【酒蔵11】土佐体感! の地酒 高木酒造(株)(高知)

土佐体感! の地酒
「とつとつと温かさ伝えたい」5代目の酒
高木酒造(株)(高知)

大杯飲み干し大会で感じる豪快な味わい

 高木酒造(株)(5代目・高木直之社長、高知同友会会員)は、高知市から東へ約20キロメートル、総面積1.64平方キロメートルという日本でもっとも小さい町、赤岡町にあります。

 町の中央には、人々の暮らしを潤す香宗川が流れ、南側に太平洋を抱き、平坦な地形から古くは流通が盛んで、産業、交易の地として賑わった歴史があり、世界的に有名な江戸の絵師金蔵“絵金”の故郷でもあります。

 小さいながらも活気を失わないこの町に、120年余り生き続けてきた酒蔵が醸す酒、「豊(とよ)の梅」。この酒が持つ豪快な味わいは、今や全国的にも有名になった、最も土佐らしい祭りといわれる地元「どろめ祭り」(4月最終日曜日に開催)のメインイベント「大杯飲み干し大会」で感じることができます。

 男が1升、女が5合の酒を浴びるように豪快に飲み干すこの大会は、「地元の活性化につなげたい」との4代目の発案で始まったものです。

 たくさんの酒を一気に飲み干すには、軽快で淡麗でなくてはなりません。大杯に注がれる3代目久吉の酒「楽鶯(らくおう) 豊の梅」は、“土佐のいごっそう”のソウルフルな思いにこたえる酒です。

早場米「風鳴子」で日本一早い酒造り

 酒造りは、秋に収穫した新米を使い、冬に始めるのが一般的ですが、高知県では酒造好適米として日本一の早場米「風鳴子」が8月中旬に収穫されます。このため高木酒造では、毎年この時季に、日本一早い酒造りとして「おり酒」を仕込み、9月中旬には新酒として出荷しています。この4代目皖水の酒「おり酒」は、口当たりの良さと豊かな味わいが人気の濃醇甘口の濁り酒です。

 5代目の酒は、その名も「とつとつと温かさ伝えたい」という辛口純米酒です。ふと気が付けば、心に温かさを伝えてくれる、そんな酒を造りたいという5代目の思いが、名前に詠(よ)みこまれています。

 常温でも燗でも、少し冷やしてもおいしく、どろめや鰹など高知の魚に合わせるのがおすすめです。酒が出しゃばらず、食中酒として料理を引き立てます。このように今では10種類以上が展開されている「豊の梅」にはそれぞれの代を代表する酒があります。

産学連携で日本酒ベースのリキュール開発

 「地酒はその地の文化。心のやすらぎを提供できる、地域性豊かな奥行きのある世界を創っていきたい」と語る5代目が、付加価値の高い酒づくりをめざし、高知大学農学部との産学連携で開発したのが、2003年度全国地場産業大賞奨励賞を受賞した「やさしい ゆず酒」という日本酒ベースのリキュールです。

 産学連携の理由は、ゆずのほかに添加された、体内の免疫機能を活性化させる働きがあるといわれるβ―グルカンという物質にあります。試行錯誤を重ね開発された、この特殊な機能を持つ口当たりのよい新しいタイプのリキュールは、低迷する日本酒の復権につながる可能性を秘めています。

【会社概要】
創業 1884年
資本金 1000万円
年商 8500万円
社員数 6名、パート3名
業種 清酒、リキュールの製造販売
所在地 高知県香美郡赤岡町
TEL 0887-55-1800
URL http://www.toyonoume.com/

「中小企業家しんぶん」 2005年 11月 15日号より