日中はまだ夏の暑さが残る9月24~25日、広大な京都御所に接する同志社大学今出川キャンパスで、日本中小企業学会第25回全国大会が開催されました(関連記事7面参照)。統一論題は、「中小企業の新たな連携(コラボレーション)を目指して」。
今年の中小企業政策の1つの目玉が「新連携」であることもあり、「連携」は“旬”の言葉です。当大会でも、「連携」「コラボレーション」のほかに、「ネットワーク」「リンケージ」「パートナーシップ」「アライアンス」など、論者により使う言葉や定義は違いますが、企業間や産学官で協力して事業の変革と創造に挑戦する、中小企業の事例の分析と理論が発表されました。その中で特徴的だったのは、中小企業家同友会の名前や会員企業が、かつてなく多く登場したことです。
特に、国際交流セッションでは、3つの講演のうちの1つを、兵庫同友会前事務局長の栄敏充氏が講演。「アドック神戸」「ワット神戸」など、兵庫同友会の5つの連携グループの実践が紹介され、研究者の皆さんの注目を浴びました。共同開発プロジェクトなどで具体的な成果を生み出しているだけに、強い関心を呼んだようです。
栄氏は、初発のアドック神戸が10年目を迎え、なぜそれだけ活動を継続できたのかについて、次の3つの要因を挙げました。
(1)兵庫同友会の会員で構成されているので、基本的な「理念」が一致し、お互いの信頼関係が構築されていること。(2)運営には行政や大学、支援機関などにも参加していただいているので、目先のエゴに陥らず視野の広い取り組みが可能になったこと。(3)5つの連携グループは、失敗経験とノウハウのすべてが同友会事務局に蓄積されるために、失敗を事前に回避できること。
このような成功要因の分析からは、結果的にネットワーク活動における同友会の優位性を物語るものとなりました。
当大会での研究者の研究発表でも、「信頼に基づく自律的調整」とか、「理念共有によるベクトルの一致」というキーワードが挙げられていました。ただ、同友会の場面で具体的に考えると、たとえば「信頼」は仲間同士の情緒的な信頼感だけでなく、ときには厳しくお互いの課題を指摘し合うなど、学び合いを通じた理性的な信頼関係のイメージが浮かんできます。
また、「理念共有」でも同友会理念という奥深く発展の可能性のある理念でのつながりがネットワーク連携でも威力を発揮しています。
「同友会の3つの目的」の総合的実践や「自主・民主・連帯の精神」の発揮、「国民や地域と共に歩む中小企業」の理念の追求という重層的な同友会理念の中で、ネットワーク連携活動も検証され、失敗しても教訓化でき、復元力を持つことができると考えます。
中小企業学会で理論的な刺激をいただき、改めて同友会運動、とりわけネットワーク連携の分野でも新しい発展の可能性を確信することができました。
(U)
「中小企業家しんぶん」 2005年 10月 15日号より