安全で快適な空気環境を創造 (有)日研 社長 末竹 哲氏(福岡)

安全で快適な空気環境を創造
システムとして総合管理する強み生かして
(有)日研 社長 末竹 哲氏(福岡)

 福岡同友会が開催を担当する「第4回中小企業地球環境問題交流会」が10月18日に北九州で「エコ・テクノ2007」と同時開催で開かれますが、その実行委員長であり、福岡同友会地球環境問題委員会委員長の末竹哲氏を取材しました。

大気汚染防止法とともに

 1967年創業の(有)日研(末竹哲社長、福岡同友会会員)は、ボイラーや焼却炉、発電機の排ガス測定や室内空気の環境測定を行っている会社です。70年に大気汚染防止法など公害防止関連の法律が一斉に立法化されたときから(いわゆる公害国会)、いちはやくこうした環境関連業務を開始しました。

 創業者は現社長の父。この新しい仕事の市場開拓のため、専門外であるにもかかわらず、分析に必要だからと、化学の勉強にも熱心に取り組んだといいます。その進取の気性と勉強熱心で誠実な仕事ぶりが評価され、大気汚染防止法によって義務付けられた排ガス測定の仕事を中心に、地元の大手企業などから次々と任されるようになっていきました。この仕事で、分析から報告書作成まで一括して引き受けることから、確固とした自立型企業の基礎を作っていくことになりました。

空調ダクト清掃にも進出

 20数年前、排ガス測定や環境測定は、季節変動が大きく、通年でできる仕事を探していたところ、日本ウイントンが、ビルなどの空調ダクトをクリーニングする仕事の地域代理店を募集していることを知り、すぐに応募。

 ウイントンでは、ビルの空調システムの衛生的な保守管理を、調査(汚染状況の詳細な調査)→清掃→消毒→監視(汚染状況を定期的に調査するモニターシステム)の4工程を計画的に行っていくことにより、室内の空気を衛生的に保っていく、という仕組みで仕事を行っています。汚染状況の調査の結果、どんな菌が発見されたかなどの詳細な分析結果のレポート提出も義務づけています。

 日研では、それまでの仕事で蓄積してきた測定・分析能力に加え、福岡大学医学部に細菌の培養・分析を依頼するなどで信頼を得、日本での地域販売店第1号として契約。以来、20年以上にわたり、排ガスや室内空気の環境測定に加え、ビル空調システムの衛生管理に力を注いでいます。

空調ダクトの定期検査の義務づけめざす

 「空調ダクトが菌やカビ、ダニなどで汚染されていれば、この空調システムにつながっているビル内のすべての部屋が汚染され、感染症やシックハウスを広範囲に引き起こすおそれがあるなど、その定期的な監視・清掃は、室内空気の環境保全では不可欠です。特に病院では、感染症が病院中に広まったりすれば、重大な影響を及ぼしかねません」と末竹氏。

 しかし現在、日本には排ガス測定や室内空気の環境測定と違って、空調ダクトの清掃は法的な義務づけがありません。

 「ビル環法(建築物における衛生的環境の確保に関する法律)が2年前に改正され、空調ダクトと配水管の清掃事業は『事業登録』ができるようになりました。しかし、『可能な限り清掃』するようにうたわれただけで、定期的な検査や清掃は義務付けられていない」とのこと。

 そこで、末竹氏が副会長を務める「日本ダクトクリーニング協会」では、定期検査の法的義務づけに向けて、まずは、どんな汚染状況になったら空調ダクトの清掃が必要かという汚染基準づくりを、国立保健医療科学院などの協力を得て行っており、その汚染基準と定期検査義務の法制化を求めていくとしています。

 また、環境に優しいものの調達(グリーン調達)を求めるグリーン購入法の対象として、モノだけでなくサービスが含まれるようになったことを受け、環境省の2007年度グリーン購入法「特定調達品目」の提案募集に、同協会が提唱する「グリーン空調系清掃システム」を応募する予定です。

マンションの大規模修繕工事にあわせて

 仮に空調ダクトの定期検査義務が法制化された場合、この業界への新規参入が増えることも考えられますが、末竹氏は、「空調ダクトの清掃は、人的物的な力があるだけでなく、空調システム全体を監視し、汚染状況の確認、分析、清掃まで一貫してできるシステムがしっかりできているかどうかが重要です。この業界でも、空調ダクトの清掃だけを下請けする会社が多いのですが、それでは直接お客様のニーズを聞いたり、よりよい環境づくりに向け提案していくなどといったことがなかなかできません。当社には技術力もあり、システム全体をみることで、力をつけてきました」と話します。

 今後は、「築年数が長くなってきたマンションでの大規模修繕工事が増えてきており、その中で排気ダクトの清掃・管理の仕事を確立していきたい。オフィスの入っているビルでは土・日に仕事が集中しがちですが、マンションなら平日にもできるので、仕事の平準化もできます」と末竹氏。ビルとマンションでは清掃で使う道具類や技術的にも違うところがあるため、日本ウイントンの指導も受けながら、技術力をつけていくことにしています。

 福岡同友会の地球環境問題委員会委員長を務める末竹氏。委員会では環境報告書づくりや、経営理念に環境の考え方を取り入れていくことを提唱しており、(有)日研でも率先垂範で取り組んでいます。

経営理念

私たち日研は、安全で快適な空気環境を創造し地球と人々の「いのち」と「くらし」に貢献します。

環境理念

私たちは、「人と地球にやさしい」を事業活動の念頭に置き、地球環境の保全と環境負荷の低減を図り、住みよい地球を未来の子供たちに残すことを責務と考え行動します。

【会社概要】
創業
 1967年
資本金 550万円
社員数 8名
業種 環境証明事業、空調ダクトクリーニングほか
所在地 福岡市南区横手
TEL 092-572-5826

「中小企業家しんぶん」 2007年 2月 5日号から