個人情報保護法への理解・対応は二極化~中同協「個人情報保護に関する実態調査」より

取り組めていない企業への支援策を

 中同協では、会員企業を対象にした「個人情報保護に関する実態調査」を6月21日~7月10日に実施し、8月1日に開かれた経済産業省の諮問委員会である「第2回個人情報保護中小企業対策検討委員会」(板橋俊彦・中同協情報化推進本部委員が委員登録)で発表しました。

 調査は組織活動支援システムe.doyu(愛知同友会は「あいどる」)の「NEWアンケート」機能を利用して15同友会で実施され、1747社が回答。調査結果は、積極的に取り組んでいる企業とそうでない企業の二極化が明らかで、取り組んでいない企業への政策的対応が求められるところとなっています。

53%が積極的な取り組み

 「個人情報保護に取り組んでいますか」という設問に、「はい」と回答している企業が53.1%と半数を超えており、会員企業の問題意識の高さがうかがわれます(図1)。中でも、サービス業や情報・流通・商業が70%近い取り組みとなっているのは(図2)、消費者に近く個人情報に接する機会が多いためとみられますが、製造業が36%程度となっているのは、「個人情報をたくさん持っていないから」などとしている場合が多く、個人情報保護法の趣旨への理解不足が考えらえれます。

<図1>

<図2>

 
進む「社内学習」

 取り組んでいる企業は、比較的取り組みやすい「社内学習」がトップとなっていますが、「個人情報保護方針作成」「社内ネットワーク見直し」など、人や金などの経営資源を使って本格的な取り組みをしていることが分かります(図3)。

<図3>

 
「どのように取り組んだらいいか分からない」

 「個人情報保護に取り組んでいますか」という設問に、「いいえ」と回答した企業(33.7%)のうち、「どのように取り組んだらいいか分からない」45.7%、「対応しなくてもいい情報量」44.6%が断然多く(図4)、まず個人情報保護対応への理解を深めていく必要のあることが分かります。

<図4>

 取り組んでいない企業にとって、「時間がない」「財政的措置ができない」「人が配置できない」が障害になるかどうかの予測さえ立っていません。

 取り組んでいる企業は経営資源を投入して対応していますが、取り組んでいない企業は個人情報保護法への理解が進んでおらず、対応が二極化しています。

 経済産業省や業界のガイドラインを読んでいる率は50%を超えており、法への理解を深めようと努力しています。

<図5>

 
個人情報保護対応で「業務に支障」の回答も

 個人情報保護法の業界への影響(記述式)は、「業務に支障」「業務負担増」が多く、「過剰反応」も業務への影響が出ている項目に含めると、記述回答者(762社)の50%以上が仕事にとって消極的な影響が出ているとしています(図6)。一方で「意識改革」につながっているとの評価や「ビジネスチャンスの拡大」と回答している企業もあり、セキュリティ関連、警備関連業などからの積極的な評価や、プライバシーマーク取得による優位性の発揮などが紹介されています。

<図6>

 
講習会や分かりやすい手引きなど求める声

 個人情報対応への支援(記述式)については、費用をかけずに気軽に参加できる講習会の開催を求める声が強いほか、簡単な手引書などを求める声が記述回答者(584社)の20%を超えており、先の取り組んでいない企業が「どのように取り組んだらよいか分からない」とする部分への対応として強く求められている支援であることが分かります(図7)。

<図7>

 
個人情報保護問題への関心高く

 業界への影響や支援策の項目は、記述式であるにもかかわらず4割を超える回答があり、この問題への関心の高さが伺われます。

 「取り組むべきこと」との認識がある一方で、取り組めていない企業への対応が課題となっており、本調査結果が比較的関心の高い企業の回答によるものと考えると、支援策を考える際には、具体的な取り組みへの手引書のようなものを広く普及する、またそれらが分かるような講習会を広く開いていくことなどが求められていると言えます。

「中小企業家しんぶん」 2007年 9月 5日号から