経営を発展させ、地域に役立とうとする同友会 阪南大学学長・大槻眞一氏

経営を発展させ、地域に役立とうとする同友会

阪南大学学長 大槻 眞一氏

 今回は、外から見た同友会の印象、期待、可能性などを、長年関西の同友会を中心にかかわってこられた大槻眞一・阪南大学学長に語っていただきました。

―まず同友会との出合いをお聞かせください。

大槻 今から23年前、私がまだ通産省の役人だった時代です。大阪工業技術試験所の中の技術相談所長をしていた時でした。大阪同友会の事務局の方が会員さんを連れて相談にこられたのが始まりでした。その後、相談が相次ぎ、同友会の例会での報告依頼を受けるようになりました。

―同友会とのかかわりでこれまで感じられたことを。

大槻 出合ったころの同友会は、行政や大学とのお付き合いも少なく、私が例会にお邪魔すると珍しがられた記憶があります。仲の良い経営者グループという印象でした。その後、大阪を中心に関西の同友会とかかわってきました。会員が協力して新しい仕事を創(つく)り出すという点で、90年代半ば以降の同友会は急速に道を拓(ひら)いてきたと言えます。

 大阪同友会では産業構造研究会(大槻座長)が設けられ、はじめは景況調査に基づく情勢分析を行っていましたが、その後製造業の会員によるオンリーワン研究会が生まれ、産官学連携による新製品の開発への挑戦が始まりました。

 兵庫の場合は、震災からの復興の中で、まさに生き死にをかけて会員企業のグループ化による仕事の受け皿づくりや仕事づくりが進んでいきました。「アドック神戸」などに代表される活動として広がっています。他の同友会でも事例がたくさんあることと思います。

―最近は行政との関係も密度が濃くなっているように感じていますが。

大槻 近畿経産局の例で言えば、第1期産業クラスター計画の推進の中で、数百社を束ねるものづくりクラスターの幹事には同友会会員が入っていました。第2期の検討を行った検討委員会のメンバーに入っている中小企業の経営者団体は同友会だけです。

―行政と同友会の親密度が増している理由はどうお考えですか。

大槻 1つは、行政側が机上で施策を練るのではなく、現地現場主義に転換したことがあります。もう1つは、同友会が明確な理念を掲げてそれを実践しているからだと思います。良い会社、良い経営者をめざして学び続けていること。地域と一体となって経営を発展させ、世の中の役に立とうとしている、いわば社会性の追求。これが行政にとって同じテーブルについて議論しやすい理由です。各社が自社の利益さえ上がればいい、経営者の集団としても自分たちさえ良ければ、という姿勢だと行政は付き合いにくいと思います。

 この間、「新連携」のコア企業の多くは同友会の会員企業が担っています。補助金めあてのにわかづくりのネットワークではなく、同友会の中で長い年月をかけた学びあいの積み重ねで築かれた信頼に基づくネットワークだからこそ、“審査”も通るのです。

―大学から見た同友会はいかがでしょうか。

大槻 阪南大学と大阪同友会は、特に人育てで協力しあっています。6年前に開講した「経営実践講座」(年26回)では、会員の皆さんに経営体験を語っていただいています。学生ベンチャーを育てる起業塾も会員の方々が協力。インターンシップでは、毎週2回、4週にわたる授業で行われるバズセッションの8グループすべてに経営者が入りますから、のべ64人の方が登場。10人以下のグループですので、じっくり討論でき、現場へ出る不安が解消されるようです。その後夏休みに2週間、企業でインターンシップを受けます。

 今年9月開講予定の寄付講座は、大阪同友会からの寄付金20万円に基づいて開くものですが、中小企業の魅力を学生に伝え、学生の持つ中小企業のイメージを変えるものとして期待しています。同友会大学へは全面的に協力して、教員を派遣しています。現在温めている企画もあり、同友会と大学が協力すれば、ほかにもできることがたくさんあると思います。

「中小企業家しんぶん」 2006年 7月 15日号から