「経営指針を創る会」参加者が核に 気仙沼・本吉支部(宮城) 気仙沼・本吉支部長 澤井 忠氏((株)澤商フーズ社長)

―まず気仙沼市の特徴をお聞かせください。

澤井 仙台まで車で2時間、宮城県の最北に位置し、岩手県と境を接しています。山と海に囲まれた地域なので、他の地域との人的交流が少なく、よそものを受け入れにくい風土があります。基幹産業は漁業を中心にして鮮魚出荷業・水産加工業などで成り立っています。年間水揚高はまぐろ・かつお・さんまを柱に300億円になります。塩辛は有数の産地で、トップ3社で年間110億円の売上、牡蠣(かき)やほたての養殖も盛んです。しかし、全体として漁業は輸入に押され気味です。

―入会のきっかけは。

澤井 現在副支部長のMさんから「今、同友会というところですごい勉強をしている」という話を聞いたのが4年前、でもそのときは入会を勧めてくれませんでした。あとから考えると、ちょうどMさんが経営指針づくりに参加している時でした。

 1998年11月、支部例会で経営体験を話してほしいという依頼を受け、人前で話すのは初めてでしたが報告者を務めました。出席者から、核心をとらえたたくさんの質問が出され「これは油断のならない会だ」と思いました。例会直後、入会を勧められ、すぐに入会しました。

―同友会での学びの成果は。

澤井 12月に入会して翌年3月からの「経営指針を創(つく)る会」(以下「創る会」)に参加しました。それなりに企業は伸びていたものの、経営理念もなく人づくりも遅れていました。経営指針づくりを進めながら、社内での経営理念の討議には30時間かけました。セミナー修了後すぐに同友会大学に入学し、結局この年は45日間仙台に通って学びました。

 同友会大学では、いちばん早く行って先生の前にすわって講義を聞きました。帰りの車中では一緒に参加した総務部長と2時間、いつも復習をしました。仙台の人たちは家に帰ってビールを飲んでるかもしれないが、われわれは遠いところから通うハンディをチャンスに変えるんだという気持ちで通いました。

―支部長就任2年目だそうですが、支部活動の特徴と支部長としての抱負を。

澤井 自分が勉強してきた楽しさを多くの経営者に味わってもらいたいと思っています。私自身ただがむしゃらに金儲けをしてきたのが、経営指針づくりの中で、考え方、生き方が変わりました。まわりの経営者の皆さんを見ていると、エネルギーや意欲はありながら、我流であったり、本気になって社員教育をやっていないケースが多く見受けられます。現在当支部は「創る会」に参加した5人の役員が核になっています。今年は6人が仙台へ通っており、来年もすでに4人が予定しています。

 “いい会社”をつくる経営者が増えれば、必ず地域の活性化につながると思います。経営指針の受講を勧めるときは、奥さんにも同席してもらうようにしています。奥さんから会社の問題点が出されることが多いんです。「創る会」に出て社長が変わると奥さんに涙ながらに感謝されます。そんな時、支部長をやっていてよかったなと思います。

 ひとつだけエピソードを紹介しましょう。「創る会」に参加したSさんが仙台から帰ってきた朝、奥さんの前で何か言いたそうにタバコを吸ってるんです。奥さんは知らん振り。意を決したようにSさんは「これまでおれは何も考えずに商売してきたことが本当に良くわかった」と言ったところ、奥さんはこう言いました。「死ぬまでに一度そういう言葉を聞きたいと思ってあなたと寄り添ってきました」。

―最後に組織づくりについてお聞かせ下さい。

澤井 私は例会の翌日か翌々日に、例会のまとめを直筆で支部の全会員に送っています。これを会員の方がもって歩いて増強に役立てたりしているようです。昨年度のはじめ84名だった会員数が118名になりました。特に今年3月以降大幅に入会者が増えました。支部設立5周年を記念して、昨年11月から連続して100名以上集めた講演会を5回開いてきたのが実ったのだと思います。来春までに150名会員を達成したいと考えています。

▼気仙沼・本吉支部の概要
支部設立 1996年12月
会員数 118名
役員数 14名
対象地域 気仙沼市と周辺5町(人口10万7000人、企業数2000社)

「中小企業家しんぶん」2002年7月15日号より