全国初! グリーンツーリズム融合型の自動車学校 (株)高田自動車学校 社長 田村 満氏(岩手)

全国初! グリーンツーリズム融合型の自動車学校
(株)高田自動車学校 社長 田村 満氏(岩手)

 (株)高田自動車学校(田村満社長、岩手同友会会員)は現在、陸前高田をはじめ、平泉、遠野に3校のドライビング・スクールを経営しており、県内トップクラスの入校生徒数を誇ります。

 少子化や流出人口の増加で、スクール周辺の生徒数が減少する中、田村氏はむしろその自然豊かな立地と地域の持つ資源を存分に生かそうと、全国初のグリーンツーリズム融合型の自動車学校を立ち上げました。「この地域を初めて訪れた人たちの、心に残るものとは何だろうか」、そう深く考えたときに田村氏が着目したのが農業だったのです。

なんとかこの地域に残してほしい

 2004年、遠野市で唯一の自動車教習所が閉鎖することになりました。「遠野から自動車学校をなくさないでほしい」との、遠野地域の方々からの再三にわたる願いから、同社が経営を引き受け、同年3月に「遠野ドライビング・スクール」として開校しました。

 当初から、田村氏にはある思いがありました。当時、遠野市が積極的に取り組んでいた「グリーンツーリズム」を合宿教習に取り入れる発想です。教習の合間に、農業体験やそばうち体験、農家に宿泊して交流を深め、地域に住む人びとの暮らしに触れ一緒に生活をしてもらう。「遠野での生活を心に残してもらいたい」、そんな思いで地元の農家へ1軒1軒お願いをして歩きました。

お客様が地域にいないなら来てもらう

 試みは学生だけに絞ったものではありません。綿密な市場分析の結果、都会に住む主婦の多くがペーパードライバーであること、都会には免許を持たない中高年齢層の方々がかなり多いことがわかり、そのための特別メニューを用意したのです。

 週末や連休に無農薬野菜の栽培体験と教習ができるタイムスケジュールを組み、収穫時期には再び遠野を訪れ、自分たちの手で収穫してもらうという取り組みです。地元にお客様がいないなら、地域を越えて徹底してニーズを探り提案し、来ていただく。そうして栽培された米は、馬産地遠野の豊かな大地で、馬の堆肥で丹念に育てられたことから、「馬米(うまい)」と名付けられました。無農薬栽培の手間から市場価格の何倍もしますが、即完売するほどの人気となっています。

 そうした取り組みを地道に積み上げてきた結果、引き継いだ当初260名だった生徒数は、2004年には344名に増加。そして昨年には、823名にまで増加しました。

教習を通して生きる原点に気づく

 「グリーンツーリズムに興味を示す生徒さんは、さまざまなことに問題意識を持っている人、心の優しい人たちだと思います。その生徒さんたちに“安全”の小さな種を蒔(ま)くのが私たち職員の役割、責任だと考えています。それが1件でも悲惨な事故を無くすことになると信じています」。田村氏のそうした思いが、車の教習を通した人づくりの原点になっています。

 「邂逅(かいこう)に悦(よろこ)びを・・・!」これは同社の経営理念です。お客様、社員、そしてこの地域で住む人々に高田自動車学校を通じて、「出会いやめぐり合いに喜びを感じてほしい」という思いが込められています。たくさんの出会い、そして安全の小さな種を心に灯す。ここにかかわる人たちは、だれもがみんな笑顔になります。

 「若者にとっては一生の宝物をつかめる場所、社員にとっては人間として成長できる場所、そしてここで出会ったすべての人が、人間としての生きる原点に気づける場所であってほしい」、そんな願いの込もった、岩手の雄大な自然に包まれた自動車学校がここにあります。

(「同友岩手」創刊号より)

【会社概要】
設立
 1968年
資本金 1500円
社員数 102名(嘱託・研修生含む)
年商 9億円
業種 自動車教習所
所在地 陸前高田市竹駒町字相川
TEL 0192-55-3990
URL http://www.tohno-ds.com/

「中小企業家しんぶん」 2007年 11月 25日号より