2市9町3村の視点で地域経済振興に一役 相双地区(福島) 相双地区会長 菊地 逸夫氏((株)キクチ社長)

-福島同友会相双地区がカバーしている地域の特徴は。

菊地 鎌倉時代から明治になるまで相馬家が相馬藩を取り仕切り、領地は拡大も縮小もしませんでした。今、相双地区は2市9町3村にまたがっていますが、全体の人口は21万で、長い間大きな増減がないのは昔と似ているようです。

-どんな産業がありますか。

菊地 相馬港に入る魚の種類の多さは、1年を通して全国3本の指に入るほどです。大半は東京、名古屋へ出荷され、築地相場でせりが行われるので、地元の人の口には入りにくいです。活魚・鮮魚のまま出荷するので、水産加工業者はあまりいません。地域の南部は東京電力の原発地帯となっています。あさり、韓国海苔、もやし、活魚などは全国トップないしは有数の企業があります。以前盛んだったアパレルは縮小傾向、農業は米を主体に、イチゴ、梨などの生産が行われています。

-菊地さん自身の同友会とのかかわりは。

菊地 入会は1992年です。同友会の仲間からは、粘り強さを学びました。当社は食品スーパーを7店舗経営していますが、出店時には多くの地主との交渉で苦労します。以前の私だとあっさりあきらめていましたが、今はあきらめずじっくり交渉できるようになりました。

 経営指針に書いたことは、計画的に必ずやりきるということも同友会で学んだことです。入会時20億円だった売上が、100億円という目標を立てたおかげで、現在80億円になりました。

-2年前宮城県で開かれた青年経営者全国交流会では、分科会報告者をつとめていただきましたね。

菊地 報告は必死でした。一番勉強になったのは、私の報告を聞かれた参加者の皆さんの受け取り方がさまざまであったことです。これは同友会入会後ずっと感じていることです。同じ人の話を聞いた時に、自分とちがう角度で聞き取る人がいると、その人の学び方から学ぶことができます。学ぶ上で企業規模は関係ないということも同友会の中で理解したことです。

 入会前は同じ業界内の大きい企業の話ばかり聞いていました。しかし同友会では「この人の下で働いてみたい」と思える人に出会うことができ、それ以後は、自分が悩んだ時は「あの人だったらどう考えるだろうか」という判断のしかたをしています。

 また、以前は自分の器はこれだけと考える傾向がありましたが、会員の方々の経営姿勢を見る中で、お客様のニーズに自分の器を合わせていかなければならないことも学びました。

-地区の誇り、会長としての抱負を。

菊地 福島同友会では同友会大学を毎年開いています。郡山での開催ですと、当地区から車で片道2時間はかかるんですね。それで昨年思い切って当地区で開催をお願いしたところ、60数名の会員で13講座に35社からの受講者があり大変喜ばれました。

 何かやろうとする時の協力体制は強力です。原町市の経済振興懇談会には毎年同友会からメンバーが入っていますが、1市だけの視点ではなく、2市9町の視点で発言できることは同友会の強みになっています。

 私は今年度、地区会長2期目になります。今年は会員全員が経営指針づくりに取り組み、その中で私たちはどう生き、社員や地域に何を還元していくか語りあいたいと思います。これを本格的に追求すれば会員は増えるでしょう。

▼相双地区の概要
地区設立 1992年8月
会員数 62名
役員数 18名
対象地域 相馬市、原町市ほか9町3村(人口21万人、企業数4137社)

「中小企業家しんぶん」2002年5月15日号より