第38回中小企業問題全国研究集会【基調講演】地域力経営とは

幸せの見える社会づくりのために

中同協相談役幹事(前会長) 赤石 義博氏

 3月6~7日、仙台で開かれた第38回中小企業問題全国研究集会での基調講演要旨を紹介します。

 日本で今、切実に求められている課題が4つあります。第1は国民生活の向上を柱にすえた日本経済の再生、第2はすべての生命の母体である地球環境を守る、第3に資源節約型経済による人類永遠の存続と繁栄をめざす、第4に対外的には主体性のある自立型経済の確立です。さらに人口の再生産が不能な時代に入りつつあり、地域消滅の危機が生じてきていることです。

 この課題を解決するために、中小企業を主軸に地域づくりを地道に進めていくことが大切です。地域づくりの基盤として「地域力」の見直し、掘り起こしで地域の活性化をはかっていく、これが「地域力経営」となります。

 「地域力」の個別要素として9つの要素をあげたい。

 第1は、そこに住む人々で、地域力を顕在化させる担い手、生活者として機能する人たちです。第2は地域の自然(山、川、海)、第3は自然の条件(風、気温、降雨量)、第4は自然の産物(鉱物、農林水産物)、第5は伝統産業や地場産業の集積及び培われた技能技術の集積、第6は地理的位置、第7は都市の集中力、第8は都市の前社会的統一(都市や町村間で恒常的に展開する人、物、金、情報の流れ)、第9は歴史的文化遺産です。ほとんどの中小企業はこれらの「地域力」要素を複合的に活用して経営を展開してきました。今後さらに「地域力」を再発掘しビジネスモデル化していくのが企業家の使命です。

 沖縄県産紅芋を使った菓子づくりで村おこしに挑戦、観光との融合で成功した事例((株)お菓子のポルシェ、沖縄同友会会員)など、会内には優れた事例はたくさんあります。大切なことは、地域の人々との協働による地域づくりこそ、真の民主主義を築きあげていくプロセスであり、永続した繁栄を生み出す原動力となるという認識です。

 「中小企業振興基本条例」「中小企業憲章」制定運動を支え、実現後もその効果を十分に発揮させるためにも、「地域力経営」の実践が必要なのです。

「中小企業家しんぶん」 2008年 3月 25日号より