中小企業家と行政人の「新たな出会い」 ~公と民のパートナーシップをすすめよう

 最近の中同協総会など全国行事での来賓の方のあいさつは、型通りのあいさつが少なくなり、かなり踏み込んだ同友会への期待を語る場面が多くなってきました。各同友会と地元行政との関係も同様で、同友会に対する評価が高まっているという話をよく聞きます。もっとも、「理念や目的に比して、現在の会勢や企業づくりのレベルなどからすると、実力以上に同友会をあてにされて大変」という声も一部にはあります。しかし、外からの期待はチャンスであり、身の丈の実力のちょっと上の水準の力を発揮して期待にこたえようと努力することが大切です。

 7月の中同協総会・第15分科会は「東京都墨田区の商工行政に学ぶ」と題して、墨田区産業経済課長の高野祐次氏に報告いただきました。出席者のアンケートには、「行政マンである高野さんが、これほど生き生きと楽しそうに墨田の産業政策や取り組みを報告されている姿に感動しました」「今まで行政に何も期待していなかったり、何を期待してよいか不明だったが、その具体的イメージが明確になった。地域の中で、金やモノでなく、システムづくり、仕掛けづくりの楽しい行政とのお付き合いの仕方を教えていただきました」という感想があるように、すぐれた行政人である高野さんの話に衝撃を受けた参加者が多かったようです。

 これまでの役所に対するイメージは、「オ・カ・タ・イ」の4文字という話があります。「オ」は遅い(だらだら、非効率)、「カ」は固い(柔軟性がない、前例踏襲)、「タ」は縦割り(たらい回し、責任回避)、「イ」は威張る(高慢、横柄)という意味だそうです。確かに、こういう実態の行政に思い当たる節もあります。しかし、地方分権推進のもと、自治体に自己決定権の拡充と自己責任原則が導入され、公務員も中央を向いた仕事でなく、地域の課題を自分の頭で考えて対応することが求められるようになってきました。この中で役所の悪弊も克服されることを期待したいものです。

 先日、ある県庁所在地の市の幹部と同友会の中小企業・産業振興基本条例をテーマとした合同の研究会に参加した折に、産業部長が「条例を作るのは大事だが、実効性のある施策を具体的に進められるようにすることが大切」という主旨の発言をされていたのが印象に残りました。故郷をなんとか活性化させたいという真剣さが伝わってきました。

 今、金融アセスメント法や中小企業振興基本条例等に取り組む各同友会を通じて、中小企業家と行政人の「新たな出会い」が生まれています。そこでは、双方ともに「公共」とはだれのために、何のために存在すべきなのかという本質的な問いかけを考える機会となっているのではないでしょうか。そして、私たち中小企業家は、役所の不備を指摘するだけではなく、単なる「受益者」の立場からの転換も不可欠となります。

 私たちは、中小企業の立場から、公と民(行政と住民)のパートナーシップ(協働)にもとづいた「公共」の仕事を担うことが求められています。それは、市場原理とは異なり、同友会で経験している共生と互助の原理にもとづいた地域の内発的発展を展望することにつながるでしょう。さあ、中小企業振興基本条例等の課題を持って役所の敷居をまたいでみましょう。

(U)

「中小企業家しんぶん」 2005年 9月 15日号より