【中同協第39回定時総会特集】同友会創立50周年~良い会社づくりこそ、地域社会への貢献

 7月5~6日、中同協第39回定時総会が香川県高松市で開かれ、全体会と18の分科会で総会議案を深めました。赤石義博前会長の会長退任あいさつ、鋤柄修新会長のあいさつ、広浜泰久新幹事長のあいさつと、同友会創立50周年を記念した田山謙堂氏の特別報告要旨を紹介します。

第39回定時総会【総会宣言】(全文)
【会長退任あいさつ】生涯現役で頑張ります
中同協相談役幹事 赤石 義博氏

【新会長のあいさつ】新たな半世紀へ~中小企業を柱とする社会実現
 中同協会長 鋤柄 修氏

【新幹事長のあいさつ】同友会の財産を広げたい
 中同協幹事長 広浜 泰久氏

【見学分科会 感想】 第17分科会 第18分科会
【特別報告】 同友会50年の歴史を振り返って~地域から信頼えられる実力をつけよう
 中同協顧問 田山謙堂氏(東京)


【会長退任あいさつ】生涯現役で頑張ります―相談役幹事 赤石 義博氏

 私は昭和37年(1962年)東京同友会入会ですので、会歴45年になります。年齢は74歳です。私の人生の主要部分は同友会と共に過ごさせていただきました。

 入会当初は、「同友会は経営改善の勉強をするところだろう」くらいにしか思っていませんでしたので、参加も手抜きをしていました。ところが同友会は「人間が人間らしく生きあい、磨きあう会」であり、「自分の生きざまが問われる会」であると分かり、手抜きができなくなりました。「労使見解」(中同協「中小企業における労使関係の見解」、1975年発表)の基本はそこにあると思います。

 同友会創立メンバーに教わり、議論もしあった現役会員は、今や田山さん(中同協顧問)と私の2人しかいなくなりました。1979年に中同協幹事になって以来、「日本中小企業家同友会設立趣意書」(1957年発表)は繰り返し学び直したものです。

 創業の精神を伝えていくのが私の役割と考え、10数年前からそのことを念頭において活動し、十分議論を深められないところを補い、先人の思いを目に見える形で残す意味で、今まで8冊の本を出してきました。

 私は決して精魂尽き果てて退任するわけではありません(笑声)。生涯現役で頑張るつもりです。

 これからも議論しあえる仲間としてお付き合いできれば、これに優る喜びはありません。永年のご支援に心から感謝申し上げます。(鳴りやまぬ拍手)


【新会長のあいさつ】新たな半世紀へ~中小企業を柱とする社会実現―中同協会長 鋤柄 修氏

 ただいま新会長に選任された鋤柄です。私は1980年愛知同友会に入会しました。84年第1回中小企業労使問題全国交流会で赤石さん(当時中同協常任幹事)の講演を聞き、以来赤石さんを追っかけて20余年、このたび会長のたすきを渡されることになりました。

 同友会が51年目の新たな半世紀に踏み出す年に会長をお引き受けする、その責任の重さに押しつぶされそうな気がいたします。しかし、たすきを受け取った以上、鋤柄らしいカラーで邁進(まいしん)したいと決意しております。

 私は、本年66歳です。5年前中同協幹事長に就任し、まず、自分たちの経営を良くし、地域経済、日本経済をどう再生するか、これは「同友会3つの目的」の総合実践にあることを強調してきました。特に組織づくり、会員増強のために全国を回らせていただきました。

 会長になってからも気軽にお声をかけてください。呼ばれたら喜んで馳(は)せ参じます。皆さん、今年中に4万名会員を達成しようではありませんか。

 私は、命がけで会長の職務を全うします。「一日が一生」と最善を尽くし、やり残しのないよう奮闘いたします。

 このたび、新幹事長になられた広浜泰久さんは、私より10歳若い。中同協新幹事長、新役員の皆さんと力を合わせ、中小企業を柱とする日本社会実現のため頑張る決意を述べ、新役員を代表してのごあいさつとします。(拍手)


【新幹事長のあいさつ】同友会の財産を広げたい―中同協幹事長 広浜 泰久氏

 私が千葉同友会に入会したのは1990年です。同友会からは、たくさんのメリットをいただき、現在の私があります。

 例会での学びはもちろんですが、共同求人、社員教育活動への参加、労使見解の理念に立った経営指針づくり、これらすべてを経営改善に生かしてきました。特に会運営を通じて学んだ自主、民主、連帯の精神は、社員が自立(律)的に働く職場環境づくりに役立たせていただきました。

 この同友会のすばらしい財産を多くの会員と共有し、広げていく運動の延長線上に、中小企業憲章制定があると考えます。

 力不足ではありますが、一生懸命頑張りますので、ご支援をよろしくお願いいたします。


<第17分科会>地域にこだわり、元気に人と地産(うどん)を練る―報告者:(有)ウエストフードプランニング社長 小西 啓介氏

 
うどんにかける職人と社長の信頼関係

 見学先は、香川県内に讃岐うどんの製造工場と直営店4店を展開する創業4年目の若き社長(35歳)の経営する「(有)ウエストフードプランニング」です。

 移動の車中では、四国や香川の歴史から、うどん製造の心構えと大変さについての話を聞きました。工場見学では、うどんの粉と塩水を混ぜる工程と、実際に足踏みの練りこみや、素手による練り作業の体験をさせてもらいました。

 本来の現場作業は単調ながらも熟練を要する作業ゆえに、働く人の心をいかにつかんでいくか、創業当時から小西社長の苦労は絶えなかったそうです。まさに、ものづくりに懸ける職人と社長の思いのぶつかり合いが「商品力」となり、うどんのあの強い「腰」になっているのがわかりました。

 その後、高松の直営うどん店へ向かい、「いらっしゃいませ!」の社員さんの元気な声と笑顔に迎えられ、今まで食べたことのないおいしい讃岐うどんを試食。黒板には社員からお客様へのメッセージが毎日書き込まれ、小西社長の「お客様に(うどんを食べて)少しでも元気に1日を過ごして頂きたい」という願いがビンビンと伝わってきました。

 グループ討論では、「地域を元気にする社員育成に向けた自社の取り組み」「地域を元気にする会社」について熱い議論が交わされました。大切なのは、社員とのコミュニケーション(信頼関係)と、「何のため、だれのため」の仕事かを、経営指針として明らかにし、実践していくこと、との結論に達しました。また、よき原因作りの原点は「社長」本人であることを、小西社長の姿から学ぶことができました。

アンドーコーポレーション(有) 社長 安藤陸男(岩手)


<第18分科会>安心・安全を提供し、感動を呼ぶ企業づくり―報告者:徳武産業(株)社長 十河 孝男氏

 
ターニングポイントと赤い靴

徳武産業の工場を訪問。まず十河社長の人間味あふれる人柄にふれ、参加者のだれもが、ここで生み出される商品に、間違いなどあろうはずがないと感じたのではないでしょうか。

 高齢者や障害者にポイントを絞る商品は数多く存在しますが、作り手の満足度を満たしていくのか、お客様の満足度を満たしていくのかで大きく方向性は違ってきます。

 靴は左右がそろっているものという既製概念を根底から覆す個別の販売は、消費者が待ち望んでいたにもかかわらず、だれも取り組んでこなかったものです。

 大きなリスクを伴うことは十河社長さんのみならず社員の方でも、容易に推測できたことでしょう。多くの時間とエネルギーを注ぎ込んでこられたその想(おも)いは、今確実に高齢者の方々の足下で生きています。

 「赤い靴が履(は)きたい」というご年配の女性の声は、そのまま私の願いでもあります。この声を真摯(しんし)に受け止めたことが、徳武産業のターニングポイントだったのでしょう。

 私のターニングポイントは、間違いなく今回の分科会参加だと確信しました。義肢製作所の経営に携わる者として、利用者第一のものづくりを心がけることを肝に命じた分科会でした。

(有)オルソ本田 取締役 本田美紀(愛媛)


【特別報告】同友会50年の歴史を振り返って~地域から信頼えられる実力をつけよう―中同協顧問 田山謙堂氏(東京)

 同友会創立50周年を記念して、総会1日目に行われた田山謙堂・中同協顧問の特別報告「中小企業家同友会創立50周年を迎えて」の概要を紹介します。

情熱と気概あふれる総会

 同友会は今から50年前の1957年4月、日本中小企業家同友会という名称で東京で発足しました。

 私は友人に誘われ、1957年11月に開かれた第2回定時総会に出席したのが同友会とのはじめての出会いでした。

 総会の参加者は30数名でしたが、会場は熱気に包まれ、初代代表理事の束原誠三郎さんをはじめ、次々登壇して意見を発表する中小企業経営者たちは、情熱と気概に溢(あふ)れていました。展開する論旨は首尾一貫して堂々としていました。同友会が進む道こそが日本の中小企業運動の正しい方向なのだという自負と確信に溢れていました。

 当時私は27歳で、その前年に父の会社に後継者として入社したばかりで、まだ何もわからない経営者の卵でした。総会に出席して、世の中にはこんな素晴らしい中小企業家がいるんだというのが大変な驚きであり、そのことに強い感動を覚えました。そして早速入会を申し込みました。

より良い日本経済の発展を求め

 当時、日本は高度成長の幕開けの時代でしたが、中小企業を取り巻く環境は今日では想像できないくらい厳しく、金融、税制、下請け制度の矛盾と公正取引の問題、労使関係の問題など、問題が山積していました。

 同友会の設立趣意書にもあるように、同友会は官僚統制に反対して、自主、自立の立場で、中小企業経営の改善に取り組む姿勢を明らかにしていました。しかし同時に、中小企業を取り巻く環境の是正こそ、中小企業の発展にとって基本的に重要だと考えていました。

 同友会は創立当初から、個々の中小企業の利益擁護にとどまらず、日本の中小企業全体の地位の向上と繁栄を目指すとともに、より良い日本経済の発展を求めて活動してきました。

会の魅力そのもので伸びてきた誇り

 1957年、東京に同友会が生まれてから、この考えに賛同する中小企業家たちによって、大阪、愛知、福岡、神奈川に同友会が組織されてゆきます。そして1969年、同友会の全国的な発展と要望の実現を目指して全国組織、中同協が結成され、北海道、京都、兵庫、岐阜、長崎にと次々同友会が生まれてゆきます。

 今日では47都道府県すべてに同友会が設立され、会員総数4万社に近くなり、さらに5万名会員に挑戦するという立派な中小企業団体に発展しました。

 同友会は自主的団体ですから、文字通り手作りの会です。会に魅力や関心がなければ組織の拡大はできません。それがこのように発展してきたことは大いに誇りにして良い。私たちは大変な歴史的大事業を皆でやってきたんだと思います。

飛躍の契機は「3つの目的」の明文化

 50年を振り返ると、第5回定時総会(1973年)で「同友会の生い立ちと展望」という文書が採択され、その中で「3つの目的」が明文化されたことが、その後の飛躍の契機になったと思います。

 「3つの目的」は各同友会の活動の経験を集約し、整理したものであり、すべての中小企業家の期待にこたえるものです。特に2番目の経営者自身の能力と資質を高めるという目的は、同友会を会員自身の学びの場として明確に位置づけたもので、会員はもちろん、多くの中小企業者の期待にこたえ、同友会を魅力あふれる組織にしたといえます。

 「3つの目的」を運動の柱に据え、1975年に「労使見解」(中同協「中小企業における労使関係の見解」、『人を生かす経営』所収)を、1977年には経営指針の成文化運動を提起。さらに、企業発展の基礎である共同求人活動による人材の確保と社員教育活動など、中小企業家の切実な要望にこたえる運動の発展の中で、同友会に対する期待と魅力が一段と高まり、会員の拡大は飛躍的に進みます。

 同友会発展の源泉は、1つは各同友会が同友会理念をしっかり守り、「3つの目的」を創意を凝らして実践したこと。各同友会が全国の優れた経験を謙虚に学びあい、全国で競い合い励ましあいながら全体として発展してきたことです。

労使の信頼関係こそ―「労使見解」は同友会の財産

 もう1つ、忘れてならない同友会の財産は、「労使見解」です。これは東京の原案をたたき台にして、5年間各同友会の熱烈な討議の末、成文化したものです。

 東京同友会では創立以来、中小企業に近代的労使関係の確立が必要であることを方針に掲げ、運動してきました。1950年代後半から60年代にかけて、日本全体に激しい労使の対立が日常化する中で、中小企業の労使関係もその対立抗争の波にさらされます。

 同友会は終始一貫、中小企業には中小企業にふさわしい労使関係があること、中小企業では力を背景にした運動ではなく、あくまでも労使が互いの立場を尊重した上で、誠実な話し合いによって問題の解決を図るべきだと主張しました。

 すぐには理解を得られませんでしたが、激しい労使の対立関係にありながらも、中小企業の発展のためには、労使の信頼関係を構築することが必要不可欠である。企業内に労使の信頼関係をつくるのはまさに経営者の責任ではないか。そのために経営者は何をなすべきか。同友会の仲間たちは、自らの企業の労使関係についての成功、失敗の体験を語り合い、みんなで経営者の姿勢を議論しながら、「労使見解」を作り上げてゆきます。

 私自身も、「労使見解」の精神を企業内で実践し、あわせて経営指針の成文化に全力を挙げて取り組む中で、経営者と社員との信頼の絆が次第に深まり、労使が力をあわせて企業の発展と社員の労働条件の改善をともに追求する社風を作ることができました。

 同友会の活動に参加し、多くの友人や先輩から経営者に必要な能力と資質と感性を学び、身につけたのだと思います。50年を振り返って、私を一人前の経営者に育ててくれた同友会に感謝の思いで一杯です。

地域に信頼される企業、同友会に

 同友会は50年の歴史をへて、新しく100年を目指してスタートしたわけです。

 初心忘るべからずですが、個々の中小企業の発展を目指すのは当然ですが、いつも日本のすべての中小企業の繁栄を考える視点をもつことが大切と思います。それが同友会の優れた特徴だと思います。

 中小企業政策を日本の経済政策の大切な柱に据え、地域経済の活性化を真剣に考え、地域格差の是正を図ることが、今日特に大切だと思います。その意味で中小企業憲章の制定や中小企業振興基本条例の制定は、これからの大切な課題だと思います。

 ただその前提として、同友会が本当に地域の自治体、金融機関、教育機関、中小企業団体との間で信頼を得る実力をいかに構築するかが何よりも大切です。そのためには、まず組織の拡大であり、地域に信頼され、必要とされる企業をいかに多く作り出していけるか、またそういう企業を会内に迎え入れる努力が大切と思います。そして自治体、金融機関、教育機関、中小企業団体との信頼関係を土台に、地域の発展と地域社会の活性化をどう作り出してゆくかを、互いに力をあわせて真剣に模索する関係を構築することが同友会の役割ではないかと思うのです。

 同友会が大きくなり、信頼されれば、活動の分野もますます広がります。しかしいつも会の足元をしっかり固め、過信せず、謙虚さを失うことなく、大きな目標に向かって進んでいけば、未来は洋々たるものがあると信じています。皆様のご活躍を期待申し上げます。

「中小企業家しんぶん」 2007年 8月 5日号から