信用保証制度の本来の使命に立ち返れ~信用保証料率のリスク反映について

 日本経済新聞(2月19日付)は「信用保証料率、リスク反映」というタイトルで、本年4月から信用保証制度での保証料の料率(現行一律年1.35%)を、企業体力に応じて0.5~2.2%の9段階に分けると報じました。

 また、同紙の2月22日付では、2006年度から銀行系ノンバンクに、企業向け融資の信用保証を付ける業務を解禁するとも報じました。三菱東京UFJ銀行系はアコム、三井住友銀行系はプロミスが参入する方向としています。

 ノンバンクを活用すれば、大手銀行が零細企業や個人事業主などに5~10%強の貸出金利で機動的に資金供給できるようになる見通し、と解説しています。信用保証制度に消費者金融が前面に出てくるとは驚きです。隔世の感を禁じ得ません。

 このような方向は、すでに昨年の中小企業政策審議会の「信用補完制度のあり方に関する検討小委員会とりまとめ」で打ち出されていました。これに対し、中同協は昨年6月、「保証料率の弾力化や部分保証制度等の導入ついては、中小企業、特に小規模企業に対して金利と保証料の負担を重くし、場合によっては企業の継続を困難にすることも懸念され、反対する」という意見発表をしています。

 その理由では、「経営状況の良好な中小企業者に対して安い保証料で融資を提供できることは結構なことではあるが、そのような企業は民間金融機関からプロパー融資を受けることができる。…問題は、『相当信用リスクの高まった中小企業者』に『リスクに応じた適正な金利と保証料』を課して経営の安定的な継続ができるか、ということである。激しい競争の中で、低い利益率で経営を維持してきた中小企業者にとって保証料率の引き上げは命取りになる可能性もある。このような中小企業層に対してこそ政策的対象として政策金融を厚くするべきである」と主張しました。

 信用リスクの高い中小企業は、金融機関からの借入金利も高いはずで、保証料も上がれば負担が大きく、最も信用保証を必要とする企業が利用しにくくなる可能性が高く、公的な信用保証理念とは矛盾します。

 昨年12月、東京同友会と東京信用保証協会との懇談では、「協会としては部分保証や保証料率の弾力化については、小規模・零細企業の資金調達に支障をきたさないような形で導入すべきだと考えています」と回答しています。国の政策が実行の現場で、どのように調整されるのでしょうか。今後、注目される回答です。

 信用保証制度を保険や融資によってカバーする中小企業金融公庫は、政府系金融機関を1機関とし、今後3年間で融資残高を半減させるという政府方針の渦中にあります。このままでは、信用保証制度、政策金融の大幅な後退が懸念されます。あらゆる場面で中小企業に対する公的融資の公共性、必要性を経営の現場の声として主張していくことが求められています。

(U)

「中小企業家しんぶん」 2006年 3月 15日号より