なぜ企業数統計に大きな違いが?~バラバラな官庁統計の一元化を

 総務省の事業所・企業統計調査(2005年10月公表)によれば、2004年の事業所数は572万8000事業所(不詳事業所除く)で、5年前の1999年に比べ47万事業所数が減少し、7.7%の減少。同じく会社企業数では、153万企業で5年前に比べ13万8000企業、8.3%減となりました。また、事業所の廃業率は90年代に開業率を逆転して以降、依然として廃業率が開業率を上回っており、増加傾向にあります。2004年の廃業率は6.4%であり、開業率4.2%を大きく上回っています。

 さらに、中小企業庁「中小企業実態基本調査速報」(2006年3月公表)によれば、推計ですが中小企業の企業数は、法人企業が142万社、個人企業が242万社、合計では384万社としており、2001年に比べ11.7%減少。特に小売業(18.3%減)、製造業(15.0%減)などが大幅に減らしています。中小企業と商工自営業の減少傾向に歯止めがかかっていない現状が浮き彫りになっています。

 ここで気になるのが、調査主体である省庁によって法人企業数にかなりの違いが見られることです。たとえば同じ2004年で見ても、先の総務省「事業所・企業統計調査」の会社企業数は153万社ですが、国税庁「統計調査年報」では257万社、法務省「民事・訟務・人権統計年報」(本社登記累計数)では311万社という次第。全数調査をしている総務省と国税庁でも約100万企業数の大きな誤差があります。

 なぜこうも違いがあるのか。1つは、データの収集方法からきているようです。

 「事業所・企業統計調査」は、調査員が現場でアンケートを取るサーベイ調査のため、調査員の裁量、判断が反映します。調査員は過去の調査名簿に基づいて調査しますが、発見できない事業所があったり、調査拒否なども増えており、最近はその数が約19万件もあります。都市部でのSOHO(スモールオフィス・ホームオフィス)などの補足も困難で、新規開業の把握もれも多数あるようです。

 この統計調査は、統計法に基づく指定統計として調査に回答する義務(罰則付)が課されているにもかかわらず、調査精度に問題が生じています。

 一方、国税庁「統計調査年報」は、法人税・所得税の納税企業数が届け出集計されたもの。強制力が強い納税のデータです。

 欧米諸国では、各種行政記録に基づく統計データを一元的に管理する傾向が強く、サーベイ調査の依存度は低いとのこと。日本でもタテ割り行政を脱し、省庁横断的な連携が統計の分野でも求められています。中小企業憲章制定の基礎的条件整備としても、中小企業の各種統計調査の整備・充実と情報公開の推進が強く望まれます(本欄の記述は、中小企業総合研究機構の上田弘主席研究員の調査研究を参考にしました)。

(U)

「中小企業家しんぶん」 2006年 4月 15日号より