手作り無添加の牛乳寒天 山ト食品(株) 社長 永沼純子氏(静岡)

手作り無添加の牛乳寒天
「子どもの体に良いものを」と、わが子へのおやつから始まった
山ト食品(株) 社長 永沼純子氏(静岡)

「牛乳寒天」に詰まった思い

 手作り無添加で安心安全、体にやさしい食品づくりにこだわる山ト食品(株)(永沼純子社長、静岡同友会会員)。その主力商品「たちばな・牛乳寒天」は、日経テレコンPOSシステム商品別販売動向・チルド寒天部門で常に上位にランクされるなど、静岡を中心に子どもから大人まで幅広く愛されているオンリーワン商品です。

 この「牛乳寒天」には、「(1)家庭の味をつなげる、(2)昔に戻り手作り無添加にこだわりを持つ、(3)安心安全で体にやさしい食品づくりをすること」という永沼純子社長のこだわりが、凝縮されて詰まっています。

 原料は、長野県伊那地方の素材を厳選した寒天と、地元静岡県東部の丹那盆地で搾られた牛乳を使用。寒天は、食物繊維たっぷりで、お通じにも良いし、脂肪分や糖分を包み込んでくれるので肥満防止にもなります。そして、すべて注文を受けてから作り始める手作りのこだわり。そんな健やかさとおいしさを兼ね備えた商品が「牛乳寒天」なのです。

手作りおやつから始まった

 同社は、もともとは豆腐の製造販売が中心でした。1984年の大手スーパー出店の影響などから売上が減少。その打開策として、もっと地元に密着しようと、行商販売を始めます。行商では、豆腐だけでなく、惣菜や弁当など、顧客の要望に応じて新商品の開発にも努めました。そこから惣菜・菓子製造販売部門「たちばな」を立ち上げ、「たちばな」ブランドが誕生しました。

 今では主力商品となっている「牛乳寒天」も、当初は、仕事が忙しくて十分面倒を見てあげることができないわが子への「子どもの体に良いものを」と考えて、永沼さんが作ったおやつでした。

 そのおやつを、患者さん向けの体にやさしい食品として病院に納めるなど、惣菜の1つとしても販売していたところ、MAXバリュー東海の社長から「牛乳寒天を販売したい」とオファーを受けます。惣菜・菓子製造部門を立ち上げ、行商販売、地域への卸売り活動から7年が経ったころでした。

 このオファーでは、「担当バイヤーさんが商品を大事にしてくれた。ただ仕入れて売るという一過性の商品としてではなく、この商品を売り場の良い所に置いたり、お客さんに一番アピールできる所に置く努力をしてくれた」といい、「売る人・買う人・作る人」の3者の思いがそろいました。

 これが起爆剤となって、「牛乳寒天」は商品として独り立ちをすることになります。2003年春には、主要部門であった豆腐製造業を廃業、翌04年には、永沼さんが社長に就任。現在は惣菜・菓子製造部門に特化し、「牛乳寒天」はMAXバリュー東海をはじめ、県内スーパー各社、福島県から大阪府まで、販路を広げています。

同友会で学んで

 永沼社長が同友会と知り合ったのは今から3年ほど前、大阪同友会会員のハンディ充填機メーカー(株)ナオミの駒井さんとの出会いでした。「前向きで人格者で、経営に関してしっかりした考えを持つ彼女に心を動かされた」永沼さんは、すぐに静岡同友会へ入会。支部活動を始め、女性経営者全国交流会にも参加し、経営理念作りへと学びを深めて行きました。

 「同友会はまさに学びの場」といい、「同友会で業種を超えたいろんな社長さんに会うなかで、社員が働きやすくするのが社長の仕事だと気付きました。皆がどう思っているかは考えてはいましたが、今日はこういう仕事をするからって、私が全て決めていました。自分たちで考え、自分たちの意志で動く会社にならないと、おいしいものは生まれてこないと感じました」と話します。

社員と一緒に経営理念を成文化

 そんな思いから、昨年1年間かけて、社員と共に経営理念を見直しました。その結果生まれたのが、経営理念「食品を通じ顧客の喜びを我が喜びとして味わえる会社作りを目指し、常に商品の開発に目を向け、いい会社、いい食品を作ることを心にする」と、スローガン「自分たちの食べたくないものは、作りません。売りません」です。

 経営理念成文化の過程では、「いい会社ってどんな会社、いい食品とは」「この仕事はどう思う?」「うちの将来の会社はどうしたら良い?」と細かく話し合いました。整理整頓から、仕事の内容、役割分担まで、皆で改善提案をしました。一番の改善は「皆の身体が楽になること」をベースとしたことです。1年間、アンケートをとったり、この方法がいいよと提案が出れば即実践に移し、会議をやり、何回も何回も社員と一緒に考えていきました。

 「この間、皆でお茶を飲みに行った時『仕事楽しいよねー』と言われたのが、とてもうれしかった」と永沼さんは話します。

楽しく夢のある会社に

 今後、インターネット販売を視野に入れ、マーケティング分析と「マーケティングの確固たる確立」が必要だと話します。人材については、「商品作り・商品開発に意欲のある方と、営業が好きな方、強い方の2つの分野で人材を求めています。後継者には、本当に商品に思いやりがあり、商品を大事にしてくれる人、理解してくれる人が一番良いと思っています。この職場には定年制がありません」とのこと。

 「これからも、お客様の要望にこたえた商品を作り続けながら、会社の活性化を図っていきたい」「1つのものをやりながらも、皆が楽しめたらいいなって。何気なく作るのではなくて、夢のあるものを作って、提供していきたいと思います」と柔らかな笑顔で楽しそうに話す永沼社長でした。

【会社概要】
創業
 1953年
資本金 1000万円
社員数 22名
年商 1億3000万円
業種 寒天デザートの開発・製造・販売
所在地 静岡県伊豆の国市吉田
TEL 0558-76-2524
URL http://www.izuyamato.com/

「中小企業家しんぶん」 2007年 6月 25日号より