同友エコ受賞企業(奨励賞) 
純国産きくらげで育む 働く人と地域の未来 
(株)緑工房 代表取締役 河村 雄太氏(鳥取)

 同友エコ2025―2026受賞企業を紹介する本連載。今回は、奨励賞を受賞した(株)緑工房(鳥取同友会会員)の取り組みを紹介します。

 鳥取市にある(株)緑工房は、菌床づくりから、栽培、収穫までを一貫して行い、純国産きくらげを生産しています。その根底にあるのは、障害のある人が安定して働き、地域で暮らし続けられる場をつくるという思いです。

安定した仕事を生み出す

 河村氏は、短大卒業後に父が運営していた就労支援事業所に就職し、露地野菜栽培の責任者を務めていました。しかし、障害のある利用者の方々にとって夏の暑さは作業の負担が大きく、労働環境面での大きな課題でした。そこで屋内で育てることのできるキノコ栽培に進出。さらに、利用者の新たな働く場として就労支援事業所の農業部門を独立させる形で緑工房を設立しました。

 しかし、当初取り組んだシイタケは、価格が安定せず、生育が早いため休日も取りにくいという問題がありました。転機となったのが、全国で長崎ちゃんぽん専門店を展開するリンガーハットジャパン(株)から、国産きくらげの生産を求められたことです。きくらげはシイタケのように毎日世話をする必要がなく、さらにリンガーハットから全量買い取りが見込めたことで、年間を通して計画的に生産でき、仕事と工賃、休日の安定につながりました。

純国産と品質へのこだわり

 同社の強みの1つは、菌床を外部から購入せず、自社工場で製造していることです。培地には国産原料を使用し、培養から収穫までを自社で担うことで「純国産きくらげ」として販売しています。

 国産品の珍しさだけに頼らず、品質を客観的に示すため有機JAS認証にも挑戦しました。「きのこ農家として、おいしさを追求するのは当然。食べる人の健康も守れるきのこを作りたい」との思いが、同社の商品づくりを支えています。

経営指針で見つけたぶれない軸

 父から事業を任された当初、河村氏には「社長になった」という意識が乏しく、何から始めればよいのか分からない状態でした。2017年に同友会へ入会した河村氏は、後継者として成果を出せない焦りから「経営指針を創る会」を受講します。

 初回の講義では、提出した内容を「経営者の覚悟が伝わらない」と指摘され、「何のために経営しているのか」という問いにも答えられませんでした。それでも、同じ悩みを経験した経営者との対話を重ね、自分の言葉で考えを伝える中で、会社の進む方向性を確立していきます。どういった人材が会社に必要なのかも考えるようになった河村氏は、指針作成後には自分で初めて社員を採用し、現在は栽培責任者を任せています。

「働く・住む・食べる」を地域の中に

 父が亡くなり、河村氏は、残った社員や利用者、その家族のために会社の存続はもちろん地域振興へ責任を強く意識するようになりました。きくらげ狩りや小学生の工場見学を開くほか、地域団体によるきくらげ栽培にも協力。高齢者の仕事を生み、収益を地域行事の運営に役立てる取り組みへ広がっています。

 今後掲げるのは、「働く・住む・食べる」を結ぶ2035年ビジョンです。就労支援、住まい、食事を一体で支え、障害のある人が安心して暮らし、自立に向けて働ける地域の基盤をつくる。純国産きくらげから始まった仕事づくりは、誰もが地域で役割を持てる未来づくりへとつながっています。

会社概要

設立年:2012年
社員数:2名
事業内容:きくらげの栽培、加工販売ときのこの菌床の製造販売
URL:https://midorikoubou.jp

「中小企業家しんぶん」 2026年 10月 5日号より