サンプル(食品模型)はもの言わぬ営業マン (有)みやもと 取締役 伴野 忠大氏(石川)

サンプル(食品模型)はもの言わぬ営業マン
創業者の意思継ぎ、王道で勝負
(有)みやもと 取締役 伴野 忠大氏(石川)

 (有)みやもと(伴野忠大取締役、石川同友会会員)は、観光土産菓子の菓子サンプル(食品模型)を専門に製造する会社です。

 本物の菓子がもつ、ふわふわ感やサックリ感、しっとり感、プリプリ感などの風合いや特長が見事に表現され、観光客の購買意欲を刺激します。全国の観光地や宿泊施設の売店、パーキングエリアに置かれ、もの言わぬ営業マンとして各地で活躍中です。

菓子メーカーからサンプルづくりで独立・創業

 同社がある石川県加賀市は、山中・山代・片山津などの加賀温泉郷を抱え、温泉客用として観光土産菓子の製造が盛んになりました。

 創業者は、伴野氏の義父である宮元翼氏。宮元氏は、地元の菓子メーカーに勤務し、食品模型を仕入れる立場にいたのですが、思うような仕上がりのサンプルが持ち込まれず、見よう見まねで作り始めたことが創業のきっかけでした。

 もともと美術一家だったことから、センスのよい製品は評判を呼びます。しかし、その宮元氏は3年前に他界。伴野氏は全く異なった業種のサラリーマンをしていましたが、創業者より「常に基本に立ち返り、当たり前のことをきっちり行い、王道で勝負を。『一期一会』、今日を限りの想(おも)いでお客様や仕入れ先と接し、日々一生懸命仕事を」と遺言され、その意思を引き継いで入社しました。

 伴野氏は、「創業者が築いてくれた信用があり、工場長が育っていたので、大きな混乱はなかった」といいます。

品質の高さが強み

 以前は原料に蝋(ろう)を使っていましたが、昭和60年(1985年)ころからは加工しやすいシリコン素材(塩化ビニール系)が主流になりました。

 工程は、本物の菓子または粘土で作った菓子の原形を基に型を作り、その中に素材を流し込んで焼き、色をつけて仕上げます。

 透明なゼリー菓子の製作は難しいとされますが、気泡を入れずに本物同様の透明度で作ることは得意とするところで、職人気質の品質の高さは同社の強みです。また、以前納入したものと同じ色や形になるよう、ロット管理しています。将来的には、人や環境にやさしい原料に変更したいとして、現在探しているところです。

サンプルなら「みやもと」と言われたい

 サンプルが土産物の売上を左右することを社員もよく知っていますので、旅先では必ず陳列写真を撮り、見せ合うことが習慣になっています。思いがけない場所で自社製品と出会うこともあります。

 最近は、単品からディスプレイ製品の注文が増え、小物や写真づかいで商品が引き立つようにアレンジするセンスが問われます。

 社員の技術レベルを上げ、職域を広げて、みんなでカバーできる体制を目指しています。そして、地元以外にお客様を増やし、観光土産のサンプルなら「みやもと」と、全国的に評価してもらえる会社になることが夢です。

【会社概要】
創業
 1981年
資本金 3000万円
年商 1億2000万円
社員数 15名(パート2名)
業種 食品模型制作・企画
所在地 石川県加賀市冨塚町
TEL 0761-74-0086

「中小企業家しんぶん」 2007年 11月 25日号より