本紙3月5日号の「円卓」でも紹介されていますが、中小企業振興基本条例制定の動きが県レベルで活発です。千葉県や京都府の条例は、本号が読者の手元に届くころには成立の見込みです。特に、千葉県の振興条例は先行する条例を研究・参照した優れた内容であり、モデル条例として今後大いに活用できるものです。その条文から、次の6つの優れた特徴を抽出できます。
第1は、中小企業の振興と地域づくりを統一してとらえ、相乗効果を狙っていること。「地域づくり」を基本理念のキーワードとして、「中小企業の振興は、中小企業の経営の向上及び改善と地域づくりによる地域の活性化とが互いに密接な関係を有することにかんがみ、これらが相乗的に効果を発揮することを旨として図られなければならない」(第3条)と述べています。
第2は、「産学官民の連携」という考え方を導入し、「県を挙げて中小企業を育てていく体制を築いていくことが何より重要である」(前文)という立場を強調していることです。
第3には、大企業者や大学等の役割を規定していること。たとえば、「大企業者は、基本理念にのっとり、地域づくりに取り組むことにより、地域の活性化に資するように努めるとともに、県が行う中小企業の振興に関する施策の実施について協力するよう努める」(第7条)としています。
第4には、学校教育での中小企業に対する正確な認識を醸成し、職場体験・インターンシップを促す条項があること。「県は、学校教育における勤労観及び職業観の醸成が中小企業の人材の確保及び育成に資することにかんがみ、児童及び生徒に対する職業に関する体験の機会の提供その他の必要な施策を講ずる」(第15条)としています。中小企業憲章の議論の重要なポイントにかかわる内容です。
第5には、条例の実効性を担保するための県民の参加や手続き、チェックの仕組みを定めていること。基本方針を定める上で、知事は「広く県民の意見を求め」、意見・情報を考慮して方針を定め、公表するという手続きを明示するとともに、「知事は、毎年1回、県の中小企業の振興に関する主たる施策の実施状況を取りまとめ、これを公表する」「中小企業者その他の関係者の意見を聴く」(第17条)としています。
優れた特徴の第6には、「県は、施策の立案及び実施に当たっては、当該施策が中小企業の経営に及ぼす影響について配慮するように努める」(第18条)という規定があることです。これは、EUの「ヨーロッパ小企業憲章」の「Think small first」(小企業を第一に考える)という考え方や、米国での中小企業の規制負担軽減政策などに共通する「世界標準」の考え方です。つまり、国や自治体のすべての政策や法律・規制が中小企業への影響を事前に考慮して立案され、実施されるという発想に沿った規定であると評価できます。
条例作成にかかわった千葉同友会は今後、条例を活用し、企業づくりと地域づくりを産学官民の連携で推進しようと意気軒昂に取り組んでいます。
(U)
「中小企業家しんぶん」 2007年 3月 15日号より