参加から参画へ 清水勧業(株) 社長 土屋 洋二氏(北海道)

参加から参画へ
社員の共感が得られる経営指針と社風づくり
清水勧業(株) 社長 土屋 洋二氏(北海道)

 兵庫で開かれた中同協第36回中小企業問題全国研究集会の第11分科会「『参加』から『参画』へ」より、報告概要を紹介します。詳細は、4月に発行予定の『中同協』誌76号をご覧下さい。

激変した経営環境

 当社のお客様である電力会社は、競合相手のいない独占企業で、かつ地域のリーディングカンパニーとして、景気が悪くなると前倒しで設備投資をするなど、地域経済のけん引役を担っていました。そのため、そこに材料を納める会社は安定した需要が見込め、大きな経営努力を必要としてきませんでした。

 ところが1995年4月、31年ぶりに電気事業法の大幅な改正が行われたのを皮切りに電力の自由化が進み、電力会社は独占から競争の時代になりました。その影響は、電力会社に材料を納める当社にも及び、し烈な業者間競争や電気料金の値下げのためのコスト削減など、取り巻く環境は激変しました。電力会社の需要がどんどん減っていく中で、新しい分野に事業展開をしていかなければならなくなりました。

同友会と社内で並行して進めた経営指針研究会

 いま1度経営指針を見直そうと思い、ちょうど札幌支部で始まった第1期経営指針研究会に参加しました。2004年のことです。

 経営指針はつくるよりも社内に広めることの方が難しいと聞かされていましたので、私が同友会の経営指針研究会に参加すると同時に、社内に経営指針研究会をつくり、部長以上役員6名とともに経営指針を作成していくことにしました。同友会と同じように社員にも経営指針作成の手引きのシートを書いてもらい、私が同友会の経営指針研究会で学び得たものも持ち寄りながら、議論し合うのです。同友会でほかの経営者から指摘され磨かれたものに、社員の思いも加わり、経営指針づくりが進んでいきました。

 社員にどんなときにうれしいかと聞くと、ほとんどがお客様に誉められたときと答えます。人を喜ばせることが、ひいては自分の喜びになるという社員が持っていた精神を一番目の経営理念に表現しました。

 また、2番目にはどんな小さな仕事にも意味があり、そこに感動がある。その仕事に携わる誇りをもつことを込めました。

 3番目の「信頼される会社になる」ということは以前から言っていることですが、もっともっと信頼される会社を永久に追求していきたいという気持ちを盛り込みました。

 経営理念を作った後は、具体的な経営戦略を市場と商品の領域に分類して検討していきました。その結果、電力会社を中心とした既存市場では、資材等の既存商品売上を現在の13億円から14億円にし、新商品で現在の6000万円から2億円の売上をめざします。一方、新しい市場では、他業界である管材・建材・設備など既存商品売上を、現在の4000万円から2億円に伸ばし、新商品ではこの市場で2億円を達成し、将来の稼ぎ頭にしていこうと考えました。全社で20億円の売上を目指すことになり、領域ごとに売上達成のための戦略を練り、経営計画を作成しました。

 さらに、こうした戦略に経営理念をどのように結びつけていくかを、再度社内で議論し、浸透させていきます。

経営指針の浸透には社風づくりが不可欠

 経営指針を社内に浸透させるためには、当たり前ですが経営者の理念や価値観、熱い心が大切になります。経営者のスタンスはどこにあるのか、ただ「儲けたい」という思いを表面的な言葉で隠していないか、継続するためには地元の信頼をしっかり確保しなければならないということを本気に思っているのか、そうした経営者の本心が社内にしっかり伝わっているかどうかの問いかけが大切になります。

 また、社員にはある程度計画ができてから「参加」してもらうのではなく、計画を立ち上げる段階から「参画」してもらったほうが、より深い達成感につながると思います。そして社風など会社の雰囲気は、経営指針が社内に伝わるためには重要であると思います。これがわが社の経営指針だと押し付けるのではなく、黙っていても先輩が後輩に教え、それにより会社の理念や指針が伝わっていく、経営理念が社風になったときに、それは1人でに伝統となっていくのでしょう。

社員参加型経営の導入

 当社は、早い段階から参加型経営というものに取り組んできました。取り組むきっかけとなったのは、社員の「私も会社を良くする一員だと思います」という発言からです。参加型経営とは、そうした社員の気持ちを経営に生かすことです。参加型経営を勉強し、社内に多くの委員会をつくり、みんなに経営に参加してもらいました。

 最初にできたのは、福利厚生委員会でした。テーマは、就業時間を短くすることと土曜日を休みにしようということでした。最初は一方的な要求が先行した委員会も、社員が自主的に議論を行っていくうちに、ただ土曜日を休みにするという要求を貫き通すのではなく、土曜を休みにするためには何が必要なのかを研究し始めました。

 同友会の例会などの勉強会に参加し、生産性を上げなければ土曜日を休みにできないことを理解して、生産性を上げながら土曜休暇を増やしていこうということになったのです。最終的には、会社に受け入れられやすい導入計画を提案してきました。

 このことが、会社のことを考えつつ、どうすれば自分たちの要望を実現できるかを考える土壌づくりのきっかけになりました。

委員会から生まれた市場開拓ツール

 新商品開発委員会が巻き取り式ゴミステーションを開発しました。そのきっかけは、社員が通勤途中にゴミステーションのゴミをあさっているカラスを見たことです。「外国人も多く訪れる国際都市札幌で、道路に生ゴミが散乱しているのでは困る。何とかならないだろうか」というテーマが委員会に出され、いろいろなアイデアを出し合い、製品化にこぎつけました。

 商品名は『カラスまいったー』です。商品名が面白いと、新聞やテレビに何度も取り上げられ、瞬く間に有名になりました。自分たちがつくり、名前をつけた商品が広く世の中に知られ、注目を集めたことは、社員に大きな自信を与えました。

 その自信が冷めやらぬ間に、第2弾としてらくらくシャッター開閉器『シャ楽』が開発されました。この製品の特徴はワンハンドでらくにシャッターの上げ下げができるというものです。

 こうした超ローテク製品は、社内の雰囲気を変えました。従来、わが社は卸売業であり、商品を仕入れて既存のお客様に売りに行くだけでいいんだというムードでした。しかし、新商品を開発し自社製品を持つことで、新たなお客様にも、従来のお客様にも臆することなく飛び込んでいける格好のツールができました。これは新市場を切り拓(ひら)くための大変有効な戦略ツールになります。

 社外の評価が自信となり、新しい可能性となって社内に広がっていきました。

なぜ、会社は変われないのでしょうか

 いつまでも同じことをやっていては生き残りが難しい状態です。私も会社が変わらなければと常に思っていましたが、私自身が変わるということに関しては足りない点が多々あったように思います。

 北海道経済はまだまだ厳しい局面にありますが、危機の中にこそ会社が変われるきっかけがあると前向きにとらえ、社員と共に歩んでいきたいと思います。

経営理念

1.私たちは人を愛します
 私たちは人を喜ばすことを私たち自身の喜びとし、私たちと関わりのあるすべての人の幸せを願い、お互いの成長や発展を分かち合えることを求め続けます

2.私たちは仕事に誇りを持ちます
 私たちは常に新しい商品や技術、サービスを提供し、お客様のご要望に応えます。自分の仕事にやりがいと意義を見つけ、自らを恃(たの)む気持ちを持ちます。

3.私たちは信頼される会社になります
 私たちは問題解決には真正面から全力で取り組み、契約や約束を大事にします。私たちは円満な人格と社会常識を身につけ、心をひとつにしてお客様や取引先から頼られる会社を目指します。法律や社会規範を遵守し、自然環境の保全のために地域社会と連携していきます。

【会社概要】
創業 1947年
資本金 6000万円
年商 15億円
社員数 24名
業種 電設資材卸売業
所在地 札幌市中央区南11西20-4-3
TEL 011-561-4201
URL http://www.43z.co.jp/

「中小企業家しんぶん」 2006年 3月 15日号より