住宅関連産業、地方経済の衰退加速と消費税~住宅産業では消費税率アップで税収減という矛盾

 安倍内閣が成立し、内政や外交がどう変化するのか注目されますが、経済の注目点の1つである消費税率の引き上げ問題では「税制改革の本格的、具体的な議論を行うのは来年秋以降になる」との考えを表明(「日本経済新聞」10月3日付)。参議院選挙後に議論を先送りし、選挙で是非を問うか否かは不透明です。

 先に住宅生産団体連合会(以下、住団連)の方が中同協を来訪したことを紹介しました(本紙、9月5日号)。住団連(会長=和田勇積水ハウス(株)社長)は、住宅メーカー団体で、消費税増税に反対し、現行税率の据え置きを要望しています。

 住団連が実施したアンケートによれば、現行の5%の消費税に対しても「非常に負担を感じる」「負担を感じる」との回答を合わせると85%を超え、消費税率の引き上げに対しては、「住宅に消費税がかかるのはおかしい」(51%)、「現行の5%のままの方がよい」(35%)との回答が多数を占めました。仮に消費税が8%に引き上げられた場合、マイホーム計画への影響をどのように受けるか、という問いに対し、「資金計画の見直し」(60%)、「中止を含めて建築計画を見直す」(25%)、「入居時の家具や家電製品の購入を控える」(23%)との回答が上位となり、住宅産業に懸念される結果となっています。

 住団連の試算(消費税率8%の場合)によれば、2005年度に約35万戸あった持ち家着工に対して、約7万戸が減少し、住宅投資額にして約2兆円が減少(建築予算平均2800万円で計算)するとしています。しかも、他産業への生産誘発額を合わせると約4兆円の減少となり、それはGDPを0・75%押し下げるマイナス効果を持ち、約55万人の雇用が喪失すると試算しています。

 確かに、住宅取得費を仮に2800万円として、消費税負担は現状の140万円から8%で224万円、10%で倍の280万円に増え、税負担のために住宅ローンの追加借入が必要になる水準です。

 さらに、税率アップで内需の柱の住宅産業が衰退し、地方経済へのダメージが懸念されます。実は、1997年(平成9年)に3%から5%に引き上げて以降、住宅産業の消費税収が減っているという驚くべき事実があります。「住宅投資に対する消費税収推定額は、平成9年時点で約1・1兆円であったが、17年では0・9兆円まで落ち込んでいる。この間、逆に消費税収合計は10・1兆円強から12・6兆円に増えている。つまり、税率アップにもかかわらず、住宅投資の大幅な減少から、住宅に関して言えば、税収増には結びついていない」(「消費税率アップと住宅への課税について」ニッセイ基礎研究所レポート2006年10月号)という、税収増にならない「増税」もありうる事実が浮かび上がります。財務省等から流される情報だけでなく、冷静に情報を集める必要があります。

(U)

「中小企業家しんぶん」 2006年 10月 15日号より