社員とともに (株)タマツ 社長 玉津弘之氏(山形)

社員とともに
地域に愛される企業づくりをめざす
(株)タマツ 社長 玉津弘之氏(山形)

社員の不満つのり、 社長の悩み増すばかり

 私の父が教員退職後、介護用品販売の店「ホームケア荘内」を設立したのが当社のスタートでした。父が大病を患ったため、1993年32歳の時、帰郷し夫婦で引き継ぐことになります。資格を取得し、営業基盤を築き98年、(有)ホームケア荘内として法人化、社員5~6人の家族的雰囲気の企業でした。

 2000年、介護保険導入で市場が一挙に拡大、業務内容も複雑で専門的になり、連日残業の日々。社員も増やしました。当時の私は、「社長が考え、社員は行動するものだ」と思っていました。ところが、社員が増えると指示が伝わらず、新人の教育も思うように進みません。給料の決め方も基準がなく、社員の不満はつのり、私の悩みは深まるばかり。中堅社員が次々と辞めていきました。

社長が変われば社員が変わる

 2003年には新社屋移転、(株)タマツへと組織変更。しかし、社内は険悪で暗い雰囲気でした。

 その年の7月、同業の方の紹介で、同友会へ入会しました。ある日の例会のこと、グループ討論で、「社員の夢をどう共有しているか」と問われ、何も答えられない自分にがく然としました。ショックでした。「社員の夢」など、考えたこともなかったのです。「社員の夢って何だろう。私は、自分の夢(考え)を社員に押し付けてきたのだろうか?」

 そのころから、同友会の例会に出るのが楽しくなりました。長年悩んできたこと、自分がどう行動していいか分からないことなど、何でも質問しました。「社員のあいさつができていない、どうしたらよいだろうか」と聞いてみたら、「社長から始めなさい」。そうだ、私のあいさつができていない。次の日から早速実行です。そうすると、少しずつ反応するようになり、やがては大きな声で返事が返ってくるのです。

 「会社が暗い、元気がない」。これも、社長が率先して、明るく元気に振る舞うことです。社長が変われば社員が変わる、このことを体得しました。

全社員にアンケート面接も実施

 山形同友会の第10期経営指針作成セミナーを受講し、まず考えたことは、「良い会社にしたい」。では社員にとって良い会社とは何か、社員はどんなことを考えているのかを知ることでした。全社員にアンケートをとりました。「何のために働いているのか」「どんな会社に勤めたいか」「大切にしている価値観、人生観」「給料について」現状の不満も聞きました。

 腹が立つくらい、いろいろ出ました。「給料が安い」「携帯電話の使用料を考えてくれ」「評価の仕方が不明瞭(りょう)」「社長がいろいろ口を出しすぎる」「思いつきで物事をいうな」などなど。私も部長、課長もショックでしたが、まず携帯電話使用料3000円を含めて給料15%アップを実行、年間800万円の支出増です。さらに全員と面接、社内でグループ討論も行いました。同友会の幹部社員研修会に課長に出席してもらい、私との理念の共有化もはかりました。その結果、2005年度の実績は、売上目標4億8000万円を7%上回る5億1100万円(前年比18・8%増)を達成、過去最高を記録したのです。

理念で地域に貢献、企業も同友会も

 私は同友会入会後、庄内支部(2005年11月発足)設立に携わり、その間経営指針セミナーに参加、社内改革を進めながら、昨年12月、第1回経営指針発表会を迎えたのです。1年間かけて作成した経営理念を、私の思いを込めて説明し、各部門責任者の計画課題の発表と続きました。その後の忘年会が予期しない盛り上がりとなったのです。

 初代庄内支部長も拝命したのですが、理念を軸に地域に貢献する、このことは企業も同友会も同じです。人間は1人では生きられません。相手のために生きる自分となることで成長、発展があります。社長と社員、会社と支部、支部と地域、庄内支部と全県、全県と全国、その対象を大きなものにし、学びを深めていこうと決意しています。

(6月15~6日東日本地区代表者会議での報告要旨より)

経営理念

私たちは、確かな技術と優しい心で福祉用具を取扱いお客様と生きる喜びを分かち合います。
私たちは、地域に愛され「為に生きる精神」で「安心・安全・快適」な生活を提供いたします。
私たちは、真(まこと)を求め共に信頼し高め合い、活力ある楽しい職場作りを目指します。

【会社概要】
創業
 1983年
資本金 1000万円
年商 5億1000万円
社員数 20名
業種 介護用品、福祉用具の販売及びレンタル
所在地 山形県鶴岡市美咲町32-7-7
TEL 0235-24-3333
URL http://www.tamatsu.jp/

「中小企業家しんぶん」 2006年 8月 15日号より