原油高騰でエネルギー転換に拍車~(株)千代田エネルギー会長・田山謙堂氏(中同協顧問)に聞く

 原油が高騰しています。その影響を石油小売業界に長年従事している千代田エネルギー会長の田山謙堂氏(中同協顧問)に12月3日、話を聞きました。

投機的色彩が濃い

 年初、1バーレル57.7ドルだった原油価格が、一時期100ドル近くまで上がり、先週あたりから90ドル台で高止まりしています。これは需給バランスだけでは説明できない異常な高騰です。

 確かに中国やインドで需要の伸びはあるものの、これほどの逼迫(ひっぱく)感はないのではないか。アメリカのサブプライムローン問題などを契機に、投機マネーが金融市場から原油や金などの現物に向かっているから、というのが大方の見方です。

エネルギー転換に拍車

 ガソリンスタンドでも、明らかに消費節約傾向がみられます。一番安い価格で販売する店を紹介するインターネットのサイトへのアクセス数も3~4倍増えているといいます。灯油も急騰しており、これから冬を迎え、北海道などではかなり家計を圧迫するのではないでしょうか。

 CO2削減という地球温暖化問題から、そもそも石油からのエネルギー転換が求められていますが、今回の価格高騰はそれに拍車をかけています。重油を大量に使う製紙やガラス業界では、液化天然ガスへの転換が進んでいます。家庭でも、灯油と価格差がなくなってくれば、電化が急速に進むことが予想されます。

不当廉売に「排除命令」

 石油小売業界では、「差別化できるのは価格だけ」と、価格競争がますます激しくなっています。そうした中で、先月、栃木県小山市で、独占禁止法に基づく「不当廉売排除措置命令」が、公正取引委員会から大手2社に出されました。

 これは、大手2社が、仕入れ価格より安い価格での安売り競争を1カ月以上も繰り広げた結果、周囲の中小小売店が次々閉鎖に追い込まれ、その2社だけで小山市のガソリン販売シェアの41%を占めるに至ったというものです。

 背景には、石油元売り会社が大型量販店に特別に安い価格で販売していることもあります。これも「差別対価」として独禁法で禁止されていますが、なかなか立証が難しい問題です。安売りは消費者の利益のようにみえますが、「不当廉売」で市場を独占したときは、逆に価格を上げてくることは明らかで、結局消費者の利益にはなりません。

 全国石油商業組合連合会では、このような不公正取引を排除するため、単なる「警告」ではなく、「金銭的不利益処分である課徴金導入が必要」と、独禁法改正に向けた働きかけを始めました。全国中小企業団体中央会も、石油や家電、酒類の小売り団体などに呼びかけ、不公正取引排除に向けた検討を始めました。

 大型店進出で商店街が寂れ、地域全体が寂れていく例は全国にいくらでもあります。地域の経済や雇用を守っている中小企業の発展が重要であることを改めて強調したいと思います。

第二創業へ最後の機会

 今後、エネルギー転換が進むことは確実です。2010年までにバイオエネルギーの割合を20%まで引き上げるという国家プロジェクトも始まっており、当社もバイオエネルギーを扱うガソリンスタンドを1カ所運営しています。しかし、水素や電気自動車の普及に向けた開発が急ピッチで進んでおり、バイオエネルギーは過渡的なものです。

 となると、次の仕事をいかに創造していくかが喫緊の課題です。今が最後の機会かもしれません。廃業を考える同業者が増えていますが、従業員の生活や地域の雇用を考えると、ぜひ第二創業にチャレンジしてほしいと思います。

「中小企業家しんぶん」 2007年 12月 15日号から