厳しい現実の中で足元から希望を見出す

~元旦の新聞各紙の社説を読んで

 今年の元旦社説のキーワードは、「地球環境問題」と「ワーキングプア」(働く貧困層)に集約されます。

 本年1月1日から、「京都議定書による温室効果ガス削減の第1約束期間(5年間)がスタート」(毎日新聞)しました。「そして京都の先に半永続的に続く温暖化との総力戦に向けて、北海道・洞爺湖サミットの議長国として、日本は一連の国際舞台でその覚悟と政策能力を試され」、「国益と地球益を満たす制度設計」(日本経済新聞)が迫られた課題となっています。

 しかし、これは容易ならざる課題。「先頭に立って汗をかくのは、サミットのホスト国で、国際協調のもとでしか生きられない日本でなければならない。従来のように模様眺めをしている場合ではない。そして政府や企業の背中を押すのは世論だ。各国の世論が連帯し、国家の利害を超えた、地球民主主義とも言うべき考え方が求められ」(北海道新聞)ますが、事はそれほど簡単ではありません。「即効性が期待できる対策は見当たらない」というのも真理。では、どうするか。

 「まずは、現状を正しく受けとめ、遠い未来を見据える構想力を取り戻すこと」、「地球規模で深まるこの課題の解決には、地域で地道な実践を重ねるしかない」(神戸新聞)と課題を足元に引き寄せることで、ようやく実践の足を踏み出すことができそうです。

 もう1つのキーワードの「ワーキングプア」でも、強い危機意識を持ちながらも希望を見出そうとする社説が印象的でした。たとえば、「ワーキングプア層とも呼べる年収200万円以下が1023万人(06年)」と1000万人を突破した現状を指摘し、ワーキングプアの互助会組織が最近誕生したことに着目して、「『反貧困』に希望が見える」(中日新聞・東京新聞)というインパクトのあるタイトルを掲げた社説が目を引きました。

 また、「経済的な貧困とともに進行する人心の貧困化」に警鐘を鳴らし、「コミュニティーの再構築に乗り出すときである。効率化一辺倒の流れに歯止めをかけ、人が支え合い、社会を取り戻すのだ」(西日本新聞)との主張も、卓見です。

 最後に、童話「青い鳥」のような社説。「混沌とし、迷走を続ける時代だからこそ、それぞれの幸せと誇りはどこにあるのか追い求め、暮らしていくことが大切だ。なかなか答えは見つからず、呻吟するだろうが、それを解く鍵は、コツコツと自分の仕事を掘り下げたり、地域の文化や伝統などを見直したりする中、足元の日常に、埋まっているかもしれない。個々の幸せや誇りが、思いやりや共生の気持ちにつながり、きっと『負の社会』を変える力になることを信じたい」(河北新報)。

 環境問題も貧困問題もカギは足元にあり。草の根からの努力が「負の社会」を変えることができるかもしれない。勇気と希望を抱くことができた年の初めでした。

(U)

「中小企業家しんぶん」 2008年 1月 15日号より