自社を深く知るための中小企業憲章へ~業界の競争条件と地域での存立条件から活路を展望する

 中小企業家同友会は中小企業憲章制定運動に取り組んでいますが、自社を取り巻く経営環境を分析し、中小企業憲章(以下、憲章と略)とかかわらせて課題を考える「憲章レポート」の作成運動に、大阪同友会などで弾みがついています。

 この取り組みの中で自社の経営戦略を憲章に照らして考え、企業の活路を切りひらく事例が生まれ始めています。今年の中同協総会分科会での(株)タケウチの竹内昭八氏(静岡)の報告が典型です(詳しくは『中同協』第79号参照)。

 同社は、日用品雑貨を扱う地方問屋ですが、大型店の出店攻勢などによる競争激化の中で同社が取引する地域小売店は激減。竹内氏は将来の方向を見失っていたと言います。そんな中、ヨーロッパ小企業憲章に出会い、大変な衝撃を受けます。さらに同友会で憲章を学び、自社の地域における役割と進むべき方向が見えてきたと言います。

 竹内氏は、改めて取引先を見つめ直すと、それぞれが地域の生活者であることに気づかされ、地域の活性化にどれだけ貢献できるのか、生活者にどれだけ喜んでもらえる商品を提供できるのかを問い、地域に有用な卸問屋として認知されることが発展方向であると確信を持ちました。

 このような認識に基づいて同社は、地域小売店との関係を「競争的共存」と呼んで社員教育に着手。「単にものを売っているのではない。正当な利益を確保し、利益を小売店とシェアし合うことで、地域にお金を回していく仕事なのだ」と価格競争に埋没しない「競争的共存」理念を社員と共に模索し、共有する中で社員の使命感が強まりました。

 また、全国の地域問屋と(株)サプリコを2003年に創立。メーカーに製造委託して共同でプライベートブランド(PB)商品の開発をするなど、地域問屋のネットワークを利用した新しい中小問屋の活動形態を構築しました。このような取り組みの中から、次のことが示唆されます。

 第1に、自社の営業基盤である疲弊する地域経済の活性化と自社の活路を同業者の全国的ネットワークの構築に求めたこと。業界の競争条件を超え、全国ネットでPB商品を企画販売する協力関係に転化させ、小売店との共存を強めながら地域での存立条件を確かなものにしています。

 地域の問題を、全国的視野や、業界の視点で考えることができる中小企業が活躍できる余地は大きいと考えられます。

 第2に、メーカーから小売店まで、川上から川下までをつなぐことにより、全体でコストを削減し、利益を確保することを可能としていることです。

 第3に、同社は憲章をヒントに「競争的共存」「ミドルプライス」「秩序ある市場」などのキーワードを発案し、理念と戦略を社員や取引先などと共有しようと努力していることです。

 さあ、自社を深く深く知るための中小企業憲章の旅へ旅立ちませんか。

(U)

「中小企業家しんぶん」 2007年 12月 15日号より