経営者から 何のために働いているか考えよう 酒井食品(株) 社長 酒井恵二氏(大阪)

夢をもち、無限の可能性を信じて

「何のために」を問いかけて

 みなさんが入社された中小企業。その中小企業が昨今大企業に勝つ例がたくさんあります。みなさんはそのための貴重な人材として採用されたと思います。

 私は同友会に入会して、「何のために経営していますか?」と問われ、当時は「金儲(もう)けのため」と思っていましたが、自社は「自社の食材で喜んでくれる人のためにある」ことが明確になり、「すごい仕事をしている」ことに気づきました。

夢を持ち、「出る杭(くい)」になろう

 みなさん一人ひとりが「夢」を持つことが大切です。「夢」とは、人それぞれに、大きな価値のあるものです。その価値ある夢を実現すること、そこに今働いている会社の方向が一致したところが「会社の夢」であり、これをみんなで追い求めていくのが、「会社のあるべき姿」です。

 しかし、その価値ある「夢」も、自分が自分を信じていなければ実現しません。「夢」がハッキリ浮かんでくるまで社内で真剣に話し合い、毎日コツコツ、それに向かって突っ走っていってほしいです。

 自社は「もっと無謀な、常識ハズレなことをやろう、小さい会社だからこそできる前例無視の型破り、楽しくなければ人生じゃない、100%人生を楽しむために100%仕事を楽しもう。他人が何を言おうが気にするな。自分を信じて目標に向かってまっすぐに」を社内で相談して、スローガンにしました。

 会社で隣の人と同じことをして、周りの人と同じように埋もれてはチャンスはこない。「出る杭」になったらいいのです。

経営理念を仕事の価値観に

 そのためには「判断力と実行力」を持たなければいけません。

 テレビでも報道されている偽装事件。老舗の一流企業がなぜ、誰が考えてもばれたら大変だと分かることをしたのか。そういう会社の方々は「やってはいけない」と判断はできた。でも「だめですよ」と諭(さと)す「行動力」がなかったと思います。

 その判断力を実行力に変えるのは、会社が持つべき「価値観」。それが「経営理念」です。

 会社に戻って、「うちの会社の経営理念って何ですか」と聞いてください。

 当社の経営理念は、「食の安全保障を目指します」です。昨今輸入食品を敬遠するニュースが流れていますが、6割が海外の輸入品。残念ながら今後数十年は、輸入食材がなければ今の日本の食生活は成り立たない。

 そのためにわが社では、「理念のとおり、『安全』を目指して輸入業に取り組み、日本の食のレベルを下げない」と言っています。

何のために働いているのかを考えて

 最後に、わが社では「『安全・安心』って何ですか、それを守るにはどうしますか」との問いには、まず法律を守るのは当たり前。その上に何があるか。「『愛する人に安心して食べさせられるかどうか』と自分で自分に問いかけて下さい」と言っています。

 みなさん、「何のために仕事しているのか、働いているのか。この会社は何のためにあるのか」をしっかりおさえて、仕事をして下さい。これが私からのお願いです。

「中小企業家しんぶん」 2008年 4月 15日号より