だれもが仕事と家庭を両立できる企業に【宮崎】

できることから取り組みを-県も後押し

 宮崎同友会では創立以来、社員教育や経営指針づくりを活動の柱に据え、「共に育つ」企業づくりを進めています。その実績から宮崎県商工観光労働部が「仕事と家庭両立応援宣言」登録制度をつくる際には、同友会も相談を受けています。現在、本制度に登録している地元企業は71社で、うち6社が会員企業。登録している3企業を取材し、行政担当者にも話を聞きました。

職員間で連携できる仕組みへ

霧島人事政策研究所 代表 本嶋有二郎氏

 霧島人事政策研究所(本嶋有二郎所長、宮崎同友会会員)の「仕事と家庭両立応援宣言」(以下、宣言)内容は、「(1)週2日の定時退社に取り組みます。(2)職員間で業務の連携を図り、急用による遅刻・早退・年休取得等に対応できるような職場を作ります。(3)産休・育休・介護休暇をとりやすように代替要員確保を目指して、事務所OBのネットワークをつくります」です。

 同社は、200社の得意先を抱えており、8名の職員が1人30~40件を担当し、人事労務に関する相談や社会保険に関する各種手続き、給与計算などのアウトソーシングの仕事なども手がけています。

 しかし、繁忙期になると休みも取れない状況で、長時間労働を余儀なくされている実態もありました。そこで、「結婚しても働き続けられる」「新婚旅行に行ける」環境を作ろうと、県が設けた宣言に取り組みました。

 毎週水・木曜日の定時退社や、職員間で連携しやすいように、それぞれの仕事内容を共有するような工夫、定時退社できるような雰囲気づくりなど、「道半ばですが、毎年できているかを見直し、宣言を継続して取り組みたい」と本嶋氏は話しています。

霧島人事政策研究所

創業 1982年
年商 5500万円
社員数 8名(内パート1名)
業種 労務管理・社会保険労務士業
所在地 宮崎市大塚台東
TEL 0985-30-4890

宮崎県で初の男性育休取得~感謝を伝えていける会社に

(有)宮崎中央新聞社 社長 松田くるみ氏

 1995年、宮崎県内で初めて男性が育児休業をとった会社として、(有)宮崎中央新聞社(松田くるみ社長、宮崎同友会会員)は、地元マスコミにも大きく紹介されました。

 同社では、「(1)育児休業、介護休業は会社が応援します。(2)子どもの体調不良、行事等で休むときは他のスタッフで仕事をサポートします。(3)短時間勤務など、仕事の時間を調整することも可能です。(4)参観日は子どものために今後も積極的に参加していきます」と宣言しています。

 松田氏は、「(1)は給与体系も含めた制度の確立、(2)は有給休暇を積極的に利用してもらおうと進めています。(3)さまざまな要因でフルタイムで働けなくなっても、待遇はできるだけ保障していく。(4)子どもの参観日には参加するのが当たり前の雰囲気をつくっています。PTA活動や町内会活動もできるようにし、私自身も参加しています。

 家庭に問題が起きると、あとで仕事に響いてくる。感謝を伝えていける、子どもとの関係がしっかりつくれる会社にしていきたい。当社が作る新聞も親子で読んでいただけるものをめざしています」と言います。

 育休を取得した西隆宏・編集部次長は、「子どもにしっかり接する期間が持てたことで、子育てが自分にとって自然なものになった」と話しています。

(有)宮崎中央新聞社

設立 1992年
資本金 300万円
年商 3000万円
社員数 3名
業種 時代が見えるミニコミ紙(週刊紙)の発行
所在地 宮崎市田吉
TEL 0985-53-2600
http://miya-chu.jp/

「子どももここで働かせたい」と言われる会社に

(株)日向中島鉄工所 社長 島原 俊英氏

 「自分の子どもに、この会社で働いてほしいと思っている。どんな仕事をしているのか、自分の子どもに働くところを見せたい」という社員の思いをくんで、(株)日向中島鉄工所(島原俊英社長、宮崎同友会会員)では、5年前から会社を開放し、会社にかかわる多くの人々に参加してもらう夏祭りを開いています。

 同社では、「(1)セミナー等に参加し、両立についての啓発に努めます。(2)子どものいる従業員さんの、学校行事への参加を奨励します。(3)従業員の子どもの職場見学会を実施します」と宣言しています。

 (1)では、99年に後継者として同社に戻ってきた島原氏は、他社を知らない指示待ちの社員の対応に、まず他社の見学会を行い、外で行われるセミナーなどに積極的に参加することを奨励してきました。そのことで、社員自らの仕事のスタイルを見直すきっかけづくりをしています。

 (2)では、「地域貢献」を意識し、社員自身が視野を広げるために学校行事にも積極的に参加し、「地域で果たす役割を自覚してほしい」と考えています。

 (3)持続可能な会社にしていくためには、子どもたちに会社を見てもらい、どんな仕事をしているか知ってもらい、興味を持ってもらう。子どもたちに教えることで社員教育にもつながっていると言います。

 社員の家族と地域から安心と信頼の得られる会社づくりへ、島原氏の挑戦は続きます。

(株)日向中島鉄工所

資本金 3000万円
年商 10億円
社員数 60名(内、パート5名)
業種 機械製造、設備工事業
所在地 日向市大字日知屋
TEL 0982-52-7215
http://www.nakashimatekkousho.com/

「仕事と家庭の両立応援宣言」宮崎県が登録制度 同友会も協力

 宮崎県では、「働きやすい職場づくりのため、企業、事業所の代表者が従業員の仕事と家庭の両立を応援する内容を宣言し、公表する」という「仕事と家庭の両立応援宣言」登録制度をつくり、2006年10月から登録を開始しました。

 県では、宣言企業・事業所を登録し、宣言書を交付するとともに、県のホームページやパンフレットなどに企業名や取り組み内容を紹介。県立図書館や県庁本館で宣言書の展示も行っています。登録企業には、中小企業労働施策アドバイザーが優先的に派遣されます。

 「次世代育成支援対策推進法」で、301人以上の労働者を雇用する企業は、少子化に対処する「一般事業主行動計画」を策定し届け出なければなりませんが、300人以下の企業は努力義務。

 「行動計画をつくるのもハードルが高い。小企業にも取り組みやすい施策を」と、商工観光労働部で06年度から検討を開始。宮崎同友会にも相談しながら、少人数の地元中小企業でも取り組みやすい、励みになる制度として「宣言」を設定しました。

 しかし、宣言とともに問われるのは実践です。従業員のやる気が高まり、優秀な人材の確保・定着を図ることができるかどうかは、その仕組みが回るかどうかにかかっています。

 会員3社では、目標を地域にも公開し、実践することで経営者自身の励みにもなっています。

 厳しい時代を迎え、経営課題が多くなる中、「経営者は『中小企業だから、なにも言わなくても労働者や労働組合はわかってくれるはずだ』という期待や甘えは捨て去らねばなりません」という「中小企業における労使関係の見解」の言葉が、重みを増してきています。

中同協事務局次長 平田美穂

「中小企業家しんぶん」 2008年 7月 15日号より