育児休暇制度を取り入れて
広島同友会福山支部求人社員教育委員会では、「女性社員も男性社員も働きがいのある企業づくり」セミナーを昨年9月から4回にわたって開催。その中から、育児休暇制度を取り入れている2社の事例を『同友ひろしま』2月号より紹介します。
安心して働き続けられる会社に (株)ププレひまわり(ドラッグストア)専務 梶原啓子氏
従業員数769名(内パート519名)
わが社で育児休暇を取り、復帰した社員は7名おります。
わが社が産休や育休を推奨しているのは、手間も暇もお金もかけて育てた社員を失いたくない、それ以上に時間をかけて価値観を共有できた社員を失いたくないからです。さらに、社員自身が、この会社を舞台に一生やって行きたいと考えたとき、充実感と安心感が必要ではないかと考えているからです。
出産前、育休後は、本人の希望を聞き、勤務形態や店舗(勤務地)を配慮しています。店舗では、9時から18時のA勤と12時から21時のB勤があり、現状は、店長裁量でA勤を増やしているようです。このあたりは、就業規則できちんと柔軟に対応できるよう整えていこうとしているところです。
なぜ、出産後も「ひまわり」で働いているのかというアンケートに対して、「経営理念に共感している」「会社が好き、仕事が好き」といった回答でした。なかには、「今まで研修や経験を積んで、やっとお客様にお役立ちできるようになったのに、今ここでこの仕事を辞めたくない」「やりがいがあり、潜在能力を引き出してもらえる職場なので続けたい」「働くことについて真剣な職場だから続けたい」「経済的な余裕が欲しい」という回答もありました。
育休をとったり、子育て中の人は、「申し訳ない」という気持ちで働いている人が多く、当然の権利だと主張する人は少ないようです。今後の課題は、パートさんを含め、その後ろめたさを会社がどうフォローしてあげるか、働きがいを感じ、働き続けたいと思っている社員が、無理なく力を発揮していける仕組みづくりをしていきたいと思います。
仕事が大好きな社員が、妊娠や子育てを理由に退社しなければならないことは、お互いにとって不幸なことです。子育てが大変な時期は、仕事のペースが変えられ、安心して働き続けることができる会社をつくっていかなければならないとつくづく感じました。そういう会社をつくっていくことが、経営者の大きな役割だと思います。
【社員の立場から】仕事ができる喜び
(株)ププレひまわり 小川直美さん
私が入社したのは1998年、第1子を2001年、第2子を05年に出産、それぞれ育児休暇をとりました。ププレひまわりでは、第1号の育児休暇の取得者でした。
第1子の時は、ハイハイするころになれば母に預かってもらえるだろうと思い、育児休暇を7カ月間だけとりました。それならお盆前の繁忙期に仕事に復帰できるからです。しかし、いざ復帰してみると、勤務が終わるころにはオッパイが張って非常に痛くつらい日が続きました。ですから第2子のときは、完全に断乳できる10カ月間とりました。
それでも仕事を続けたのは、ドラッグストアの仕事が大好きで入社したこと、薬についてやっとお客様にお話しできるようになり、仕事がますます楽しくなってきた時だったからです。
仕事に復帰してからは家事、育児、仕事と本当に大変でした。店長が気を使って、朝からの勤務を多くしてくれてはいましたが、それでも夜の勤務が続いた時は、子どもがストレスからチック症にかかってしまいました。夜の勤務があまりできず、ましてや子どもが病気で休まざるを得なくなると、職場のスタッフにも迷惑をかけ、板ばさみ状態で大変つらかったです。
会社としては余分な人員は置きたくないと思いますが、緊急時には対応してもらえる余裕のある人員配置をしてもらえたらと思います。また、子育て期間中は、勤務時間が短縮できればと思います。
育児休暇中に思ったことは、本当に仕事がしたいということです。復帰後は、仕事ができる喜びを感じました。子どもを産んでも、仕事を続けられる社会がもっと広がればいいと思います。
男女問わず子育て、介護を支援へ (株)オーザック(製造業)総務部長 岡崎瑞穂氏
従業員数28名(内パート1名)
私自身が、子育てと仕事の両立で苦労したことや、私以上に苦労した女性社員の姿、出産を機に退社した社員の姿を見て来て、女性社員が子育てしやすい職場にしなければとずっと心に思ってきました。
10年前に、産後1年間の育児休暇制度を設け、程なく初めて育休をとる社員(佐藤弥生さん)が出ました。休暇中は、電話で話したり、社内報を活用してコミュニケーションを図りました。休暇中の社員もわが社の社員であることを、本人も現役の社員も確認しあうためです。
復帰後、正社員で働いていましたが、子どもが病気がちで、再々休みを取らなければならず、本人の希望によりパートに変更することになりました。その後、2人目を出産。その後も職場に復帰し、がんばってくれています。そして先日、3人目を妊娠したとの報告がありました。
振り返って思うことは、経営指針に取り組んでいなければ育児休暇制度を導入していなかったということです。当時、会社が厳しい状況で、「会社に負担になるのでは」と迷いましたが、経営指針に立ち返って社員のためにはやらなければならないと決断できました。
今では、社員が働き続けることができるということは社員のためでもあるし、会社にとっても大きなメリットだと確信しています。厳しい時もありましたが、わが社の理念にある、社員をいかに幸せにしてあげるか、ということにいつも立ち返ることができればいいのだと思います。
子どものために休むことをとがめてはいけません。社員は「すまない」と思いながら休んでいます。周りの社員にも「あの人はよく休む」と言わせないように、子育てを支援する思いを話し、理解してもらって、協力してもらうことが大切だと思います。
また、パートに変わらなくても正社員として働き続けられるように、勤務形態の見直し、フレックスタイム、育児休暇の延長、育児室や託児所など、考えていかなければいけないと思っています。男女を問わず、介護や子育ての支援ができる前向きの会社にし、オーザックに入ってよかったと言ってもらえる社員をたくさん増やしたいと思っています。
【社員の立場から】3人目も育児休暇で
(株)オーザック 佐藤弥生さん
入社2年後に結婚し、翌年妊娠。そのころ育児休暇制度ができ、育児休暇を1年間とりました。休暇中は、仕事のやり方が変わっていたらどうしようなど、とても不安でしたが、復帰の日、みなさんが今までどおりに接してくれ、不安はすぐに消えました。
子どもは保育所に預け、正社員で復帰しましたが、病気がちで急に休むことも多く、この先も会社に迷惑をかけるだろうからと思い、パートに切り替えてもらいました。それでも休むたびに、総務部長や他の社員さんに申し訳ないと、胸が張り裂けそうになることが未だにあります。
復帰後1年半で2人目を妊娠。うれしさよりも、復帰したばかりなのに申し訳ない、辞めさせられたらどうしようという思いがかけめぐっていました。思い切って総務部長に報告すると、笑顔で「おめでとう、よかったね」と言ってくれ、ホッとしました。実はいま、3人目を妊娠しています。どきどきしながら総務部長に報告したら、いつものように「おめでとう」と笑顔で言ってくれました。申し訳ない思いでいっぱいですが、4月から産休をいただきます。
育児休暇を使ってみて感じたのは、状況によって育児休暇をもう半年延長してもらえたら、また、男性社員にも育児休暇がとれるようになればと思いました。子どもが病気でも仕事をしなければならないようなときは、事務所の中からガラス越しに子どもの様子がのぞけるような場所(キッズルーム)が社内にあればいいなと思います。
入社して丸10年ですが、最初の出産でやめなくてよかったと思います。これからも会社が私を必要としている限り、会社に貢献していきたいと思っています。
「中小企業家しんぶん」 2007年 4月 15日号より