ネットワーク連携での同友会運動の優位性を考える

 前回の本欄は、中小企業の「新たな連携」を進めるうえで、同友会の中で得られた信頼や理念共有が有効性を持ち、新しい発展の可能性があるという提起をしました。今回は、その点をもう少し考えてみます。

 いくつかの同友会の産学官連携ネットワーク組織が成果を上げつつあるのは、同友会の組織特性が関係していると考えられます。その前提には、社会的な意義の自覚のもとに同友会理念が会員の行動規範となり、会活動での連帯意識と協働意欲を高め、理念の発信が社会からの支持を獲得するという理念の好循環を生み出すことがあります。

 では、この「同友会らしさ」を形づくる組織特性とは何でしょうか。

 第1の仮説は、自主・民主・連帯の理念が、民主的なルールなど組織運営面に生かされるだけでなく、民主性が会員の創造性を高め、活動の成果を上げる内実をつくることです。同友会は、会員が直面している「問題」を会員間のコミュニケーションの中で発見し、自覚し、方法を構築する民主主義的な場(プロセス)と位置づけられます。この中で一人ひとりの会員は問題に気づき、創造力を活性化させることができるわけです。

 第2の仮説は、同友会が運動の主体である経営者自身の成長を重視した理念(3つの目的の2つ目)を持っていることにより、ネットワーク連携活動においても謙虚に学び合う姿勢を堅持できることです。この自己教育運動の視点がしっかりしていれば、連携グループにありがちな実利的成果を拙速に求めることに陥らず、下請体質からの脱却など企業体質の改革や新市場開拓、信用力の高まりなどの貴重な成果を得るところまで「がまん」でき、結果として成果・利益につながる連携活動を生み出せる可能性があります。

 第3の仮説は、3つの目的の総合的実践を支えにして、経営や政策活動を同友会運動・中小企業運動の視点から考えることができるようになり、連携活動でも、経営、政策、運動の各局面を関連づけて発展させる力を持てることです。

 神奈川大学の大林弘道教授は、東京同友会の経営研究集会分科会のパネル討論で、「新連携」政策など政府の中小企業政策が機能するためには、政策のモデルとなる成功事例を自発的に学び実践、普及する中小企業運動が求められていると強調。政策、経営、運動を「串刺し」で展開できる新しい中小企業運動の必要性を提起し、同友会運動への期待を示唆しました。

 今、自発的なネットワーク連携組織が中小企業発展の経営と政策のモデルを増やし、地域経済の活性化を促すものとなるダイナミックな運動が期待されます。同友会は、そのような経営、政策、運動のモデルに一番近い位置にあると考えられます。極論すれば、同友会のような組織が増え強大になればなるほど、中小企業政策の効果は大きくなり、地域が活性化し、中小企業の自立的な発展につながると言えます。大きな可能性に確信を持って、産学官連携などに同友会らしく挑戦しようではありませんか。

 もちろん、仮説は実践によってしか証明されません。また、同友会であるからといって、アプリオリ(先天的)に持っている組織特性ではありません。日常活動の中での新鮮で生きた同友会理念の発揮、「同友会らしさ」の常なる追求が求められます。

(U)

「中小企業家しんぶん」 2005年 11月 15日号より