自動車リサイクルを支えるリビルド部品 (有)目黒ライニング商会 社長 深澤広司氏(東京)

自動車リサイクルを支えるリビルド部品
完全循環めざす独自ブランドのブレーキパッドも販売開始
(有)目黒ライニング商会 社長 深澤広司氏(東京)

車を蘇らせるリビルド部品

 3月16日、東京ビッグサイトで開かれた第6回国際オートアフターマーケットで、リビルド工業界全国連合会初の取り組みとして、「補修部品流通関連企業のためリビルトパーツ販売セミナー」が開かれました。会長の深澤広司氏((有)目黒ライニング商会社長、東京同友会会員)が、「環境や安全が求められる今、リビルド部品の正しい理解が売上に直結する」と講演した後、5社が自社のリビルド部品についてプレゼン。若い担当者が、「車の部品を新品かそれ以上の品質のものにリビルド(再生・修理)して車を蘇らせ、地球環境に貢献したい」と誇らしげに話す姿が印象的でした。

 リビルド部品とは、車を修理するときの補修部品の1つで、使用済み自動車から取り外した部品をそのまま使う中古部品と違い、部品(エンジンやブレーキなどの機能部品が中心)を分解し、摩耗・劣化した構成部品を新品と交換したり、研磨した後、再度組み立て、テスターにかけ、品質確認を行い、商品化したものです。ニーズに応じて、既成品にはない付加価値をつけられるのもリビルドの特徴です。

 部品メーカーのような設備と技術力を持ち、自動車修理工場では、新品と同等の信頼を得ているといいます。しかし、中古部品とリビルド部品の違いすらあまり知られていないのが現状で、その認知度を高め、大いに利用してもらいたいと、このセミナーの開催となったものです。

リサイクル部品の全国ネットワーク

 深澤氏は8年前、34歳の若さでリビルド工業界全国連合会(現在83社が加盟)の会長に就任。以来、リビルド業者間の交流を深め、業界としてのまとまりを作りながら、自動車リサイクルでのリビルドの存在意義を広く知らせていく活動に力を注いできました。

 それまで交流のなかった中古部品業界とも交流を図る中で、日本自動車リサイクル部品販売団体協議会(現在430社が参加)にも加盟します。

 2002年には、自動車リサイクル法制定に向けて国が実施した「自動車リサイクル部品活用促進調査」にも協力。経済産業省が音頭をとり、大手自動車メーカーや部品メーカー、中古部品やリビルド部品などリサイクル部品業者などが一堂に会して議論を重ねる中で、自動車リサイクル部品利用を促進するため、業界として品質表示や保証内容を統一化させていくことが確認されました。

 そこで生まれたのがリサイクル部品在庫共有システム「JAPRAシステム」です。傷やへこみ具合などの品質表示方法を統一し、統一品質基準に基づくランク付けと、ランク別の保証期間も定めました。

 現在、300社が参加し、200万点を超すリサイクル部品の在庫データを共有。全国8万5000の修理工場から受けたリサイクル部品の注文に即納できる仕組みです。深澤氏は、その運用組織、(株)ジャプラの常務取締役として、システムの管理・運営を任されています。

 同じく自動車リサイクル法施行にあわせて2004年には、日本標準産業分類に「自動車中古部品卸売業」という業種が認定され、業界として初めて国に認知された形となりました。これによって、自動車リサイクル法に対応するための設備投資に必要な融資も受けられるようになりました。

ブレーキ・パッドでブランド確立

 (有)目黒ライニング商会は、深澤社長の父で現会長が1964年、ブレーキ・ライニング(ドラム・ブレーキにブレーキ・ライニングを押しつけ、その摩擦力で車を停止させる)の摩耗した摩擦材の張り替えをメイン業務として創業。深澤氏は2004年に社長を引き継ぎました。

 深澤氏が90年に入社してからスポーツ部門を立ち上げ、レーシングカー向けのブレーキ・パッド(ディスク・ブレーキの円盤状のディスク・ロータをブレーキ・パッドではさみ込み、その摩擦力で車を止める)を開発・製造。自社ブランド「MARVEL(マーベル)」は、ブレーキノイズとブレーキダストをいかに少なくするかと、摩擦材の研究に取り組んで完成させたもの。その世界ではかなり知られたブランドとなっています。

 今では、サーキット用、スポーツ用、ストリート用など、用途にあわせて摩擦材の素材を変えた70種類ものブレーキ・パッドをラインナップ。売上全体の半分を占めるまでになっています。ちなみに、パッドの摩擦材を張り替えられるリビルド業者は、全国で数社しかいないとのことです。

 昨年からは、ストリートカー(ふつうに路上を走る一般車)向けのブレーキ・パッド「ZEST(ゼスト)」の製造販売を始めました。これは、補修部品として修理工場に販売すると同時に、取り替えた古いZESTを回収、リビルドして再び市場に出すという完全循環型の商品です。

 「パッドの鉄板を現在のように使い捨てるのではなく、摩擦材を張り替えることで何度でもブレーキ・パッドとして流通できます。リビルド品であっても、スポーツパッド並みの付加価値をつけることで、環境にやさしいリビルド品の利用を促進したい」(深澤氏)。

現在、鉄スクラップなど金属資源の高騰を受け、廃自動車から部品を取り出すより、金属資源として回収した方が高く売れると、リビルド部品に欠かせないコア部品の供給が減っています。自社製品を完全循環させる仕組みづくりは、市況変動に影響されず、確実にコア部品を回収する仕組みづくりでもあるようです。

アフターフォローは地域密着が基本

 自動車リサイクル法が施行されてから、この1月で3年目、部品在庫共有システム「JAPRAシステム」も本格稼働から3年がたちました。深澤氏は、全国ネットワークでつながることで、逆に地域密着の重要性が見えてきたといいます。

 「自動車の修理では、車の状況やユーザーの希望にあわせて、それにもっともふさわしい補修部品の提供が必要です。そのためには、全国ネットワークを活用しながら、地域密着で部品の供給やアフターフォローできる体制づくりを考えていきたい」と深澤氏。

 地球環境破壊を憂い、リビルド部品が自動車リサイクルを支える気概に満ちた若きリーダーです。

【会社概要】
創業
 1964年
資本金 300万円
社員数 17名
年商 3億2000万円
業種 自動車部品製造・加工・販売
所在地 東京都目黒区碑文谷
TEL 03-3714-5561
URL http://www.megurolining.co.jp/

「中小企業家しんぶん」 2007年 4月 5日号から