キャッシュレス決済が急速に広がっています。経済産業省によると、2025年の日本のキャッシュレス決済比率は58・0%、決済額は162・7兆円となりました(表1)。政府が2025年までの目標として掲げていた「4割程度」を大きく上回り、キャッシュレス決済は私たちの暮らしや事業活動に欠かせない決済手段となっています。
一方、キャッシュレス決済にはコストがかかります。店舗がカード決済を受け付ける場合、加盟店は決済事業者などに「加盟店手数料」を支払います。その中には、カード発行会社に支払われる「インターチェンジフィー」が含まれています。これは、加盟店側の金融機関からカードを発行する金融機関に支払われる手数料で、最終的な加盟店手数料そのものではありませんが、加盟店の大きな負担要因となっています。
このインターチェンジフィーへの対応には、各国で大きな違いがあります(表2)。EUでは、消費者向けカードについてデビット0・2%、クレジット0・3%を上限としています。豪州も現在、デビット0・2%、クレジット0・8%などの上限を設け、2026年10月からはさらに引き下げることが決まっています。
中国も2016年の制度改革で、カード発行銀行が受け取る手数料の上限を規制し、決済コストの一部を政府が管理しています。一方、韓国では中小企業の負担に直接着目しています。2026年上半期には、年間売上30億ウォン以下の零細・中小加盟店を対象に、クレジットカードの加盟店手数料を0・40~1・45%、チェックカードを0・15~1・15%とする優遇料率を適用。対象は約308万7000店、全カード加盟店の95・7%に及びます。
これに対して日本には、一律の法定上限はありません。経済産業省は2022年からインターチェンジフィーの公開を促進し、料率を比較できる環境を整えることで競争を促しています。その結果、中小企業向けの低手数料プランも登場し、2025年10月時点では、加盟店手数料1・98~2・50%程度のプランが示されています。
ここで注意したいのは、海外の「0・2%」「0・3%」などの数字と、日本の「2~3%程度」といった加盟店手数料を単純に比較できないことです。インターチェンジフィーと加盟店手数料は別のもので、決済ネットワークなどのコストも加わります。それでも、中小企業にとって2~3%程度の決済手数料は小さな負担ではありません。人件費、原材料費、エネルギー価格などの上昇が続く中、この負担は利益を圧迫します。
日本のキャッシュレス決済比率は58・0%に達しました。いまや政策課題は「普及させること」だけではありません。EUや豪州、中国では決済コストの一部を規制し、韓国では中小加盟店の手数料を直接抑制しています。日本は透明化と競争促進によって負担を抑える方向ですが、その効果を継続的に検証する必要があります。
中同協では、キャッシュレス決済手数料の低減化、上限規制などを政策要望に掲げています。さらに各国の制度も参考にしながら、キャッシュレス化による利便性だけでなく、そのコストを誰が負担するのかという視点から、中小企業の決済手数料を適正化し、負担を軽減する政策を検討することが求められています。
「中小企業家しんぶん」 2026年 8月 25日号より












