過剰出店で「勝者消滅」か? ~「狂気の大型店出店」最終章へ

 大型店舗法が廃止され、大店立地法等へ移行した2000年から今日まで、大型商業施設の全国的な出店がすさまじい勢いで進められています。「全国どの地域も激戦地でない所はもう皆無」と言われるほど、過剰出店が進行。今年は、大型ショッピングセンターによる「陣取り合戦」のような出店競争に加え、他業態の出店も加速しています。

 コンビニ大手5社の2005年度の出店数は過去最多の2880店。ドラッグストア大手10社の出店計画も430店を超え、昨年の過去最高を更新。同じくホームセンター大手の出店も過去最高と、まさに日本列島を覆い尽くす勢いです。

 「覆い尽くす」という言い方は誇張でなく、5月31日に経済産業省が発表した2004年の商業統計速報によれば、小売業の売場面積は1億4419万平方メートル。人口1人に1平方メートルを超えると飽和感がでるというのが定説のようですが、その水準を大きく超えた現状は、明らかなオーバーストア状態です。

 しかも、商業統計速報は、小売事業所(商店)数が前回調査(2002年)比4・8%減の123万8296店となり、1958年調査を下回る水準に落ち込んだと指摘。この2年間で6万店が姿を消し、高度成長前の水準まで減ったことを考えると、いかに大手商業施設が中小・零細商店を「駆逐」し、出店に狂奔しているかがわかります。

 当然、過当競争は限界に近い状況。坪売上高は1991年をピークに低下し、2002年の坪売上高は1991年比で75%まで効率が悪化しています。その結果、全業態で既存店が前年を割るという前代未聞の事態に至っています。最後の成長業態ドラッグストアも、昨年度ついに前年割れ。しかも、イオン、イトーヨーカ堂、コンビニのセブンイレブン、ドラッグストアのマツモトキヨシなど、どの業態も勝ち組と言われる企業でさえ、総崩れの状況です(「狂気の出店」『激流』6月号)。

 同友会では1990年代に「激変消滅の時代」が時代認識のキーワードでしたが、いよいよ「勝者消滅の時代」を迎えるのでしょうか。規制緩和や「弱肉強食」思想による際限のない大手商業の拡大は、その目的である利益の確保ができなくなるという根本的な矛盾を抱え込みつつあります。

 一方、会員企業のスーパーの健闘ぶりが注目されます。中同協発行のメールマガジン「DoyuNews」の「日本列島おもしろ企業探訪の旅」では、第4回で(株)タカイチ(山形)、第5回で(株)アサノ(宮城)を紹介しています。

 (株)タカイチは、24時間営業のスーパーもある中で、日曜、祝日、盆・正月は休み。人間らしい暮らしを大切にする姿勢は、社員のお客様に対するまごころあふれる対応に現れます。(株)アサノも、地域密着の典型。「おさいふカード」という会員制のポイントカードを導入し、1万人以上が会員に。産直野菜など特売情報を携帯電話にメール配信し、タイムリーな情報提供でお客様から信頼されています。両社とも同友会で学び、社員と思いを共有し、お店が「冷蔵庫」がわりになるほど、地域に密着しています。

 7月7~8日、千葉で開かれる中同協第37回定時総会では、第13分科会で(株)京北スーパーの石戸相談役(千葉)が報告。中小企業の新たな活路と展望が示されることが期待されます。

(U)

「中小企業家しんぶん」 2005年 6月 15日号より