池袋中心に「らしさ」追求して 豊島支部(東京) 豊島支部長 河原 八洋氏((株)ローヤルエンジニアリング社長)

―まず豊島区という地域の特徴を。

河原 池袋というターミナルを持つ地域です。それだけに、産業構造も、卸・小売・飲食業36%、サービス業26%、製造業14%となっています。一方、学校も多く、古くは江戸川乱歩が住んでいたり、手塚治虫をはじめ多くの漫画家が住んでいたトキワ荘があったり、文教地域とも言えます。

―同友会で学ばれたことは。

河原 入会は1991年。長い間東京同友会の教育委員会の活動に携わり、そこで学んだものが大きかった。そのころ当社は社員の定着が悪かったんですが、それは来る人間の質が悪いからだと考えていました。

 委員会活動を通して、定着の悪いのは企業側に原因があることがわかってきました。

 同友会の1泊社員研修で私が助言者として入ったグループに、髪を染め、まっすぐすわることもできず、討論にも加われない社員がいました。私はこの社員はどうにもならないのではと思っていました。ところが彼の最終レポートには「自分にとってとても有意義な研修だった。同じグループの人と夜中まで話した。自分のことをこんなにたくさん話したことは初めて」と書いてありました。外見で決めつけていた私は反省させられました。

 「人間ってすごい」と思い、心底から話すことの大切さを学びました。この経験を生かして「どういう会社にしたいか」「どんな会社なら働きやすいか」などを討論し5カ年計画をつくる場を社内につくりました。このおかげで会社の基礎ができ、廃業か解散かという危機に直面した時も社員の力で乗り切ることができました。

―支部活動の特徴を。

河原 地域とのかかわりを大事にしています。大企業は地域での社会的役割はあまり果たせませんが、中小企業はコミュニティに組み込まれています。

 3年前から「池袋モンパルナスの会」という活動を当支部が中心になって始めました。戦前画家などが1000人も住んでいたアトリエ村の自由でエネルギッシュな良さを見直し、まちおこしに役立てようというものです。支部会員の劇団が劇化し、区や大学、商店街とも一緒に活動を進めています。

 学ぶ活動では例会重視は言うまでもありませんが、経営対策委員会が行う例会も濃い内容です。支部会員1社に対して出席者が社外重役として率直な意見を出し合うものです。かなり厳しい意見が出されます。例会のグループ討論で委員が発言を聞いていて、俎上(そじょう)に乗せる会員を発掘します。

―支部長として今考えられていることは。

河原 中小企業が大企業をめざす時代は終わりました。地域に密着し、自立した中小企業らしい会社をつくるために地域に根ざした支部活動を展開していきたいと思います。会員増強は、キャンペーン期間中だけではなく、1年を通して取り組む活動の柱として位置づけ、5年で150名にする長期目標を立て、「こんな人がいるよ」程度から「もう1押しの人」「過去の退会者」まで常時200名ほどの対象者を4段階にリストアップし、「友の会」的つきあいをして底辺を広げるよう努力しています。

▼豊島支部の概要
設立 1986年
会員数 103名
役員数 25名
対象地域 豊島区(人口24万6000人、企業数約9300社)

「中小企業家しんぶん」2003年 9月 15日号より