【わが社のSDGs】
高性能住宅を当たり前に お客さまの豊かさを追求した先にある持続可能な経営 
凰建設(株) 会長 森 幹治氏(岐阜)

連載「わが社のSDGs」では、経営理念をもとにSDGsに取り組む企業の事例を紹介します。第35回は、凰建設(株)(森幹治会長、岐阜同友会会員)の取り組みです。

 木造注文住宅を手掛ける凰建設の強みは、日本最高性能の高気密・高断熱と省エネ性能を備えた高性能住宅を徹底して追求していることです。夏は涼しく冬は暖かい、さらにエネルギー消費を抑え、光熱費を住む人が設定し、その範囲に収められる高性能住宅を家づくりの基本と位置づけています。

高性能住宅へのこだわり

 その原点は1980年代までさかのぼります。当時、防音工事に携わる中で、「音を通さない部屋は暖かい」という顧客の声をきっかけに、高気密・高断熱住宅との共通点に気づきました。1990年には高気密・高断熱住宅のモデルハウスと出合い、その将来性を確信。1997年ごろからは気密測定にも取り組み、2000年にはカナダのR-2000住宅について学び、2010年にはドイツを視察するなど、海外の先進事例も自社の家づくりに取り入れながら、性能を追求してきました。

 さらに、建築支援システムebifitwを開発し特許を取得。一般的には住宅を設計してから性能を計算しますが、同システムでは先に目標とする性能値を入力し、そこから必要な仕様を逆算します。性能を「結果」ではなく「目標」として捉え、設計段階から管理する仕組みです。

 こうした技術の蓄積は、ZEHへの取り組みにもつながっています。同社は2020年度までにZEH普及率50%以上という目標を達成。現在は、2030年度までに自社物件の90%以上をZEHとする目標を掲げています。断熱性能についても、4~5年ほど前から断熱等級7を達成できる水準に達しています。

 また、岐阜県産材を活用することで、地域の森林整備や林業の活性化にも取り組んでいます。その結果、中東情勢の悪化による資材調達への影響も一部にとどまったと言います。

 こうした高性能住宅へのこだわりは顧客からも評価され、現在は受注まで1年待ちの状態です。同社のノウハウを学びたい工務店も増え、全国から講演依頼が寄せられています。森氏や代表取締役社長の森亨介氏は各地で講演活動を行うほか、実務者向けの空調講座なども開催しています。

人を育てることが、会社を強くする

 森氏は地元の中学校などで職業講話を行うほか、同社で職場体験も受け入れています。また、専門学校などで講師を務め、住宅性能だけでなく、キャリア教育や働く目的についても伝え、学生が働き始める前から会社の考え方に触れる機会をつくっており、結果として採用に苦労しない状況につながっています。さらに、地元の各工務店の新人を集めた新人研修も15年ほど続けており、4年前からはその事前研修も始めました。

 こうした「人を育てる文化」は、毎月9日に開催される勉強会にも表れています。社員と協力業者が集まり、家づくりについて学ぶだけでなく、顧客アンケートを基に仕事のやり方の改善についても検討しています。技術だけでなく、おもてなしまで含めて品質を高める仕組みです。

地域とのつながりを、日常から育てる

 事務所併設の「ふれあいホール」は、地域の会合や教室、イベントなどに開放され、多様な活動に使われています。

 また、同社が開催する夏祭りには地域住民やオーナーなど500~700名が集まります。地域貢献を「宣伝活動」とせず、地域住民との日常的な接点づくりを重視した結果、訪れた人の要望から住宅相談窓口も設けました。

 2014年には、ふれあいホールと同社のパッシブモデルハウスを地域住民の受け入れ先として提供する覚書を締結。同社のモデルハウスは電力会社から電気を引かず、太陽光発電で自給自足できる仕組みです。両施設を活用し、災害時には外部電源を活用し、携帯電話の充電に加え、冷蔵庫や医療機器などへの電力供給も想定しています。

豊かな暮らしと持続可能な経営の実現へ

 凰建設がめざすのは、高性能住宅を当たり前にすることで、顧客の豊かな暮らしを実現し、地域や社会の持続可能性にも貢献していくことです。森氏は、高性能住宅を名乗りながら、十分な気密性能を確保していない住宅も少なくないと指摘します。これまで培ってきた技術力を生かし、高性能住宅の普及と業界全体の底上げに取り組む考えです。また、AIによる業務効率化や安定的な受注体制の構築など、持続可能な経営基盤づくりにも注力していきたいと語ります。

 これまで培ってきた技術と人とのつながりを生かしながら、高性能住宅が当たり前となる未来に向けて、同社の挑戦は続きます。

会社概要

創業:1959年
社員数:15名
事業内容:木造注文住宅、高性能リフォーム、バリアフリー工事、防犯工事、防音工事
URL:https://www.ohtori.net/

「中小企業家しんぶん」 2026年 10月 5日号より