季節と向き合う仕事だからこそ「環境」を守りたい (有)上野造園土木 社長 上野 祐司氏(福岡)

季節と向き合う仕事だからこそ「環境」を守りたい
庭にはドラマがある
(有)上野造園土木 社長 上野 祐司氏(福岡)

依頼主の生き方に寄り添った作品づくり

 博多から“JR福北ゆたか線”に乗り約40分、人口13万人の県内4番目の街飯塚市。そのほぼ中央に同社の経営する店「ブルーメ」(ドイツ語で花の意味)の建物があります。

造園の専門学校を出て京都で修行、長兄の急逝を期に地元に帰り、地元の業者勤めを経て24歳で創業。土地と山をもち、果樹を作っていた祖父の血筋を受け継いだものでした。

 上野さんが創業して19年間、最も基本としてきたことは、造園の仕事は、同じものは2つとない、石や木や草や花、そして空間を組み合わせ、依頼主の生き方に寄り添った作品づくりだという信念で、価格競争をしない、下請けにならないということでした。

四季の変化を見届けて

 庭を造る仕事には当然工期があります。しかし上野さんは、どんな仕事でも「工期は1年」と考えています。「日本には四季がありその季節ごとに庭の見え方や味わいは変わるもの、その変化の様子を見届けないと仕事が終わったとはいえない」と語ります。さらに経年変化でまた味わいも増していくというのです。

同じ庭は1つもない

 また、庭造りは依頼者の生き方、人生に深くかかわること、何度も何度も打ち合わせをし、両者で作り上げていきます。だから同じ庭は1つもありません。「庭があれば、そこに人もいる。人がいれば、そこに思い出もある。まさにドラマチックガーデン」なのです。

 7年ほど前に、「ブルーメ」を出店、事業の柱を複数にしたいとの思いもありましたが、小売は初めて、何もかも手探りで、やめた社員も出ました。

 この店は、本当に植物のことがわかるプロが経営している店として、地域でなくてはならない店になりつつあります。さらに造園のアンテナショップの役割を果たし、お客様から庭づくりの依頼も来るようになりました。現在は、前の苦い経験を踏まえ、社員を育てることを自分の課題としています。

人との出会いを伝えたい

 上野さんは、今までのことをまとめた本『ドラマチック・ガーデン』を発行しました。これは、(1)自分の説明書を作りたかった、(2)緑豊かな街づくりの普及、(3)素敵な方々との“出会い”を1人でも多くの方々に知ってほしかった、のがその理由でした。

 この本は、上野さんの手がけてきた庭(作品)の写真を、その庭造りにまつわる出会い、エピソードと共に紹介。またところどころに「コラム」という形でさりげなく上野さん自身の理念を紹介しています。本の製作そのものも若い写真家やライターとの出会いで実現しました。手にしてページをめくると、まるでそこに庭があり、人がいるようで、その中に引き込まれます。

緑の伝道師上野さんの新たな挑戦

 同友会へは、11年前に入会、最初に参加した例会で、やる気と前向きさを強く感じ、即入会。本を読んでもよく分からない生の経営体験を聞くことが楽しくて、自分自身の目標も明確になっていきました。同友会に入っていなければ「ブルーメ」出店もなかったかもしれないと語ります。

 しかし、その後さまざまな事情が重なり、まったく出席できなくなりました。同時に入会していた他の団体はやめましたが、同友会だけはやめると考えたことはなく、いつか出席できるようになろうと思っていました。この間、同友会と上野さんをつないだのは、定期的に送られてくる「中小企業家しんぶん」に紹介される各地での経営者の奮闘の様子、そして福岡同友会の会報月刊同友、同じ支部の仲間の声かけでした。

 今年5月から、再度参加を始めました。四季折々、自然と向き合う仕事をしているからこそ、感じるものがあると話す上野さんは、早速地球環境委員会に登録。10月に福岡で開催される「地球環境問題全国交流会」に参加します。緑の伝道師上野さんの新たな挑戦が始まります。

【会社概要】
創業
 1989年
資本金 3000万円
社員数 6名
業種 建築に調和する外構、和洋風庭園、茶庭
所在地 福岡県飯塚市片島
TEL 0948-26-0270
FAX http://www.blume-u.co.jp/

写真集『ドラマチック・ガーデン』
上野祐司著 海鳥社発行 3000円(送料込み)
*ご注文は上野氏までFAXで
 FAX 0948-26-0261

「中小企業家しんぶん」 2007年 7月 15日号より