コンパクトなまちづくりを考える ~深刻化する大型店撤退の影響

 6月15日号の本欄では、大型商業施設の全国的な出店がすさまじい勢いで進められている状況を「狂気の大型店出店」と表現し、その結果、全業態で既存店の売上げが前年を割るという前代未聞の事態に至っていると紹介しました。

 このような販売効率の悪化が急速に進むオーバーストア状態の中で、出店問題に加えて今、大型店撤退による大型空き店舗が各地で発生し、地域経済に大きなダメージを与える事例が目立っています。

 先日、「中小企業と地域再生」議員連盟の「まちづくり三法」研究会に参加したおり、日本商工会議所など各団体がこぞって大型空き店舗問題を強調していたのが印象的でした。

 日商の全国調査(367商工会議所が回答)によると、大型退店店舗の立地場所は中心市街地が51%を占め、空き店舗が完全に埋まった所が37%、空き店舗のままの33%と空き地を合わせると4割を超える状況。経営破綻に加え、他の郊外大型店との競争激化で撤退したり、自ら郊外移転するケースが多く見られます。

 また、退店に当たっての地元側に対する事前通知・説明や跡地利用についての事前相談は、「あまり行われなかった」と「全くなかった」の合計で52%と、大型店の社会的責任があまり果たされていない実態が浮き彫りになっています。

 地域経済は、大型店出店で甚大な打撃を受け、撤退でも失業者対策や後継店舗対策、取り壊し費用など多大な負担を強いられます。振り回される地元はたまったものではありません。この日商の調査報告では、「秩序ある競争ルールの構築が不可欠」と結論づけています。

 今、このような都心部の空洞化に歯止めをかける考え方として注目されているのが、コンパクトな都市づくりです。

 コンパクトシティの発想は、市街地の拡大を抑制し、都市機能を中心部に集積することで、職住接近により自動車の利用を減らし、環境改善を図るほか、行政コストを抑え、中心市街地の衰退を防ぐなど、少子化で人口増加が頭打ちになり、成熟した都市の活力を保持していく政策として注目されています。

 2005年版『中小企業白書』でも、コンパクトな都市づくりに着目し、丁寧な分析と事例紹介をしています。

 たとえば、2020年までに予想される人口減少により、都市内部の都市施設に係る1人当たり行政コスト(維持更新費用)にどの程度の違いが生じるかを試算。人口10万~20万人以上の市町村では、DID(人口集中地区)で平均3600円/人、DID以外で平均5万5450円/人などと、それぞれ1人当たり行政コストが上昇するとの試算結果を示しています。

 もちろん、市町村単位でコンパクトシティをめざしても、近隣自治体が巨大ショッピングセンターを誘致すると、実効性が削がれることになります。都道府県ベースでの広域的な対応が必要です。また、人口低密な農山漁村地域を切り捨てるような間違った方向や運用に陥らないように注意することも大切です。

 コンパクトシティは、城壁による都市づくりを歴史にもつヨーロッパの発想が根底にあるかもしれません。日本の風土に合った適応と各地域でのまちづくりへの創造的応用が期待されます。

(U)

「中小企業家しんぶん」 2005年 7月 25日号より