10月1~2日、第54回青年経営者全国交流会(略称:青全交)が宮城で開催され、全ての同友会と中同協から1645名が参加しました。今回の特集では、3つの分科会レポートや2日間のまとめなどを紹介します。
開催地あいさつ
宮城同友会 代表理事 鍋島 孝敏氏
ようこそ杜(もり)の都・仙台へ。開催地を代表して、全国からお集まりいただいた皆さまを心から歓迎いたします。
今回の青全交では、「全国行事は2日間しっかり参加し、しっかり学ぶ」ということを開催地として大切なテーマに掲げ、参加目標を1500名としました。その結果、全国から1645名もの皆さまにご参加いただくことができました。本当にありがとうございます。
そして、その「2日間しっかり参加し、しっかり学ぶ」を目に見える形にするのが、本日の全体会です。この後、140グループ、1000名を超える皆さんが一堂に会し、グループ討論を行います。会場を見渡すと、ほぼ全てのテーブルが埋まっています。この光景こそ、同友会の学びの力であり、仲間同士が共に育ち合う姿だと思います。本当にありがとうございます。
もう1つ、本日の大きな学びが基調講演です。初めて後藤清広さんの事例報告を聞かれる方は、きっと驚かれると思います。その本質は業種を超えて、これからの私たちの経営に大きな示唆を与えてくれる内容です。
明日から自社で実践できることを1つでも持ち帰ってください。本日が皆さまにとって実り多い1日となることを願い、開催地からの歓迎のあいさつといたします。
熊本同友会あいさつ
熊本同友会 代表理事 熊井 聡氏
皆さまご存じの通り、7月28日に大きな地震が発生しました。奇しくも平成28年熊本地震からちょうど10年の節目の年で、ようやく落ち着きを取り戻してきた、あるいは記憶が少しずつ風化してきたと感じていた中で、再び大きな地震が起こりました。人的被害や物的被害に加え、中小企業にとっては観光客の減少や飲食業の注文キャンセルなどによる経済的な被害も大きく、甚大な影響が出ています。
そうした中、全国の同友会仲間の皆さまから、多大なるご支援、応援、激励をいただきました。それらが私たち熊本同友会にとってどれほど大きな力になったか、言葉では言い表せません。熊本同友会の全会員を代表し、心より御礼申し上げます。
同友会会員企業も大きな被害を受ける中、事務局を中心に「BUY FOR KUMAMOTO」というサイトを立ち上げました。被災企業や熊本同友会会員企業の商品を紹介し、販売サイトやクラウドファンディングへのリンクなどを掲載しています。まだ営業を再開できていない企業も多く、掲載情報は十分ではありませんが、今後さらに充実させていきますので、皆さまにも引き続きご協力をお願いしたいと思います。
「1社もつぶさない、1社もつぶさせない」という思いの下、地域のインフラとして、そして中小企業憲章が謳(うた)う「社会の主役」として、熊本同友会はこれからも復旧・復興に努めてまいります。今回の青全会のテーマは、まさしく今の私たちに向けられた言葉ではないかと感じています。今後とも、皆さまの応援をよろしくお願いいたします。
分科会レポート
第2分科会(中同協)
人を生かす経営 変化が求められるこの時代で維持発展し続ける企業とは何か
報告者
岡山トヨタ自動車(株) 代表取締役社長 梶谷 俊介氏(岡山)
(株)A・モンライン 代表取締役 平澤 本氣氏(愛知)
コーディネーター
(株)ファーストディレクション 代表取締役 木本 康大氏(岡山)
第2分科会は「人を生かす経営」をテーマに、中同協社員教育委員長の梶谷俊介氏と中同協青年部連絡会代表の平澤本氣氏によるパネルディスカッションでした。
「変化が求められるこの時代で維持発展し続ける企業とは何か」をサブテーマにした本分科会では、共育に焦点を当てて、社員をもっとも信頼できるパートナーとし、共に育つ社風づくりを「労使見解」に照らし合わせながら、どう企業内に築くかを議論しました。
それぞれが見解を述べ、自社の取り組みを話す中、人間は1人1人が違う、他者との関り合いの中で自ら成長していく生き物であること。経営者が経営への思いも、自身の弱みも表に出し、相互に強みを引き出せる「対等な労使関係」を樹立すること。地域における自社の役割を明確にし、社員1人1人が地域をよくする主体者として、社員の提案ややりたいことに対して「やろう」と言える柔軟な組織をつくることなどが確認されました。
その後のグループ討論では「最も信頼できるパートナーとはなにか」「共に育つ社風をどう作るか」をテーマに活発に議論され、労使見解の実践を学び合いました。
第14分科会(北海道)
創業91年、柔軟な発想で切り開く老舗企業の未来をつなぐ挑戦 正解のない承継
報告者
第一ゴム(株) 取締役統括本部長 藤本 賢人氏
第14分科会では、第1ゴムの藤本賢人取締役統括本部長が報告。同社は国内でわずか3社、北海道では唯一の国内製造を続ける老舗長靴メーカーです。確かな技術力に裏打ちされた機能性に、ファッション性を掛け合わせた商品戦略、社長である父との葛藤、同友会の学びと実践を語りました。
現状に危機感を持った父が急激に社内改革を進める中、社員には不安と反発が広がりました。転機は同友会での学びでした。社員や会社を変えようとするのではなく、力を発揮できる環境を整えることが経営者の役割だと気づき、社員約80名全員との個別面談、若手の抜てきや部門を超えた人材配置、社員発案による商品開発などを実践。結果、社員が商品や仕事に誇りを持ち、挑戦してもよいという雰囲気が生まれました。営業の意識が変わり、薄利多売から良品適価の販売方針にシフトし、収益性も向上。今後も自社の価値を未来につなげるため挑戦し続けたいと語りました。
報告後は「自社の付加価値を高めるために取り組んでいること」をテーマにグループ討論を行い、活発な議論が交わされました。
第18分科会(宮城)
鼻につくエリートが、ヒトに助けられてつながった世界
~布施商店はベンチャー企業じゃなかった
報告者
(株)布施商店 代表取締役 布施 太一氏
布施氏は、大手総合商社に入社し、英国や中国で海外事業を経験。東日本大震災を機に故郷・石巻を強く意識し、34歳で家業の布施商店へ戻ります。しかし、それまでの経験から「自分なら何とかできる」と考え、社長の父と衝突しながら新規事業に挑むも、成果にはつながりませんでした。
転機となったのが、同友会の「経営指針をつくる会」です。先輩経営者の問いかけや父との対話を通じ、食や家族、地元の存在を当たり前と捉え、感謝を忘れていた自分に気づきます。父の「どうしていいかわからない」という本音に触れ、会社を背負う覚悟を決めました。
その後も大型投資が成果につながらず、苦境が続きました。それでも社員と10年ビジョンを描き、海外展開を経営方針として掲げ続ける中で、国内で伸び悩んだ加工品が米国で定番商品に採用され、地域企業との連携による米国向け冷凍寿司の製造にもつながりました。
布施氏の歩みを通じて、1人で会社を変えるのではなく、人とつながり、支え合いながら未来を切り拓くことの大切さを学ぶ分科会となりました。
2日間のまとめ
中同協 幹事長 中山 英敬氏
林実行委員長をはじめとした宮城同友会の皆さん、そして関係者の皆さんに心より感謝申し上げます。今回の青全交で改めて感じたこと、それは経営者として何より大事なものは、人としての基本「凡事」だということです。
さて、日本経済は成長が続いていると言われていますが、中小企業や各地域では依然厳しい状況が続き、物価高に賃上げや金利上昇、相次ぐ自然災害など、私たちは逆境に直面しています。そうした中、どのように未来を切り開いていくのか、青年経営者に課せられた重要な課題として2点に整理しました。
1つ目は、社会的価値を生み出す企業づくりです。同友会の学びを自社で実践し、企業変革と成長につなげていく、その中心にあるのが人を生かす経営であり、めざす姿は21世紀型中小企業です。これまでのやり方の延長線には、飛躍的な成長はありません。改めて自社の存在意義を問い直し、地域課題や社会課題を自社の課題と捉え、経営指針に位置づけて実践することが必要です。そしてその実践を振り返り、成果と課題を整理し、経営指針を毎年更新することで企業成長につながります。新たな社会的価値を生み出すためには、社員1人1人の創意工夫や自主性が十分に発揮される企業風土をつくることが欠かせません。その根底にあるのが、「労使見解」に基づく人間尊重の経営です。人を生かす経営を徹底して実践することが、これからの企業づくりに求められています。
2つ目は、いかに持続可能な地域をつくるかです。基調講演は、奪い合う漁業から、海を育み地域の未来を守る漁業へ転換して、「漁業者」から「漁業家」へと成長された実践報告でした。まさに理念経営であり、環境経営の実践だったと思います。私たち「中小企業家」の「家」という字には、経営の専門家としての覚悟が込められています。その覚悟とは、自社だけでなく地域や社会の未来にまで責任を持つことです。そのためには、人を生かす経営の実践企業を地域の隅々に増やし、仲間を増やしていくことが必要です。そして、地域全体を巻き込むことです。次代を担う子どもたちと一緒に、地域の現状や課題を見つめ、未来を考え、働くことの意義や喜びを、私たち経営者自身が示していくことが大切です。そして、若い世代の知恵や力を地域づくりに生かしていく必要があります。
同友会は運動体です。中同協では、活動を「当面する具体的な課題に取り組むこと」、運動を「長期的な視点に立って戦略的課題に取り組むこと」と定義しています。同友会運動の原点は、中小企業の存立と発展、社会的地位向上をめざすことにあります。国民の多くが働く中小企業をよりよくしていくことは、1人1人を大切にする豊かな国づくりにつながります。1人1人が持てる力を発揮し、その人らしく、人間らしく生き、活躍できる社会をめざすのが同友会運動です。だからこそ、人間尊重の「国づくり」を常に意識して、支部や地区、委員会などで活動してほしいと思います。
同友会の先輩たちが、逆境の中から立ち上がり、声を上げ、この運動を育ててきました。その歴史と理念を学び、中小企業憲章・条例推進をはじめとする同友会運動に、ぜひ多くの青年経営者に関わってほしいと思います。次代を担う皆さん1人1人が、運動の旗を掲げる主体者です。以上、2日間のまとめといたします。
参加者アンケートより(抜粋)
同テーブルに不離一体の体現者がいたおかげか、自社をもっとよくしたいと徹底的な自己開示と各社の実践を聴くことができ、あっという間の100分でした。宮城同友会の皆さま、このたびの機会に感謝申し上げます。(第1分科会)
人を生かす経営が経営の根幹にあることを改めて考えることができ、もっともっと深く学びたいと感じさせられました。(第2分科会)
報告では、社員との一対1の関係性の重要性、人間関係は真っ向勝負だと改めて感じました。グループ討論では、自分の熱量は高い、周りは低い、それだけで終わらせず、社員との関わりのヒントが詰まっていたと感じました。(第6分科会)
10年ビジョンの効果性を知ることができ、またグループ討論でさまざまな意見を聞けたことでビジョン作成のハードルが下がりました。(第8分科会)
自分が抱えている課題を報告者は乗り越えておられ、私自身のことをしったしていただけたと思っています。会社に帰ったらまず、社員さんと向き合い、話し合い、気遣い経営から脱却して同じ方向を向いていくための実践をしたいと思います。(第12分科会)
14分科会のテーマである「付加価値を高める」について、価値とは? 付加価値との違いは? 存在価値は?と自社の価値についてさまざまなことを見つめ直すことができた、素敵な報告でした。(第14分科会)
「中小企業家しんぶん」 2026年 11月 5日号より










