若者に選ばれる企業へ 
自社の等身大の姿を伝える 進化する「昭和会社」 
アール・エスホーム(株) 代表取締役社長 多田 穣治氏(徳島)

 採用と社内環境改善を一体として取り組む企業を紹介する連載『若者に選ばれる企業へ』。第11回はアール・エスホーム(株)(多田穣治代表取締役社長、徳島同友会会員)の実践です。

私は大手住宅メーカーに就職し、2007年に親が経営する当社に入社しました。前職との大きなギャップを感じ、社内改善に乗り出しましたが、社員たちとの意識のズレから、敵対する関係に陥りました。当時は年間3~4割の社員が退職する組織でした。

その後、知人の紹介で参加した研修会で、「経営者が自身の問題に目を向けないと物事は改善しない」と学び、社内共通の判断軸として経営理念の重要性に気づきました。本格的に社員教育に取り組み始め、問題に気づく力や相手の立場に立つ力を育てることに注力。4年ほどで社内の雰囲気や業績が好転し始め、社員教育の重要性を実感しました。社員の計画が私の想定を超えたこともあり、会社を任せて社外に出る機会も増えていきました。

進化した昭和の会社

しかし2018年、人間関係を理由に2名が退職しました。社内をまとめる人間がいなかったことが原因で、会社がよくなっているように見えて、実際には一部の人間だけが頑張っている状態だったのです。お互いに支え合う文化を築くことが重要だと痛感し、本音で語り合える風通しのよい会社づくりに取り組み始めました。社員同士が話し合う機会をつくり、プライベートな会話も交え、お互いの気持ちをすり合わせていきました。

また、経営理念の浸透と社内風土づくりにつながると教わり、2010年から定期的な新卒採用に取り組み始めます。採用で心がけているのは、正直に会社の現状を伝えて入社後のギャップを埋めることです。

昨今、労働条件や福利厚生をアピールする中小企業は多いと思います。当社でも各種認定や表彰を受けていますが、住宅業界ではお客さまへの対応によって急な出勤や長時間勤務もあり、労働環境がハードな側面もあります。当社は固定残業制を導入しており、頑張りたい人が力を発揮できる会社でもあります。ですから労働条件だけではなく、根底にあるわが社のカラーを率直に伝え、それに合うかを判断基準としています。また、内定者の親に手書きのはがきを送るなど、安心感を持ってもらう取り組みも根づいています。こうした風土は「昭和的」かもしれませんが、むしろ私は「進化した昭和の会社」をめざしています。

「人間力」が会社の未来をつくる

4年目のある社員は、当初働く意味を見いだせずにいました。あるきっかけからリモートワークを整備するなど、働き続けられるようサポートすると、「会社に助けてもらった」とスイッチが入り、その後は見違えるように働くようになりました。

私は、若者たちは人間関係やキャリア、会社の発展性を重視していると感じます。一方で、「楽に働きたい」という感覚があるのではないでしょうか。若いうちに楽をすると成長に時間がかかり、周囲の負担も増え、企業の発展も遅くなります。これからのAI時代、差がつくのは「人間力」だと思います。

「地域を牽引できる企業」をめざして

同友会では、初代青年部部会長として青年部の立ち上げを経験し、青年部をお互いの企業発展の場にしたいと強く思っています。私自身、全国の先輩方から指摘されながら、自社の見直しにつなげてきました。社員が活躍できる環境をつくり、お客さまに喜ばれ応援される会社になれば、自然と「地域をけん引できる企業」に近づけると思います。まだ伸びしろだらけなので、その実現に向けた構想も練り始めています。

会社概要

設立:1997年(創業1976年)
社員数:42名
事業内容:一般顧客向けの住宅・リフォームの請負施工
URL:https://rs-home.co.jp/

「中小企業家しんぶん」 2026年 8月 5日号より