【あっこんな会社あったんだ!】地域づくり 
地域資源を地域の力に 「報恩感謝」を礎に地域循環型の事業へ挑む 
(株)白鳥プロパン 代表取締役会長 白鳥 五大氏(青森)

 企画「あっ!こんな会社あったんだ」では、企業経営に関わるさまざまな専門課題に取り組む企業事例を紹介しています。今回は「地域づくり」をテーマに、白鳥五大氏((株)白鳥プロパン代表取締役会長、青森同友会会員)の実践を紹介します。

青森市にある(株)白鳥プロパンは、創業以来70年にわたり燃料販売を中心に地域のライフラインを支える事業を行っています。同社の売り上げの約9割をガス・灯油の販売が占めていますが、白鳥氏は、同社の使命を単なる燃料の供給ではなく、暖房や給湯、調理に欠かせない「熱」を通じて、顧客に安心な暮らしを届けることだと考えています。

その原点にあるのが、創業者である祖父が大切にした「報恩感謝」です。顧客や地域から受けた恩に報い、築いてきたつながりに感謝する。その精神は代々受け継がれてきました。しかし、2008年に4代目として事業を承継した白鳥氏は、経営に追われる中で、その原点を見失っていました。

同友会で思い出した原点

同友会会員だった父の後継者として青森同友会に参加しはじめた白鳥氏。事業承継後に待っていたのは社内対立でした。社員や親族との間で意思決定を巡る衝突が深まり、「社長が2人いるような状態」に陥ります。経営に行き詰まり、悩みを同友会の仲間に打ち明けると、経営指針を通じて自らの軸を定めるよう背中を押されました。2019年、第17期「経営指針を創る会」を修了。「いかに自分が感謝を忘れ、自己中心的で、狭い視野で経営していたかを思い知らされました」と振り返ります。社員や顧客に支えられていることを再認識し、祖父の「報恩感謝」の意味を経営者として捉え直しました。

同友会の仲間の助言や経営指針を創る会を通じて、「社員を会社が一方的に採用した人ではなく、数ある選択肢の中から白鳥プロパンで働くことを選び、人生の一部を託してくれている存在」だと考えるようになった白鳥氏。理念には「私たちは、仲間を尊重しながら共に学び共に育つ、感謝と信頼があふれる集団を目指します」と掲げ、健康経営の認証取得をはじめ、社員アンケートの実施など健康づくりを進めるほか、経営計画づくりへの社員参画にも取り組んでいます。

新たな事業で地域づくり

白鳥氏は2025年、18年間務めた社長職を弟に引き継ぎ、新たな地域事業に力を注いでいます。その1つが、木質バイオマスによる温浴施設への熱供給事業です。人口10万人あたりの公衆浴場数が日本一の青森県ですが、燃料代の高騰によって地域の温浴施設は苦しい状況にあります。

そこで白鳥氏は同友会の仲間や地元事業者と協力し、森林整備で生じる木材を燃料チップとして活用する地域循環型の仕組みづくりに着手しました。林業者、木材をチップに加工する事業者、温浴施設など熱を必要とする施設を結び付け、地域資源を地域で使うエネルギー循環をめざしています。

2024年7月には、他の事業者と共にあおもり森林エネルギー(株)を設立。第1号案件として、平川市の「天然温泉『花の湯』」にチップボイラーを導入し、2026年春から本格運転を始めました。試算ではLPガスの使用量を約7割、燃料代を約3割削減できる見込みです。地域の森林資源を活用することで、化石燃料への依存やCO2排出を減らすとともに、地域の温浴施設や地元林業の維持にもつながっています。現在は第2号案件の導入も進められています。

もう1つの挑戦が不動産事業です。同社は、ガスと灯油合わせて約5000件の顧客を抱えていますが、人口減少の影響により顧客数も減少傾向にあります。数年前に宅地建物取引士を取得した白鳥氏は、不動産事業へ進出しアパートを取得し、家賃収入だけでなく住人を潜在的な顧客として燃料販売事業へつなげるとともに、エアコンの設置や壁紙の張り替えなど、新たな仕事の創出を図っています。また、人口減少が進む青森では、空き家問題も深刻です。白鳥氏は、空き家をリノベーションし民泊や賃貸として有効活用するなど、課題解決に取り組み、青森に人やお金が循環する持続可能な地域づくりを見据えています。

基本に立ち返り、100年企業へ

事業承継後の葛藤や同友会での学びを通じて、経営は自分1人の力で成り立つものではなく、社員や仲間、顧客、地域に支えられていることを改めて実感した白鳥氏。同氏にとって、祖父が残した「報恩感謝」は迷った時に立ち返る原点です。青森のライフラインをつなぎ、新たな事業で地域に報いる白鳥プロパンは、100年企業をめざして新たな歩みを進めています。

会社概要

創業:1956年
社員数:25名
事業内容:燃料販売事業、熱・空調設備事業、環境・防災事業
URL:https://shiratori-gas.com/

「中小企業家しんぶん」 2026年 8月 5日号より