地域を変えていく力に 下関支部(山口) 下関支部長 山野 陽生氏((有)ライフクリーニング社長)

―はじめに下関市の特徴を。

山野 造船、水産業が強い地域ですが、近海、東シナ海の水揚げが長崎や福岡に移り、全盛期であった昭和40年代からすると水揚高は十分の1となっています。

 また昨年、市町村合併で人口30万を超え、中核市の指定を受けたものの、すでに人口減で30万を割っています。

 元気のいい大手企業は無く、「フグ」(地元ではフク)にかけて、産業振興を図る動きもあり、地元中小企業の活躍が期待されるところです。

―同友会に入会されて学ばれたことは。

山野 12~13年前から、家庭でクリーニングできるとうたった洗濯機や洗剤の普及で、商業クリーニングは家庭洗濯に侵食され需要が激減し、クリーニング業界が急下降していく中、当社も2期連続赤字となっていました。なんとかしなければと9年前に同友会に入会しました。

 当時は会社に経営理念もなく、朝令暮改で社員もばらばら、まとまりのない状況でした。支部幹事となって経営委員会にかかわり、経営指針づくりを福岡同友会北九州支部で学びました。ここで経営者として学ぶべきこと、どうしたら会社がよくなるのかなどが理解でき、実践していく中で会社が変わりはじめました。

 支部でも経営指針セミナーを開始し、経営委員長になって2年目の2003年に経営指針を成文化しました。金融機関や取引先、お客様もよんで発表会を行い、翌年から毎年、パートさんも含め、社員個人の目標にまで落とし込むことで、共有していきました。

 一定の利益がでれば、社員用の駐車場の整備など、待遇改善にも反映できるようになって、社員にも目に見える成果となりました。

 現在は社内の全体会議を年2回行い、幹部は合宿で反省会と目標の見直しを行っています。いまでは経営理念で社員の行動が検証できるようになり、社内の問題意識がすり合わせられるようになりました。

 今年は企業の社会的責任を経営計画にも盛り込み、環境問題への対応など、できるところから取り組もうと話しています。また、革製品のクリーニングを安価に行い、付加価値を高めながらインターネット上から受注できるようにするとともに、既存顧客へのサービスとして中元、歳暮品の取り扱いも行っています。

―支部活動について。

山野 経営指針づくりを支部活動の柱と位置づけ、毎月1回セミナーを行い、経営理念・方針・計画を作っていくようにしています。

 また、経営者集団である同友会で組織運営ができるようになれば、当然会社運営にも反映できます。まさに「車の両輪」。2~3割の役員だけが運営にかかわるのではなく、全会員が運営にかかわり、学びあう機会を増やしていきたいと考え、全員がいずれかの委員会に所属するようにしています。

 新会員の定着を大事にし、新会員はベテラン会員がついてフォローしていくこと、例会の報告者は支部からできるだけ出すように心がけています。

―今後の抱負を。

山野 地域が疲へいしている中で、われわれ中小企業が元気になることが地域活性化につながると考えています。他団体にはないモチベーションを持てるのが同友会。「自分たちは中小企業だから何もできない」ではなく、「中小企業憲章」も学びながら、環境を「変えていけばいい」との思いで今後も支部活動に取り組んでいきます。

▼下関支部の概要
設立 1995年5月
会員数 132名
役員数 30名
対象地域 下関市(人口29万人、企業数3248社)

「中小企業家しんぶん」 2006年 8月 15日号より