自立型中小企業の元気を応援 ものづくりの東大阪を支える拠点「クリエイション・コア東大阪」

自立型中小企業の元気を応援

ものづくりの東大阪を支える拠点「クリエイション・コア東大阪」

 「クリエイション・コア」とは、中小企業基盤整備機構が中小企業新事業活動促進法に基づき、地域の研究資源を有効に活用し、新製品・新技術の研究開発や新分野への進出をめざす中小・ベンチャー企業等を支援するために作った施設。かずさ(千葉)、名古屋、京都御所、福岡、東大阪の5カ所にあり、今回は「クリエイション・コア東大阪」と、そこを活用している大阪同友会会員企業3社を紹介します。

創業より、廃業ストップに力点

 2003年に開設された「クリエイション・コア東大阪」(以下、「クリ・コア」)の特徴は、他の4カ所がインキュベーションルーム中心なのに対し、その施設は全体の25%におさえ、他の機能を充実させていることです。

 産学連携のための関西を中心とした14大学のサテライトオフィスや、技術開発・資金確保・販路開拓・経営相談などを専門アドバイザーからサポートを受けられるワンストップサービス機能、約200ブースを備える常設の展示場、商談コーナーなどを備えています。

 「新規創業より廃業率が高い昨今、新規創業を増やしても事業所数の増加にはならず、むしろ政策的には廃業をどうストップさせるか」(下田正憲(財)大阪産業振興機構参事)を重点に、施設が作られています。

 行政の作った施設は「箱物」行政と評判が悪い中、開設から4年過ぎても入館者は減らず、展示場はいつも満杯。インキュベーションルームも、募集すれば常に倍以上の競争率。「インキュベーションルーム以外の機能に魅力があるのでは」と分析しています。

 こうしたことができるのも、土地・建物は国のものでも、運営は東大阪市中小企業振興会や東大阪商工会議所など、NPOを含め7つの組織が共同して運営していることです。利用者側に立った施設とその運営は、中小企業の元気を応援してくれています。

同友会で情報入手

 インキュベーションルームや展示場に入居、利用している大阪同友会会員は48社(展示40社、入居のべ8社)。今回話を聞いた(株)ユニックス(苗村昭夫社長)、(株)メタルファンテック(平井敏治社長)、(株)下西製作所(下西巌社長)の3社に共通するのは、大阪同友会が1998年に立ち上げたオンリーワン研究会の一員であることです。

 20年前から大阪同友会会員である平井氏は、「同友会に入っていなかったら、とっくにこの企業はなかった。自立型企業を目指し、自社製品の開発を行ってきたからこそ今がある」と言います。龍谷大エクステンションセンターRECにも入居したことがあり、「同友会でなければこれだけの情報は入手できなかった」と、「クリ・コア」への入居情報も、オンリーワン研究会にあったことを明かしてくれました。

 今年、入居期限が終了し、「クリ・コア」から卒業・退去した平井氏、来年退去予定の苗村氏は、「多くの研究開発や入居企業との連携ができ、人間関係が広がった」ことを入居メリットとしてあげ、退去後の今後も、さまざまな形で「クリ・コア」を使っていきたい、と話しています。ベンチャー企業だけでなく、やる気のある既存中小企業を支援する仕組みがクリ・コアにあることを感じさせます。

クリ・コア活用する大阪会員企業

ペットボトル再利用からロケットまで
(株)ユニックス 社長 苗村 昭夫氏

 同社はもともとポリウレタンコーティングなど表面処理を得意とする会社でした。このままではじり貧になると考えていた矢先、「クリ・コア」が開設され、研究開発型企業を優先入居させると聞いて手を挙げました。

 「ペットボトル滅容器の開発と販売」が経営革新支援法で承認されたり、注射器滅菌溶解器「セフティポン」や、PETボトルの再利用で低コストを実現した太陽熱温水器「サンペット36」なども開発しました。中小企業の悲しさは、せっかく開発しても専任者をおけないこと。今、展示会などで反響をつかみ、試作機もでき、本格販売を始めようとしています。そんなときは、クリ・コアの販売コーディネーターから適切なアドバイスがもらえます。

 昨年は、フランスでロケットを打ち上げてきました。大阪府立大学院生と連携し、(株)メタルファンテック、(株)中央電気計器製作所など同友会メンバー6社と共同で開発した“CEES Rocket”を製作、さらに多くの企業や学生と「宇宙クラブ関西」を立ち上げ、ロケット製作に取り組んでいます。これは、学生との接点を意識してやっているとのこと。こうした試みはメディアでも取り上げられ、注目度も高まっています。

設立 1988年/資本金 2200万円/従業員数 20名

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本業以外のもう1つの柱づくり
(株)メタルファンテック 社長 平井 敏治氏

 21歳で独立した平井氏は、金属板金加工業の根っからの職人。知人の障害者を何とか手助けできないかとテーマを持っていたとき、龍谷大RECに大阪同友会オンリーワン研究会の8社が共同で入居する中の1社となりました。産学連携は敷居が高いと思っていましたが、大学が中小企業にも丁寧に接してくれることを体験。クリ・コアへは、龍谷RECの入居・卒業の続きのような感覚で、身近で開発ができる魅力から入居しました。

 ゴミ焼却施設の中の放射温度計とスラブクリーニングが一体となった機械の開発など、「思い切り背伸びしてやってきたことが自信になっている」と平井氏。手の不自由な方のために10年かかって開発した片手切りロールペーパーカッター「キリコ」は、幼児から高齢者まで、健常者にとっても片手で切れる快感をアピールして、介護施設等にも評判の1品です。

 開発の範囲も、医薬関連や環境関連など多方面にわたり、現在売上の比率は、本業の板金加工が8割、自社製品が2割程度。電気の中継ボックスからのスタートでしたが、箱物板金でも大型化するなど、本業のグレードも上がり、自社開発の成果は、企業経営のトータルに及んでいます。

設立 1990年/資本金 1000万円/従業員数 10名

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夢は10年後、磁性体の開発
(株)下西製作所 社長 下西 巌氏

 磁性の可能性に挑戦する(株)下西製作所。創造法(中小企業創造活動促進法)認定を受けた自社開発製品は、磁力による部品搬送システム「マグネポーター」。狭い作業場でも磁力で垂直に部品を搬送し、次行程に送ることができます。

 近くのネジ工場が、ベルトコンベヤーも使えない狭いスペースで、重いネジの塊をスコップで上げ下げしているのを見かねて開発したもの。油洗浄液中からの自動搬出も可能。そのほか「マグネットドラムセパレーター」は、原料粉体中の磁性体異物の除去に威力を発揮。食品加工業、飲料、化粧品、医薬品製造業などでの利用が多いようです。

 今、下西社長の関心はナノテクツール。課題はコバルトで磁石を作ることです。ナノ磁石の用途はさまざまで、微小センサーなど精度が要請されるものなど、その可能性は広い。下西社長は、「実現は10~20年先かもしれないが、今やっておかなければ、ものづくり日本の未来はない」と断言します。

設立 1971年/資本金 1000万円/従業員数 54名

「中小企業家しんぶん」 2007年 6月 25日号より