【知っておきたい採用のあれこれ】第5回
人生100年時代とVUCA時代における人材能力とは
(株)エム・ソフト 顧問・社会保険労務士 西秀樹(東京)

 「知っておきたい採用のあれこれ」。第5回目は「人生100年時代とVUCA時代における人材能力とは」です。

 今、人生100年時代と言われています。人生100年時代を生き抜くためには、ライフロングラーニング(終身学習)を意識する必要があります。終身学習とは、1つのキャリアや専門知識だけでなく、複数のキャリアやスタイルを持つことが求められます。持続的な学習意識を持ち、新しい知識やスキルの獲得に会社主体ではなく社員1人1人の自発的職業能力開発が求められています。人生100年時代は新たなチャンスと挑戦の機会があります。それと同時に不確実性が高まる時代でもあります。(図)

 VUCA時代(不確実性、複雑性、曖昧性、変動性が支配的な時代)では、以下のような人材能力が必要ではないでしょうか。(1)柔軟性と適応力、(2)創造性と革新性、(3)リーダーシップと共感力、(4)デジタルスキル、(5)グローバルマインドセット、(6)レジリエンス。生成AI、DXの活用など仕事のやり方も変化していく時代、仕事そのものも変わり、その仕事に必要な能力も変わっていきます。会社・社員1人1人がVUCA時代の変化に対応し、成功を収めるためには、業界や組織の特定のニーズに対応できる能力も重要になってきます。VUCA時代は、リスキリングが重要であり、会社・社員1人1人がどのような能力を身に付ければよいのか目標設定を行い、現在の能力のスキルセット評価(今のスキルを評価し、不足している領域を特定)し必要なスキルを洗い出し、優先順位をつけましょう。スキルセット評価は職務基準書に記載の能力要件などを参照し上司や同僚からのフィードバックも有効でしょう。

 次に学習計画を立て実践します。学習計画の考え方は、「人生100年時代の社会人基礎力について」(平成30年2月 経済産業省産業人材政策室)を利用してみてはいかがでしょうか。

 人生100年時代とVUCA時代を生き抜くためには、継続的な学習と成長、柔軟性を持った思考の養成、他者との協働やコミュニケーションが必要であり、採用においては、広義の求める人物像(経営理念に沿った人材)だけをフォーカスするのではなく狭義の求める人物像(職務能力)を明らかにし採用していくべきでしょう。

 最後に、VUCA時代、自社がどのような方向に向かっていくのか経営者はビジョンを社員に向かって発信し、そのビジョンを実現するために人事施策をどのように統合すべきか。今後も外発的動機付け(高評価者に対する高報酬や役職の付与)を基軸にした人事制度でいいのか、それが今の若者にマッチしているのか、立ち止まって考えるべきでしょう。

「中小企業家しんぶん」 2023年 8月 15日号より