。理念を掲げれば全てが解決するわけではなく、むしろ、理念があるからこそ現実とのギャップに悩み、壁にぶつかるのです。経営者は、その葛藤から逃げずに「何のために、誰のために経営するのか」を問い続ける覚悟が求められます。グループ討論では、悩み、考え続けることそのものが経営であり、その積み重ねが組織を創り、未来を創るのだという認識を共有しました。
((株)エモーション 代表取締役 鈴木 恵氏)
第6分科会(兵庫)
「断らない」という決断で唯一無二の病院へ
報告者:(株)こころ 代表取締役 堀口 こみち氏
全国から依頼が絶えない「ぬいぐるみ病院」では、ぬいぐるみを単なる「モノ」としてではなく、大切な「家族の命」として預かっています。治療費が購入価格を上回ることも珍しくありませんが、そこには価格競争を寄せ付けない圧倒的な価値が存在します。根底にあるのは、絶対に断らないという強い覚悟。困難な修復に直面した際、「難しい」という言葉を封印し、代わりに「奥深い」という言葉を使い、独自の治療法を生み出し続けました。
報告から、真の付加価値とはテクニックではなく、対象への圧倒的な深い愛から生まれるということを学びました。目の前の1体、1人を救うために逃げないこと。この「愛と覚悟」が、あらゆる業種に共通し、かつ最強の付加価値であることに気づき、熱い感動を共有した分科会となりました。
((株)スワールコミュニケーションズ 代表取締役 小山 瑞穂氏)
第7分科会(兵庫)
すべての原点は「人」 ~愛から始まる経営実践~
報告者:日和建設(株) 代表取締役 山下 共子氏
建設業界で奮闘する山下さんの人生は、人間尊重とは程遠い理不尽な歴史との戦いでした。「自分と同じ思いを社員にはさせない」と、夜間工事の撤退や残業ゼロを断行し、利益より人を優先する経営を貫きました。しかし、364日働き続けた山下さんは体を壊してしまいます。休養中に自分を見つめ直した山下さんは、これまでの自分の姿勢は、実は焦りから来る「対峙(たいじ)」であり、知らず知らずのうちに相手を追い詰めていたのではないか、と気づきました。そこから隣に立つ「寄り添う経営」へとシフトしました。「経営者自身が満たされていなければ、人に優しくすることはできない。自分を大切にすることが、人間尊重の第一歩」。まずは自分自身を慈しみ、そこから広がる優しさで社員や地域を包み込んでいくという本質的な問いを受け取った分科会でした。
((株)スリーエフ 代表取締役 吉岡 姚曄氏)
第8分科会(愛知)
安心して暮らせる地域づくりの循環サービス事業
報告者:(株)フジコン 代表取締役 前田 光代氏
地域に根ざした物流企業から、社会の欠かせないインフラへと進化を遂げた実践に学びました。地域の産業衰退により大口契約を失うという危機の中、父の跡を継いだ前田さん。当時は珍しい女性経営者としての苦悩や、家族の介護、そして自らの病という過酷な試練が重なりました。「相手を思う気持ち」を経営理念に据え、自社の役割を再定義し、運送業のノウハウを軸に、介護タクシー、お片付け、移動葬儀車など、地域の困りごとを解決する事業を次々と立ち上げました。
これらは地域の人々が自分らしく生きるための循環サービスとして機能しています。先代社長が大切にした「おせっかいと思いやり」の精神を、現代の社会課題解決へと昇華させた実践から、自社の役割を見つめ直し、新たな市場を創造する勇気を得た分科会となりました。
(美卯 代表 松原 美穂子氏)
第9分科会(沖縄)
小さな意識の変化が、会社の未来を変える
報告者:(株)御菓子御殿 専務取締役 澤岻 千秋氏
「地域・人と共に」、「諦めない経営」を学び合いました。幾たびもの危機に「今できることは何か」を問い、変化を選び続けた積み重ねが現在の御菓子御殿の姿をつくってきました。
澤岻さんは “平等な仕組みこそ社員を幸せにする”と信じ、数々のルールや仕組みづくりを強行しました。そんな中でも、社員1人1人と対話を重ねてきた姿が印象的でした。人に向き合う覚悟が組織を強くすると改めて感じました。
9・11テロやコロナ禍のピンチを救ったのは地元の人々でした。関わる人を家族のように大切に思い、全力を注ぐ姿は、まさに「労使見解」の「経営者の覚悟」そのもの。経営者として覚悟を決め、小さな気づきを行動に変え、組織を変えるところまでやり切れるか。自身や自社に関わる人の幸せのために何ができるのか? その実践が企業の価値を決定づけるのではないでしょうか。
((株)もりお・沖縄 代表取締役 嘉数 智絵氏)
【まとめ】中同協女性部連絡会代表 橋本 久美子氏
私は同友会が大切にしている柱を(1)社会性(女性経営者が増え、社会をよりよくしていく)、(2)科学性(もうけの源泉を持ち、事業を継続させる)、(3)人間性(集う人の幸せと働きがいを大切にする)と解釈しています。
入江さんの講演からは、共感型リーダーの姿を学びました。言葉を借りると「理念に沿った的確な判断をしてくれるという、根拠のない自信を持って任せる」覚悟と勇気をいただきました。
今回も交流会での主要な役割を全て女性で担いました。経験の量を増やすことが、質を高めることにつながります。現在、意思決定の場における女性比率はまだ低いですが、かつての「男の中に女1人」という状況から変わりつつあります。
私たちが経験を積み、憧れのロールモデルに出合ったら、次は自分たちが誰かのロールモデルになっていく。そんな風に、皆さんと共に歩んでいきたいです。
「中小企業家しんぶん」 2026年 7月 15日号より










